「及び、並びに」「又は、若しくは」の三段階での使い方|公用文での併用

「及び、並びに」「又は、若しくは」の三段階での使い方|公用文での併用

「及び、並びに」「又は、若しくは」の三段階での使い方|公用文での併用

 

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「及び、又は、並びに、若しくは」を使った接続方法は、法令等の公用文を作成する際に重宝する知識です。
列挙には「及び」などを使った限定列挙、「等」などを使った非限定列挙があります(限定列挙と非限定列挙の詳細は「及び、等」などの使い方|公文書での並列・併用表現を参照)。
さらに限定列挙には、「及び」を用いて集合の全体を示すもの(以下「集合列挙」)と、「又は」を用いて集合の中の一つを示すもの(以下「選択列挙」)があります。
以下では、さらに「並びに、若しくは」を使って二段階、三段階と階層化する方法も解説します。

 

「及び」「又は」の基本的な使い方

例1 この申請書には、A図面、B図面及びC図面を添付してください。
例2 この申請書には、A図面、B図面又はC図面を添付してください。

 

例1の場合、A、B、Cの図面の全部を添付しなければ要件を満たせませんが、例2の場合A、B、Cの図面のうちいずれか一つを添付すれば要件を満たせます。
この解釈上の違いは、公用文を書く場合、接続詞の用法がいかに重要であるかを物語っています。

 

「及び、又は、並びに、若しくは」の関係一覧表

「及び、又は」に加えて「並びに、若しくは」を使うことで、2段階、3段階の階層を成す場合もあります。
集合列挙のときは「及び」のほかに「並びに」と、選択列挙のときは「又は」のほかに「若しくは」を使います。
「並びに、若しくは」は2段階、3段階の階層を成す接続のために用いられるのであって、単独で用いられることは、どのような場合でもあり得ません。

 

「及び」「又は」は、階層的に用いる場合、「及び」が小括弧、「又は」が大括弧と逆の扱いになっていることに特に注意してください。
「及び、又は、並びに、若しくは」の関係を一覧にまとめたのが以下の表です。

 

単独での使用 括弧の扱い

集合列挙
(集合の全部を指す列挙)

及び 小括弧
並びに × 大括弧

選択列挙
(集合の一部を指す列挙)

又は 大括弧
若しくは × 小括弧

 

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「並びに」と「及び」の使い方

限定列挙を行う場合において、名詞の列挙に大括弧と小括弧が必要な場合があります。
この場合において、集合列挙のときは「及び」が小括弧、「並びに」が大括弧になります。
例えば、「○○条例第3条第1項、第3項及び第4項」に「第5条第1項」を集合列挙したい場合、更に「及び」でつなぐとどれとどれが対応する語句なのか接続の関係が分からなくなります。
この場合は、「異質で別格」の接続のほうに「並びに」を使って次の例1のようにつなぐことで、接続の階層を明確にします。

 

例1

○○条例第3条第1項、第3項及び第4項並びに第5条第1項

 

例1の接続は、2段階の階層を成して、赤字部分青字部分が同格として対応しています。
集合列挙はこのように、小さなつなぎに「及び」を、大きなつなぎに「並びに」を用いて接続関係を明確にします。
分かりやすく例えるなら、「○○条例第3条」の中で親密な関係にある「兄弟」の項は「及び」でつなぎ、○○条例の中であっても異質である第5条の「いとこ」は、異質さを際立たせるために「並びに」でつなぐということになります。

 

例1は、2段階の階層ですが、更にこれに「××条例第4条第3項」という、例えるなら全くの「他人」の語句をつないで、3段階の階層を成す接続をする場合は、どうすればいいでしょうか。
その場合は、更に「並びに」を用いて例2のようにつなぐことによって、3段階の階層を作ります。
2段階の階層を成すための「並びに」を「小並び」、3段階の階層を成すための「並びに」を「大並び」と呼んで区別します。

 

例2

○○条例第3条第1項、第3項及び第4項並びに第5条第1項並びに××条例第4条第3項

 

この例2の接続の場合、3層の階層を成して、「○○条例第3条第1項、第3項及び第4項並びに第5条第1項」の部分と「××条例第4条第3項」の部分が同格として対応していることを示しています。

 

括弧でいうなら、「及び」を一番小さい小括弧に用いて他を「並びに」を用います。
階層が3階層になる場合、大括弧と中括弧の接続に「並びに」を用います。
2階層の例文として、( )が小括弧、{ }が大括弧として分解すると以下のようになります。
分解例1

及び地方公共団体の職員並びに公共企業体の役員及び職員

 

{ (国)及び(地方公共団体)} 並びに {公共企業体の(役員)及び(職員)}

 

3階層の例文として、( )が小括弧、{ }が中括弧、【 】を大括弧として分解すると以下のようになります。
分解例2

使用施設ごとのアルコールの用途及び使用方法並びに使用設備の能力及び構造並びに貯蔵設備ごとの能力及び構造

 

【使用施設ごとの{アルコールの(用途)及び(使用方法)}並びに{使用設備の(能力)及び(構造)}】並びに【貯蔵設備ごとの(能力)及び(構造)】

分解してみると、前の「並びに」は中括弧の接続であり、後の「並びに」は大括弧の接続であって、互いに階層が異なっていることが分かります。とはいえ、とても分かりにくい文章です。

 

