鏡文(鑑文・かがみ文)とは|公文書の鏡文の例文と書き方
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鏡文(鑑文・かがみ文)とは
鏡文(鑑文・かがみ文)とは、文書の一番上に載せる、一番目に付く説明文のことです。
鏡紙は、本文ではありませんが、それを見ると内容がある程度分かるもので、しばしば起案文などにも添付されます。
鑑の意味には、「手本、見本」「物をうつしてみる鏡」という意味があります。
その内容は、具体的には、作成者、作成日、目的、概要などを記載して、本文を見なくてもおおよそのことが分かるような文書として1枚にまとめてあるものです。
鏡文の書き方(対外文書)
鏡文の構成
通知文形式の鏡文は、文書番号、日付、通知先、通知元、標題、本文及び「記」で構成されています。
これに別紙や別添が付されることがあり、最後に問合せ先が置かれます。
文書番号と日付の書き方
日付と文書番号は、用紙の右上に揃えて記載します。
右端を1字分空けて、日付と文書番号を「均等割付」します。
文書番号は、記号及び番号で構成され、部課等の組織単位で暦年又は年度ごとに管理されます。
例(□は空白スペース)
記号第1234号□
令和6年1月1日□
通知文以外の文書では、文書番号に代えて作成官庁や部局名を記載する場合もあります。この場合は、日付を上に書く例が多いです。
例(□は空白スペース)
令和6年1月1日□
総 務 部□
通知先の書き方
通知先は、文書番号から1行又は2行空けて記載します。
肩書と氏名を記載するのが原則ですが、以下の3通りの書き方があります。
① 肩書と氏名をを1行に続けて書く
□○○県知事 山 田 太 郎 様
② 肩書と氏名を2行に分け、2行目に氏名のみ書く
□○○県知事
□□山 田 太 郎 様
③ 肩書と氏名を2行に分け、2行目に役職名と氏名を書く
□○○町会
□□会長 山 田 太 郎 様
上記のように、1行目の書き始めは1字下げ、2行目は更に1字下げにします。
この場合、2行目の氏名の最後の文字が1行目の肩書の最後の文字よりも更に右に出た方が見やすいので、肩書が長い場合は氏名の記載位置を若干調整することがあります。
氏名は1字抜きで記載するのが一般的です。
氏又は名が3字のときは間を詰め、氏又は名が1字のときはそれぞれの真ん中に記載する方法と端に記載があります。
ただし特殊な字数によって表記に違和感がある場合は、任意の方法を採ってもよいとされます。
1字抜きの例(■が1字抜き)
山■田■太■郎
大山田■幸太郎
■泉■■太■郎 又は 泉■■■太■郎
山■田■■明■ 又は 山■田■■■明
氏名を書かず、肩書のみ記載することも多いです。
通知先が複数あるときは、並記して肩書部分を均等割付します。
敬称は国では「殿」を用いていますが、地方公共団体では「様」を用いる所が増えています。
通知先が複数あるときは、敬称は、原則として上下の中央に一つだけ付けます。
なお一つの肩書で複数の通知先を表わすときは「○○ 各位」などとし、「各位殿」は使用しない。
均等割付し上下の中央に敬称を付ける例
各 部 長
教 育 長 様
警察庁本部部長
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通知元の書き方
通知元は、通知先から1行または2行空けて記載します。
表記の方法については、原則として上記の通知先と同様です。
ポイントとしては、通知先と通知元の肩書を均等割付すると見栄えが良くなります。
通知元の記載位置は、公印が押せる位置にします。
公印を押さない文書だとしても、押すものと仮定して、通知元の最後の文字の真ん中と公印の左端が合うよう調整します。
通知元については、氏名を記載する場合と肩書のみを記載する場合があります。
原則として、大臣、都道府県知事、市区村長の場合は氏名を記載します。
また、通知元が官庁の場合、行政機関の往復文書の場合は氏名を記載しないことが多いです。
標題の書き方
標題は、通知元から1行又は2行空けて記載し、「中央揃え」します。
かつては3字下げで標題を書き始めていましたが、Word等の普及で現在はセンタリングが基本となっています。
末尾は「~について」とするのが普通ですが、定型があるわけではありません。
