公務員の起案に必要な内容(具体的な記載)

公務員の起案に必要な内容(具体的な記載)

起案内容の基本

決められた方式、つまり起案文書により起案を行うのは、組織における意思決定の記録を残すことにより事務を効率的かつ円滑に行うとともに対外的な証拠とするためであり、内部的に了承を得るためだけではありません。
「上司に説明するために起案している」のではなく、「事案の決定経過を客観的に説明するために起案文書を残している」ことに注意する必要があります。
したがって、起案文書には必要事項が漏れなく、かつ明確に記載されていなければなりません。
「関係者内部で了解がされているから」という理由で、起案文書の中に書かなくていいということにはなりません。

 

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起案内容の重要性

対外的な説明としてその役割を果たすためには、必要事項が漏れなく、かつ明確に記載され、客観的な証拠として認められるものでなければなりません。
また、客観的に通用する証拠とするためには、読み手に真意が伝わるように、文体、用語などに配慮する必要があります。
いくら内部で了解されている事項であっても、起案文書の中に明記されていなければ、対外的には決定権者が有効に意思決定したことにはなりません。

 

例えば事業実施に関する重要な事項が起案文書に書かれていなかった場合や内容が不明確な場合、本来であれば決定権者は事業の決定はできません。
決定権者がその内容を別の手段で把握しており、内容が適切であったとしても、起案文書に書かれていなければ、その判断を誰の責任で行ったのかを対外的に説明できません。
その事項に関して争いが起きたときに、大きな問題になる可能性があります。

 

起案文の要素

起案文書には、意思決定の対象となる事項(何を決定するのかということ)を記述するのは当然ですが、それに加えて起案の理由及び事案の経過を明らかにしなければなりません。
また、必要に応じてそれらを明らかにする資料を添えます。
これを整理すると次のようになります。
(1) 意思決定の対象となる項目
@ 起案伺い文
A 起案文
B 送付(施行)文書(送付・施行すべき文書があるときに限ります。)
(2) 起案の理由
(3) 事案の経過
(4) 起案の理由や事案の経過等を明らかにする添付資料

 

(1)から(3)までは、必ず記述しなければなりません。
なぜなら、これらが欠けるときは、承認者や決定権者が判断を行うことができないからです。
(4)については、(2)又は(3)では足りない場合に、必要に応じて添付します。
また、起案文書は、「文書の属性情報」、「伺い文」、「起案本文」、「送付(施行)文書」、「添付文書」及び「その他の関連文書」の要素から成り立っています。

 

これを前述のとおり整理した内容と対応させると、(1)@は「イ起案伺い文」、(1)Aは「ウ起案本文」、(1)Bは「エ送付文書」となります。
(2)及び(3)は、「ウ起案本文」に記述し、(4)は「オ添付文書」として添付します。
起案文書に必要なものは、原則としてこれだけです。
承認・決定権者が判断を行うのに必要な内容のみを記述します。

 

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ア 文書の属性情報
件名、起案日、決裁区分、回議ルート、文書分類、起案番号等、文書の情報として必要な部分です。

 

イ 起案伺い文
どのような処理(「実施」「通知」「回答」)の決定について判断を仰ぐのか(〜してもよろしいですか)を記入する部分です。
その起案文書の意思決定の対象を記述する部分であり、起案文書の中でも最も重要な部分です。
起案本文の内容が短い場合には、この欄に合わせて入力してもかまいませんが、ここに入力する内容があまり多くなってしまうと、承認・決定者が読みづらくなってしまいます。
細かな内容は別紙とするようにしましょう。
起案伺い文に書く内容は、起案本文を添付しない場合であれば、ウにある起案本文に必要な内容を書きます。
起案本文を別に添付する場合であれば、何について判断を仰ぐのかという要点だけを記入するようにします。
また、できるだけ箇条書きなどを利用し、冗長な文章は避けます。

 

