個人情報保護制度において外部提供の制限がかかる場合とは?
( 外部提供の制限)
実施機関は、保有個人情報を自治体の機関以外のものに提供するときは、本人の同意を得なければなりません。
ただし次に掲げる場合においては、本人の同意を得ないで、外部提供することができます。
( 1 ) 法令等に定めがあるとき。
( 2 ) 住民の生命又は財産に対する危険を避けるため、緊急かつやむを得ないとき。
( 3 ) 当該保有個人情報が、出版、報道等により公にされているとき。
( 4 ) その他審査会の意見を聴いて、実施機関が特に必要と認めたとき。
また実施機関は、保有個人情報の外部提供をする場合は、提供を受けるものに対し、当該保有個人情報の適切な取扱いのために必要な措置を講ずるよう求めなければなりません。
さらに外部提供をしたときは、規則で定める事項を記録し、住民の閲覧に供さなければなりません。
【説明】
業務ごとに収集した個人情報は、条例の規定により登録された業務の範囲内で利用すべきものであり、原則として住の機関以外のものへ提供することはありません。
しかし、法令等の定めがある場合や緊急時など、提供すべき場合が考えられます。このため、一定の制限の範囲内で、住の外部に提供できることとします。
このような、保有個人情報を住の機関以外のものに提供することを「外部提供」といいます。
個人情報の外部提供に当たっては、住の管理を離れるため情報の拡散の危険性が高く、住の内部での利用よりも慎重な取扱いが必要です。
したがって、外部提供する際には、提供先に対して適正な取扱いを要請するとともに、その取扱いが確保されない場合には、外部提供の中止や提供した保有個人情報の返却を求めるなどの措置を講ずることも考えられます。
1 (1 ) 外部提供するときは、本人の同意を得ることを原則とします。
本人同意は、外部提供することについて、本人から文書又は口頭により、同意する旨の明確な意思表示がなされた場合をいいます。本人同意の取るときには、申請時に外部提供することが明らかな場合は、あらかじめその旨を口頭又は申請書に記載するなどの方法により、事前に同意を得るようにします。
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相続税法 第58 条第1 項 (市町村長等の通知)
市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失そうに関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。
(2 ) 法定受託事務等に係る届書、申請書等は、その業務本来の目的達成のために、東京都や国に書類を進達することがありますが、これも外部提供に当たります。
この場合は、申請先が都知事あてになっているなど、本人が申請時に外部提供について了解し得る状況にあるので、申請の記名押印によって同意があったものとみなします。
2 外部提供は、本人の同意を得ることが原則ですが、法令等で外部提供が定められている場合又は緊急事態で本人の同意を得る時間的余裕がない場合などには、本人の同意を得ないで外部提供することができます。
(1 ) 「法令等に定めがあるとき」とは、外部提供について、法令等で通知、報告等を義務付けたもの又は提供の命令等を規定したものをいいます。
いわゆる「できる」規定に基づく提供は、ここでいう「法令等に定めがあるとき」には、該当しません。
外部提供は、住の外部へ情報が出ていくことになるため、特にプライバシー保護の観点から慎重な取扱いが必要です。そこで、「法令等の定め」の解釈を厳格にして、提供することについて裁量の余地を与えない定め方をしている場合に限定します。
この点で、本人外収集や目的外利用での「法令等の定め」の解釈と異なるので、注意を要します。
また、情報公開条例によって、個人情報であっても、開示請求に応じる場合があります。これは、情報公開条例が、条例の定め
る要件を満たした情報の開示請求に対し、これに応じる義務を定めたものであるので、外部提供の「法令等に定めがあるとき」に該当するものと考えます。
例 通知、通報等の義務規定
( 2 ) 目的外利用には、「住民の福祉向上を図るため、法令等及びそれらに準ずる規程の定めに基づき適正に業務を執行するとき」は、本人の同意を得ないで目的外利用できますが 、外部提供の場合にはできません。