標題は1行に収めるのが適当ですが、2行になってしまう場合は、2行目を「中央揃え」せず、その頭を1行目の頭に合わせます。
また、標題の最後には「(通知)」等の文書の性格を表わす括弧書を付加します。
本文の書き方
本文は、標題から1行空けて記載し、1字下げで書き始めます。
書き出しは、標題を受けて、以下のような形から始めるのが一般的です。
書き出しの例
・このことについては、
・標記の件については、
・見出しの件については、
本文の内容の書き方は色々ありますが、以下のような通知文等の独特な言回しやルールがあります。
・結論の部分を「ついては、」で書き始める。
・結論の部分を付け加えるときは「おって、」で書き始める。
・「記以下」がある文章では、「下記のとおり」など「記以下」を参照する文言を入れる。
「記以下」「別紙」の書き方
「記」は、本文から1行又は2行空けて記載し、「中央揃え」します。
記以下の本文は、「記」から1行空けて書き始めます。
記以下の書き方は、項目番号や配字について記載した、項番の振り方|配字とレイアウトも参照してください。
「記」のほか、必要に応じて別紙や別添を付け加えることもあり、以下のように使い分けます。
別紙・・・手続や基準詳細等を定めた文書を添付するとき
別添・・・参考のため既存の文書を添付するとき
いずれも、ページを改めて掲げ、左肩に「(別紙)」「(別添)」を表記します。複数の別紙、別添がある場合は(別紙1)、(別紙2)・・・と表記します。
なお別紙、別添があるときは、本文でも「別紙のとおり」などとそれを引用する文言が必要です。
問合せ先の書き方
通知文等では、最後に問合せ先を書くことが通例です。
決まったルールはありませんが、通常、文書の右方に「問合せ先」と記載し、改行して1字下げで課名等を記載します。
課名などは、通知元と重複する部分は省略可で、班や係名まで記載します。さらに、その行又は改行して担当者名も記載します。
担当者名は、氏だけのもの、役職名を記載したもの、どちらでも構いません。問合せ先であるので、その前に「担当者」と記載する必要はありませんが、記載しても構いません。
最後、その次の行に「電話」と記載して電話番号を掲げます。内線番号も付加し、必要に応じてFAX番号やメールアドレスも記載します。
通知文の標準レイアウト
以下は通知文の標準的なレイアウトです。
「■」は改行又は空白を表わしています。
(文書番号、日付は均等割付)
記号番号第12号
令和○年○月○日
■
■
■各○○○長□殿
■
■(下線部、通知先と元の肩書を均等割付)
■ ○ ○ ○長 印
■
■(標題は中央揃え、文書の性格を括弧書)
■ ○○について(通知)
■(標題を受けた書き出し)
■標記の件については、○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○下記のとおりお願いします。
■
■(記以下を本文で言及。「記」は中央揃)
■ 記
■
1■○○○について
■■○○○○○○○○○○○○○○○○○○
■○○○○○○○○○
2■○○○について
■(1)○○○について
■■■○○○○○○○○○○○○○○○○○
■■○○○○○○○○○○○○○
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鏡文の例文(対外文書)
鏡文の例文1(照会文)
文書番号1234号
令和○年○月○日
〇〇自治会会長 殿
□□市長
○○ ○○
自治会加入状況について(照会)
事務上の参考としたいので、下記の事項について5月31日までにご回答ください。
記
1 照会内容
(1) 自治会加入者総数
(2) 加入割合
2 回答方法
別紙回答用紙に記入のうえ、郵送にて下記連絡先まで送付してください。
※件名を「~について(照会)」とすることで、鏡文で照会文書であることをわかりやすくします。
回答方法、提出先は必ず記載します。提出期限を設定する場合は、相手の調査時間を十分考慮することが必要です。
鏡文の例文2(協議文)
文書番号1234号
令和○年○月○日
○○市長 殿
□□市長
○○ ○○
〇〇委員会の設置について(協議)
標記の件について、地方自治法〇条の規定により議会の議決書を添えて協議します。
記
1 設置場所
〇〇区市長部局
2 設立計画案
別紙のとおり
3 その他