ウ 起案本文
起案本文は、決定の基幹となる内容です。
起案本文は、起案伺い文と合わせて、当該起案文書が何を決定しているのかを具体的に記述しなければなりません。
記載する必要があるのは、決定し、実施すべき内容、理由、目的、対象、根拠法令、従来の経過、処理方針、必要経費、会計方法などです。
短い場合には起案伺い文に合わせて記入し、長くなる場合には、起案本文として取り込みます。

 

エ 送付(施行)文書
送付(施行)を伴う起案の場合には、相手方に送付(施行)する、あて先や送付番号等の付いた送付鑑文書を設定します。
鑑文書以外に、相手方に送付(施行)する別紙文書がある場合は、添付文書として設定します。
送付(施行)文書は、文書管理システムに必要な事項を入力して自動で作成する方式と、ワード等で作成したファイルを外部から取り込む方式があります。

 

オ 添付文書
意思決定を行うために必要な内容のうち、起案本文の内容を更に詳細に補足する資料等がある場合には、添付文書として添付します。
添付文書には、意思決定を行うために直接承認・決定者が確認する必要のある文書を添付します。
意思決定に必要のない文書を添付すると、起案に手間がかかるだけでなく、承認・決定者が確認しなければならない文書が増え、承認・決定の事務も非効率化します。
最終的に一緒に保管しておく必要がある、疑義があったときに確認する必要があるというだけの文書は、起案の添付文書としては添付しないようにします。
また、ここには、エで設定した送付鑑文書を重複して設定することはしません。
送付鑑文書以外に、相手方に送付(施行)する別紙文書がある場合にはここに添付します。

 

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カ 関連文書
意思決定に直接必要なわけではないが、意思決定をするに当たって参考とする文書等がある場合には、関連文書として付けます。
例えば、判断の参考として、前例となる起案文書を一緒に回す場合が、これにあたります。
また、収受からの起案を行う場合(収受起案文書の場合)においては、元となる収受文書の収受登録票等も起案の関連文書になります。

 

起案の具体的な内容

起案の内容

起案に必要な内容は、何を決定するのかなどによって異なりますが、起案文書の中には、承認者や決定権者が意思決定を行うために必要な内容を記載する必要があります。
分かりやすい文書を作成する際の参考として、一般的に次の項目が必要だと言われています。
・ Why(目的・ねらい) ・・・何のために
・ What(課題) ・・・何を
・ Where(対象範囲) ・・・どこを対象に
・ When(実現時期) ・・・いつまでに
・ Who(実現体制) ・・・誰が
・ How(実現手段) ・・・どのようにして
・ How Much(必要費用)・・・いくらで

 

また、起案の作成に当たっては、次の手順で内容を確認します。
(1) 法的見地
ア 法令上の根拠は何か。
イ 法令、行政実例、通達、判例等に違反していないか。
ウ 法定の手続を踏んでいるか。
エ 議会の議決を要しないか。
オ いかなる文書形式にするか。

 

(2) 行政的見地
ア 公益に反しないか。
イ 処理の方法は最適か。
ウ 世論に対する影響はどうか。
エ 前例はどうか。前例にとらわれすぎていないか。
オ 時宜にかなっているか。
カ 施行の日は適切か。経過措置は必要ないか。
キ 必要事項に漏れはないか。

 

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(3) 財政的見地
ア 予算上の措置はどうか。
イ 将来の負担を伴わないか。
ウ 収入・支出の手続は適切か。
エ 特別な支出手続を要しないか。
オ 財産管理上その他財務上の問題はないか。

 

(4) 公開情報・秘密情報
ア 開示区分は適切か。
イ 全部開示以外の場合、不開示理由は適切か。
ウ 個人情報の有無は正しいか。
エ 共有区分は適切か。
オ 「秘密」の指定は正しいか。

 

(5) 決定権者・決定関与者
ア 決裁区分
(ア) 規則、職務規程等に照らして適切か。
(イ) 特に異例のものではないか。
イ 協議先等
(ア) 規則・職務規程等に照らして適切か。
(イ) 必要にして最小限度か。

