「とおり、通り」「もの、物」「ゆえ、故」の使い分け方|公用文の漢字と平仮名の違い
公用文においては実質的が意味がない「形式名詞」は平仮名で表記します。
形式名詞は、「こと」「とおり」「ため」「わけ」「とき」「ところ」「もの」「わけ」等がありますが、基本的に平仮名で表記します。
ただし、普通の名詞のときは漢字で書くので、使い分けに注意が必要です。
以下、それぞれ例文を挙げながら解説します。
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形式名詞と普通名詞の違い
形式名詞とは、名詞のうち、本来の意味を失って形式的に用いられ、修飾語がなければ独立した意味を持ち得ないものいいます。例えば、「とおり」で説明すれば次のような違いがあります。
(普通名詞)次の通りを曲がる
(形式名詞)次のとおりである。
名詞の「とおり」は、本来「人通り」「通り道」など用いられ「通り」そのものが一定の独立した意味を持っています。
これは「普通名詞」(実質的意味の名詞)であって、常用漢字であるかぎり、漢字で書くことになります。
しかし、「次のとおりである」の「とおり」は、そもそも「通り」の意味はなく、「次の」などの修飾語がついて初めて意味を成します。
そこで、本来の意味の普通名詞と区別するため、誤読を避けるために平仮名で書くことになっています。
このように本来の意味を失って、他の意味に転じた名詞を「形式名詞」といいますが、公用文では特に多用されます。
こと(許可しないことがある。)
ため(病気のため欠席する。)
とおり(次のとおりである。)
とき(事故のときは連絡する。)
ところ(現在のところ差し支えない。)
もの(正しいものを認める)
ゆえ(一部の反対のゆえはかどらない。)
わけ(賛成するわけにはいかない)
※「ため」以外は、普通の名詞の場合は漢字で書く(例:「大変な事が起きた」というような「事態・事件」の意味のとき)
「とおり」の使い分け方
とおり・・・「次のとおり」のような用法のとき
通り・・・「2通り、3通り」「バス通り」のような用法のとき
「もの」「物」「者」の使い分け方
普通名詞の「物」は、触れたり見たりすることができる形のある物品をいい、漢字で書きます。
ただし、慣用句として対象を漠然と捉えて言う場合にも用いられることもあります。
普通名詞の「者」は、人、法人のことをいい、漢字で書きます。
これらに対し形式名詞「もの」は抽象的なものを指します。
使い分けとしては「物」でも「者」でもないものには、「もの」を用い、平仮名で書きます。
物・・・物の価値。食べ物。物売り。大物。物好き。物知り。物笑い。
者・・・75歳未満の者。次の条件に該当する者。資格を有する者。
もの・・・よく頑張ったものだ。そんなことがあるものか。参加したものとみなす。
ただし、限定を表す「~で(あって)、~もの」の構文に限り、人であっても「者」ではなく「もの」とひらがな表記します。
一連の形で、一定の者や事物を更に限定する場合に用いる表現で、「説明のための「もの」」と呼ばれる用法です。
例文
・東京都在住の者で未成年を扶養しているものは、申請してください。
・市内に住所を有する者であって、年齢が60歳以上であるもの。
・市が施工する工事であって、その費用が1億円以上であるもの。
「ゆえ」の使い分け方
普通名詞の「故」は、理由、原因、訳など本来の意味の名詞として用いられ、漢字で書きます。
これに対し、形式名詞「ゆえ」は、名詞や動詞の連体形について「~のため」「~だから」などの意味で用いられ、平仮名で書きます。
なお、接続詞の「ゆえ」も平仮名で書きます。
故・・・故あって。故なく。
ゆえ・・・君ゆえに許された。住民の反対ゆえにはかどらない。先を急ぐゆえ。それゆえ。
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