市内に事務局を設置する。
※鏡文の件名は、「~について(協議)」とするのが通例ですが、「~に関する協議について」のように、件名中に折り込む場合もあります。
根拠の法令がある場合は、本文中に明記します。 協議事項については、箇条書きにして簡潔に記載します。
鏡文の例文2(報告書)
文書番号1234号
令和○年○月○日
○○部長 殿
□□部長
○○ ○○
コールセンター設置効果について(報告)
令和○年○月○日123号で依頼のあった標記の件については、下記のとおりです。
記
1 問い合わせ件数
4,649件
2 問い合わせ内容
(1)・・・・・・・・・・
(2)・・・・・・・・・・
※件名は、「~について(報告)」が基本ですが、様式が定まっている場合はそれに従います。
法令や契約で報告が義務付けられている場合は、根拠を明記します。
依頼に基づく場合は、依頼文書の日付、文書番号を明記します。
鏡文で起案する場合の注意点
起案とは、行政の事務事業を遂行するうえで必要とされる意思決定の内容を文書の形式にまとめあげる事務、つまり決定案を作成することをいいます。
そして、決定案を記載した文書を起案文書といいます。
起案を行うのは、組織における意思決定の記録を明確な共通のルールに従って残すことで、事務事業の効率性、円滑性を保つとともに、対外的な説明責任を果たすためです。
また、行政の行った行為について疑義が生じたときに、その行為の決定についての証拠ともなります。
この機能を果たすためには、起案はその内容だけでなく、その形式が適法、つまりルールに従ったものである必要があります。
起案鏡文に必要な項目
起案文は、基本的に次の①~⑥の項目からなります。
①属性情報
件名、起案日、決裁区分など、文書の情報として必要な部分
②起案伺い文
どのような処理(「実施」「通知」「回答」など)の決定について判断を仰ぐのかを記入する部分
③起案本文
決定の基幹となる部分。決定し、実施すべき内容、理由、目的、対象、根拠法令、従来の経過、処理方針、必要経費など
④送付文書(施行文書)
送付(施行)を伴う起案の場合に、相手方に送付するあて先や送付番号の付いた送付鑑文書
⑤添付文書
意思決定を行うために必要な内容のうち、起案本文に書くことができない細かな内容を別紙とした場合の別紙部分
⑥関連文書
意思決定に直接必要なわけではないが、意思決定をするに当たって参考とする文書等
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起案鏡文の作成例
ここでは庁内向けに説明会を開催する場合において、その開催及び会場使用料の支払いについて決定し、庁内に開催通知を送付する場合の起案文書の文例を示します。
属性情報
件名:「文書事務説明会の開催について」
共用権限:「全庁共有」
施行要否(送付要否):「施行(送付)要」(通知を出す場合)
決裁区分:「課長決裁」(補助執行<専決>のため、決裁区分は自治体ごとの専決区分規定等によります。)
起案伺い文・起案本文
起案伺い文:「文書事務説明会を次のとおり実施してよろしいですか。」
起案本文
1 目的 適正な文書管理の必要性についての理解を深め、市の情報管理を適正化するため
2 日時 令和6年4月1日(月)14時から15時
3 会場 研修室
4 対象者 各係文書担当者200名(別紙1名簿のとおり)
5 次第 別紙2次第のとおり
6 通知 別紙3各課長あて通知文書を、各課庶務担当係に送付します。
7 会場使用料の支払い
(1) 支出額 15,600円
(2) 支出科 令和3年度333 市一般会計 総務費
(3) 内訳 施設使用料12,200円、付帯設備2,900円(プロジェクター1,500円、拡声装置500円、マイク(有線)300円*2、マイク(無線)300円)
(4) 支払方法 会計事務規則第○条の規定により前金払いとします。
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送付文書・添付文書
①添付文書
送付本文以外で、承認・決定を行うために必要な文書のことです。具体的には以下の別紙1~3のようなものです。
別紙1
説明会参加者名簿
1 総務部△△課〇〇係・・・・・・・・
2 広報部△△課〇〇係・・・・・・・・
3 福祉部△△課〇〇係・・・・・・・・