 

(6) 施行文書
ア 施行時期
(ア) 施行予定日を設定する必要はないか。
(イ) 浄書、発送をいつするか。
(ウ) 公布の手続は間に合うか。
(エ) 期限に間に合うか。
イ 施行上の注意
浄書・発送の方法をどうするか。
ウ 施行文書の形式
内容と形式が一致しているか。
エ あて先・発信者名
(ア) あて先は適当か。
(イ) 発信者名は適当か。
(ウ) あて先と発信者名のバランスはとれているか。

 

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(7) 形式面の検討
ア 事務の所管
(ア) 法令、条例、規則に照らして適切か。
(イ) 国、他の都道府県・市町村、他の部課との関係はどうか。
イ 保管・保存
(ア) 収納するフォルダは適切か。
(イ) 保存期間は適切か。
ウ 件名
件名は簡潔かつ的確か。
エ 用字、用語
(ア) 「常用漢字表」によっているか。
(イ) 異字同訓・同音の漢字の用い方に誤りはないか。
(ウ) 送り仮名、仮名遣いは正しいか。
(エ) 法令用語の用い方は正しいか。
(オ) 数字、符号等の表記に誤りはないか。
(カ) 助詞、助動詞の用い方は正しいか。

(キ) 敬語は正しく使っているか。

 

オ 文章・構成
(ア) 内容は正確に要領よく書かれているか。
(イ) 理解しやすい表現になっているか。
(ウ) 段落の区切りは適切か。
(エ) 文書の展開は適切か。
(オ) 重複、漏れはないか。
(カ) 法令番号・条文の引用に誤りはないか。
(キ) 句読点は正しく使っているか。
(ケ) 読む人の立場で書かれているか。

 

例)支出の根拠となる事業実施原議
支出を伴う事業の実施原議の場合、支出の根拠として決定権者は次の事項を判断しなければなりませんので、次の事項は必ず記載する必要があります。
・ 事業の内容が適切か。
(何のために、いつ、どこで、誰を対象に、何を行うのか。)
・ 予算の目的に合致しているか、予算の範囲内であるか。
(事業の目的、予算科目、支出額、内訳、支出方法等)

 

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具体的な記載内容等

(1) 各項目入力上の注意
ア 件名
(ア) 不開示情報は使用しない。
文書件名は、庁内の誰でも検索して参照することができます(文書の内容を参照できるかどうかは共用権限によります。)。
個人情報などの不開示情報は入れないように注意してください。
悪い例)山田太郎面接記録
(イ) 後から検索しやすい件名を使用する。
同じ定例的な文書にもかかわらず、その時々で違う件名を付けてしまうと、あとから整理しづらくなります。
ただし、全く同じ件名を使用してしまうと、件名からの特定が難しくなりますので、同じ件名になってしまう場合は、日付を入れるなど各業務で工夫してください。
(ウ) 件名だけである程度文書を特定できるようにする。
分類やフォルダ、起案の中身をみれば特定できる内容でも、件名にあまりにも一般的な名称を付けてしまうと後で件名から探すときに特定できず、不便になります。
また、外部に対する情報公開の目録としても不適切です。
悪い例)調査に対する回答

 

イ 共用権限
共用権限とは、その文書を参照できる範囲です。
決裁や供覧の対象者として指定されている場合には、共用権限とはかかわりなく、起案(供覧)文書を閲覧することができます。
特に係外に文書を見せられない理由(個人情報等の秘密情報が含まれているような場合)がなければ「全庁共有」に設定してください。
特に、公開情報において「全部開示」を設定した場合には、必ず「全庁共有」にしてください。
外部に対して公開できる文書が職員に対して公開できないことはありえないからです。
逆に、公開情報において不開示(一部不開示を含みます。)に設定した場合には、共用権限は「係内共有」を設定します。
外部に対して公開できない文書は、原則として係外にも公開できないからです。