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「又は」と「若しくは」の使い方

選択列挙で階層化をするときは「若しくは」が小括弧、「又は」が大括弧になります。
例えば、「○○条例第3条第1項、第3項及び第4項」に「第5条第1項」を選択列挙したい場合、前に「又は」を用いたままで更に「又は」でつなぐと、どれとどれが対応する語句なのか接続の関係が分からなくなります。
このような場合、前の小さなつなぎに「若しくは」を用い、異質別格の語句の接続のほうに「又は」を用いて次の例1のようにつなぐことで、接続階層をはっきりさせます。

 

例1

○○条例第3条第1項、第3項若しくは第4項又は第5条第1項

 

例1の接続は、2段階の階層を成して、赤字部分青字部分が同格として対応しています。
選択列挙はこのように、小さなつなぎに「若しくは」を、大きなつなぎに「又は」を用いて接続関係を明確にします。

 

先ほど解説した、集合列挙の接続詞と、選択列挙の接続詞では、用法が逆になっていることに注意しなければなりません。

 

また兄弟関係で例えると、「○○条例第3条」の中で親密な関係にある「兄弟」の項は「若しくは」でつなぎ、○○条例の中であっても異質である第5条の「いとこ」は、異質さを際立たせるために「又は」でつなぐということになります。

 

例1は、2段階の階層ですが、更にこれに「××条例第4条第3項」という、全くの「他人」の語句をつないで、3段階の階層を成す接続をする場合は、どうすればいいでしょうか。
その場合は、2段階の「又は」を「若しくは」に替えて、最も異質別格の「他人」との接続には「又は」を用いて例2のようにつなぐことによって、3段階の階層を作ります。
最も小さいつなぎの「若しくは」を「小若し」、2段階の階層を成すための「若しくは」を「大若し」と呼んで区別します。

 

例2

○○条例第3条第1項、第3項若しくは第4項若しくは第5条第1項又は××条例第4条第3項

 

この例2の接続の場合、3層の階層を成して、「○○条例第3条第1項、第3項若しくは第4項若しくは第5条第1項」の部分と「××条例第4条第3項」の部分が同格として対応していることを示しています。
このように「又は」は最も大きいつなぎに1回だけ用いられます。

 

括弧だと、「又は」を最も大きい括弧、他は「若しくは」を用いるということです。
言い換えれば、中括弧と小括弧の接続に「若しくは」を同時に用いることになります。
2階層の例文として、( )が小括弧、{ }が大括弧として分解すると以下のようになります。
分解例

消印された証紙又は著しく汚染若しくはき損した証紙
{消印された証紙} 又は {著しく(汚染)若しくは(き損)した証紙}

 

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「及び・並びに」「又は・若しくは」の併用形

「及び・並びに」系の語句と、「又は・若しくは」系の語句が、併用され相互に階層的に用いられている場合もあります。
こうした場合は、「及び・並びに」系と「又は・若しくは」系は別々に考え、一方が「又は」と「若しくは」を用いて階層的になっているからといって、「及び」がないのに「並びに」を用いることはしません。逆も同様です。

 

併用系の例として、分かりにくいことで有名な弁理士法4条の分解例です。

弁理士は、他人の求めに応じ、特許、実用新案、意匠若しくは商標又は国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠又は商標に関する行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定による審査請求又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務を行うことを業とする。

 

分解後

弁理士は、他人の求めに応じ、【≪{(特許)、(実用新案)、(意匠)若しくは(商標)}又は{(国際出願)、(意匠に係る国際登録出願)若しくは(商標に係る国際登録出願)}に関する特許庁における手続≫及び≪{特許}、{実用新案}、{意匠}又は{商標}に関する{行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定による審査請求}又は{裁定}に関する経済産業大臣に対する手続≫についての代理】並びに【これらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務】を行うことを業とする。

 

階層関係が3階になる場合や、「及び、並びに」系と「又は、若しくは」系の語句が相互に階層的に用いられている場合は、文の構造から文意がわかるわけではありません。
読み手は文意から文の構造を時間をかけて探る必要があるため、深い階層の文章はできるだけ避けるようにします。

 

階層関係が多くなると分かりづらくなり、読み手に相当な負担をかけるため、できるだけ3階層以上にはならないようにします。
階層が多くなりそうなときは、箇条書にしたり、別々の文で書き分けたりすることによって、複雑な語句の接続は避けられるはずです。

階層化を避ける方法

このように、集合列挙「及び、並びに」、選択列挙「又は、若しくは」の用法には厳密なルールがあります。
公用文でこれらを使うなら、ルールを習熟しなくてはなりません。
しかし、法令文ならともかく、一般公用文では、これらの接続を必ず用いる必要はありません。
以下のような方法を使えば階層化を避けることができます。

 

「いずれか」「いずれも」を使う

次の例1の「いずれか」は「又は」の意味で、例2の「いずれも」は「及び」の意味を表しているので、接続詞を用いる必要がなくなります。

 

例1

研修には、主事、主査、係長のいずれかを参加させてください。

 

例2

遠足には、しおり、ノート、筆記用具のいずれも必要ですので、忘れずに持参してください。

 

箇条書を使う

上記の例1、例2を、それぞれ次のように箇条書にすれば、更に分かりやすくなります。

 

例3

研修には、次の職員のいずれかを参加させてください。
・主事
・主査
・係長

 

例2

遠足には、次にあげる文房具のいずれも必要ですので、忘れずに持参してください。
・しおり
・ノート
・筆記用具

 

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