4 健康部△△課〇〇係・・・・・・・・
5 産業部△△課〇〇係・・・・・・・・
6 子育て部△△課〇〇係・・・・・・・・
別紙2
文書事務説明会次第
令和6年4月1日
14:00~16:00
研修室
1 文書保存について
2 文書管理について
3 文書責任者について
②送付文書
送付件名「文書事務説明会への参加について(依頼)」とし、送付本文(送付先に送る鏡文)は以下の別紙3のようにします。
別紙3(送付先鏡文)
各課長、事務事業所の長殿
総 務 課 長
文書事務説明会への参加について(依頼)
記
1 〇〇〇〇
2 ××××
3 △△△△
③送付方法
「庁内施行」(通知先が内部の場合)
公開情報
①開示区分
「全部開示」
②個人情報の有無
「無」(個人情報が有の場合は、上記開示区分は「一部開示」か「全部不開示」となります)
鏡文を書くときの注意点
文中の「記」以下について
通知文等では「下記のとおり」という表現を使い、詳細を「記」以下に書くことがよくあります。
「記」以下において、文末を必ず「~こと。」にする必要はありませんが、文末表現に「~こと。」を用いる場合は、原則として全ての文末を「~こと。」で統一します。
「~されたいこと」としたものもありますが、公用文には敬語を用いないルールがあるので「~すること。」とするのが本来は正しいです
なお、ただし書、なお書き等がある場合は、その文末を「~こと。」としない慣例もあります。
実際の文書作成にあたっては、文末を「~こと。」で結ぶのが困難な場合もありますが、その場合でも「~こと。」で結べそうな他の表現を探す必要があります。
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「原則」の使い方
通知文等では、「原則」という用語がよく用いられます。
その際、名詞の副詞的用法である「原則~する(しない)」という表現は、出来るだけ避けて「原則として」とします。
同様に以下の用語にも注意が必要です。
結果として~(×結果~)
実際に~(×実際~)
事実として~(×事実~)
ある意味では~(×ある意味~)
略称の使い方
通知文等で同じ文章中で何度も出てくる長い用語については、略称をを用いる方が合理的です。
略称を用いる場合は、その用語が初出のところで「(以下「○○」という。)」と括弧書きで略称規定を置きます。その際、「以下」の後には「、」を打ちません。
例
感染症対策に関係する省庁(以下「関係省庁」という。)は、~
文字数が多い文書は見出しを付ける
国語分科会報告書では、文字数が多い文書では、内容の中心となるところを端的に表わす見出しの活用を勧めています。
その際、見出しを層化して、中見出しや小見出しを活用することも有効であり、読み手が見出しだけを読んでいれば、文書の内容と流れがつかめるようにすると良いとされています。
また、見出し活用する際は、見出しが目立つフォントを使うことも重要です。
くどい表現を避ける
具体的に以下のような語句を必要以上に用いると、くどい表現になりがちなので注意します。
こと もの ところ という しているところ していく となっている 行っている 思う 考える
くどい表現の例文
×勝つことができるでしょう。(勝てるでしょう)
×賛成できないものがある。(賛成できない)
×嫌いということではない。(嫌いではない)
×団結というものに期待している。(団結に期待している)
×伺っているところであり~(伺っているので~)
×書いてくことにしている。(書くことにしている)
×調査中になっており~(調査中であり~)
×目指したいと思います。(目指します)
×検証を行っている。(検証している)
また、二重否定の表現もくどい表現の例です。
×~しないわけではない。(~することもある)
×~を除いて実現しなかった。(~のみ実現した)
他にも重言を使用しないよう注意が必要です。
×諸先生方 ×各都道府県ごと ×一番最後
×今の現状 ×過半数を超える ×従来から
×まず最初に ×当面の間
公用文でも分かりやすい自然な言い回しを意識します。
くどい表現をなくすためには、字数をできるだけ減らす観点で読み直すと解決することも多いです。
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