これは、住の内部利用の場合よりも、外部へ提供する場合の取扱いに、より慎重を期するためです。
( 3 )以上に該当しない場合であって、本人の同意を得ないで外部提供をする必要があるときは、個別事案ごとに審査会に諮問し、その意見を聴いたうえで、実施機関が判断します。その際、公益又は住民の福祉の向上のために必要であり、かつ、住民の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められるかどうかを判断し、決定するようにします。
なお、本人外収集、目的外利用と同様に、審査会の答申に基づく「事前一括承認基準」に該当するときは、改めて審査会の意見を聴く必要はありません。
「事前一括承認基準」に該当するか、審査会に諮問するかの判断に当たっては、総務課長に協議します。
「事前一活承認基準」に該当する場合は、当該個人情報を保有する課の課長の決定により外部提供することとします。
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(4) 条例に規定する外部委託に際して、実施機関が受託者に提供する個人情報については、ここでいう外部提供には当たりません。
3 (1) 保有個人情報の外部提供は、保有個人情報が住の管理を離れて取り扱われることであり、プライバシー保護の観点から特に慎重な取扱いが必要です。したがって、外部提供を受けるものに対し実施機関が適切な取扱いが必要です。
(2) 外部提供先への措置要求の内容としては、その利用の目的の制限、提供に係る保有個人情報の取扱者の範囲の限定、第三者への再提供の禁止又は制限、消去又は返還等利用後の取扱いについての指示等が考えられます。
要請すべき基本的な事項については、次のようなことが考えられます。
ただし、これはあくまで基本的な事項であり、提供する保有個人情報の内容、提供の形態、利用の目的、利用方法等を個別具体的に勘案して、その他必要な事項を条件として付する必要があります。
(1) 保有個人情報の秘密保持に関すること。
(2) 外部提供に係る目的以外の利用の禁止に関すること。
(3) 外部提供を受けたもの以外への再提供の禁止又は制限に関すること。
(4) 利用期間終了後の個人情報の返還又は廃棄等の取扱いに関すること。
(5) 保有個人情報の管理状況について、必要に応じて報告を求め、又は職員が立入調査できること。
(6) 事故発生時における報告義務
(7) 前各号に掲げるもののほか、保有個人情報の保護に関する事項
実施機関は、保有個人情報の外部提供を受けたものが、これらの事項に違反したと認められるときは、直ちに当該保有個人情報の外部提供の停止、返還の命令その他必要な措置を講ずるようにします。また実施機関は、当該措置を講じた後、その内容について速やかに審査会に報告しなければなりません。
(3) 実施機関は、提供後においては、措置要求した事項が遵守されているかどうか、報告を求めることや立入調査により把握するよう努めることとします。その結果、遵守されていないことが判明した場合には、外部提供を停止したり、提供した保有個人情報の返還を求めたりする必要があります。
4 外部提供をしたときは、その状況を把握するとともに、住民への透明性を高めるため、規則で定める事項を記載して、住民の閲覧に供します。条例の「規則で定める事項」は、次のような事項が考えられます。
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(1) 保有課の名称
(2) 業務の名称
(3) 外部提供をした理由
(4) 外部提供をした個人情報ファイルの名称
(5) 外部提供をした保有個人情報記録の項目
(6) 外部提供の根拠
(7) 外部提供をした年月日
(8) 提供先
(9) 外部提供の方法
(10) 前各号に掲げるもののほか、首長が必要と認める事項
4 記録は、外部提供記録票に記載することにより行うものとします。
5 利用中止の請求等
(1) 条例に反して外部提供された場合には、条例の規定により、当該個人情報の本人に対して自己情報の利用中止請求の権利を認めています。
(2) 自己情報の訂正、削除又は利用中止の請求に応じたときは、条例の規定により、その旨外部提供を受けているものに通知しなければなりません。