 

ウ 決裁区分
職務規程等に従って決定者を選択します。

 

エ 優先度
必要に応じて「至急」「重要」「秘密」等を指定します。
ここで「至急」「重要」「秘密」を指定すると、決裁者側の承認決裁依頼文書一覧にそれぞれのマークが表示されて注意を促すほか、至急の場合には、起案文書が到着した対象者にグループウェアのメールが発信されるシステムが通常です。
指定をする基準は次のとおりです。
(ア) 「至急」
決定関与者に対して急を要する起案である旨を示したい場合には、「至急」にチェックを入れます。
至急にチェックを入れると、起案文書が到着した際に承認・決定者あてにお知らせメールが送られますので、その点を考慮してチェックを入れます。

 

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(イ) 「重要」
定例的な起案以外で、その承認・決定に際して注意を要するものであるときは、「重要」にチェックを入れます。
承認・決定権者は、「重要」にチェックが入っているものについては簡易承認・決定せず必ず内容を確認するものとします。
ただし、安易に「重要」のチェックを入れて、承認・決定権者の注意を促す役割が薄れないように注意します。
(ウ) 「秘密」
不開示情報を含む場合にチェックを入れます。

 

オ 依頼コメント
依頼コメントは、電子決裁システム側の承認・決定依頼文書一覧に表示されます。
コメント欄には、承認・決定権者の判断を助けるような内容のみを入力してください。
「よろしくお願いします。」など、判断に無関係な内容を入力すると、本当に必要なコメントが目立たなくなってしまいます。

 

カ 施行要否
決定された事案の実施に当たって、その効力を発生させる相手方に対し、文書で意思・事実を伝達することを文書の施行といいます。
施行がある場合には、「施行要」にチェックを入れます。
これは、庁内施行機能やメールによる自動送付機能のように、文書管理システムにより自動的に送付する機能を使用するか否かにはかかわらず、施行の有無を管理するものです。
文書管理システムにより自動的に送付する機能を使用しない場合でも、「施行」を行う場合には必ず「施行要」にチェックを入れます。

 

キ 回議ルート
その事案の決定権者、その他の決定関与者を設定する必要があります。

 

(2) 送付(施行)文書の設定
起案においては、施行の要否や施行先についても、承認・決定を行っています。
文書管理システムの機能を利用して送付するとき以外であっても、施行に関する情報を設定しなければなりません。

 

(ア) 責任者
文書の発送元となる名義人を設定します。
(イ) あて先
送付(施行)文書のあて先として表示する名義人を設定します。
(ウ) 送付先
実際に送付を行う処理担当者を設定します。

 

※送付番号の予約
起案情報を入力する時点では、送付番号は付番されていません。
送付番号の予約をすると、起案を行った時点で付番されますので、浄書時に確認することができます。
送付文書をシステム外で作成する場合には、後から文書番号を入力する必要がありますので、予約を行い、浄書時に送付番号を確認のうえ、入力します。

 

(3) 保存情報
文書の分類、保存期間など、その文書を整理保存するために必要な情報を設定します。
文書は通常、フォルダ単位で管理を行いますので、分類や保存期間なども原則としてフォルダごとに決まっているものです。
そのため、文書の作成においてはその文書がどのフォルダに属するのかをまず指定し、分類や保存期間についてはそのフォルダの選択により自動設定されるものを利用します。
その他保存管理について特記事項があれば備考欄に入力します。

 

(4) 公開情報
その文書が情報公開条例上の行政文書開示請求があったときにどのような扱いをするのかを、目安として設定します。
ただし、ここで設定するのは文書管理について注意を促すための目安であり、実際に行政文書開示請求があったときには、そのときに改めて判断を行う必要があります。
「一部開示」「全部不開示」「存否応答拒否」を選択した場合には、優先度の項目で「秘密」の指定も行います。

 

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