【運用】
1 外部提供の決定事務手続
(1) 保有個人情報の外部提供をしようとする課(以下「保有課」といいます。)は、外部から提供依頼があったときは、総務課と事前に協議します。
協議においては、依頼の趣旨と提供する保有個人情報の範囲、条例の根拠に該当するか、提供先に求める措置要求の内容、審査会への諮問の必要性等について検討します。
(2) 電算処理する保有個人情報を外部に提供するときは、あらかじめ情報課にも協議します。
(3) 保有課長は、外部提供することを決定したときは提供を行い、しないこととしたときは、外部提供の依頼先にその旨通知します。
2 審査会に諮問する場合
(1) 手処理文書の外部提供
① 保有課は、外部から提供依頼があったときは、総務課と事前に協議します。
② 協議の結果、審査会の諮問が必要と判断された場合には、保有課長は総務課長に審査会への諮問依頼をします(諮問依頼は、部長決定とします)。外部提供の決定は、審査会の答申があるまで保留します。
③ 総務課長は、諮問依頼について住長決定を行い、審査会に諮問します。
④ 審査会答申
⑤ 総務課長は、答申の内容( 答申書の写し) を保有課長に通知します。
⑥ 保有課長は、答申を尊重し、外部提供の可否を決定します。
⑦ 保有課長は、外部提供することを決定したときは提供を行い、しないこととしたときは、外部提供の依頼先にその旨通知します。
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(2) 電算処理の外部提供
① 保有課は、外部から提供依頼があったときは、総務課と事前に協議します。
② 保有課は、外部提供に当たっての情報セキュリティ対策について、情報課に事前に協議します。
③ ①、②による協議の結果、審査会の諮問が必要と判断された場合には、保有課長は、総務課長に審査会への諮問依頼をします(諮問依頼は、部長 決裁とします。)。外部提供の決定は、審査会の答申があるまで保留します。
③ 総務課長は、諮問依頼について住長決定を行い、審査会に諮問します。
④ 審査会答申
⑤ 総務課長は、答申の内容( 答申書の写し) を保有課長に通知します。
⑥ 保有課長は、答申を尊重し、外部提供の可否を決定します。
⑦ 保有課長は、外部提供することを決定したときは提供を行い、しないこととしたときは、外部提供の依頼先にその旨通知します。
3 外部提供記録票の作成手続
(1) 外部提供をしたときは、保有課長は、「外部提供記録票」(2部)を作成し、1部を個人情報業務登録票とともに保管し、もう1部を総務課長に送付します。
(2) 総務課長は、送付を受けた「外部提供記録票」を個人情報業務登録簿につづり込みます。
(3) 「外部提供記録票」の記載要領
外部提供記録票は、次の要領で記載します。
① 保有課
外部提供する個人情報を保有している課名を記載します。
複数課で同一業務を行っているため、登録課名を設定して業務登録をした場合には、その設定した「業務の登録課名」を記入します。
② 業務の名称、個人情報業務登録番号
外部提供する保有個人情報が収集されている登録業務名及び登録番
号を記入します。
③ 外部提供をした理由
外部提供をした理由を具体的に記入します。
④ 外部提供した個人情報ファイルの名称
個人情報ファイルの形態で保有個人情報を外部提供するときは、その名称を記入します。なお、個人情報ファイルの登録がされていない場合には、新たに届出が必要です。
⑤ 外部提供をした保有個人情報記録の項目
提供した項目を全て記入します。記入欄が足りないときは、別紙に記入して提出します。
⑥ 外部提供の根拠
条例の該当条項を記入します。本人同意以外で外部提供を行う場合については、条項のみならず、次のように具体的な理由もあわせて
記入します。
法令 法令等の具体的名称及び条項
緊急 具体的な緊急性
出版、報道等の具体的内容
審査会へ諮問したときは答申年月日を、事前一括承認基準に該当するときはその具体的な根拠(根拠法令名及び条項)
⑦ 提供先
提供先を具体的に記入します。
⑧ 外部提供の方法
外部提供の方法を具体的に記入します。
該当者の申請書の写しを郵送
フロッピーディスク等記録媒体に保存し、担当職員が持参
⑨ 担当部課
外部提供をした部課係名、電話番号を記入します。