公務員の起案文書の書き方|稟議方式と決定書方式の意思決定の違い

公務員の起案文書の書き方|稟議方式と決定書方式の意思決定の違い

公務員の起案文書の書き方|稟議方式と決定書方式の意思決定の違い

意思決定とは

自治体の行う事務事業は、「何を、いつ、どのようにして行うか」を判断し、その判断に基づいて実施されています。
この判断を意思決定といいます。

 

ここでいう意思決定とは、自治体の意思決定、つまり自治体の事務事業を遂行するうえで必要とされる意思決定のことです。
あくまでも組織としての意思決定であって、一公務員である職員が行う判断のすべてをいうのではありません。
例えば、担当者がその場で裁量により行えるような作業レベルの判断は、ここでいう意思決定ではありません。
自治体における意思決定は、通常、起案者が決定案を作成し、それに対して決定権者が決定の記録を残すことで行われます。
この、意思決定に至るまでの一連の手続を、意思決定の手続と呼びます。

 

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意思決定の運用

意思決定の意義

意思決定の結果及びその経過は、説明責任を果たすために、対外的に説明できる形で残す必要があります。
また、自治体の行為についての責任の所在を明らかにする証拠資料となるものですから、定められた形式に基づいて文書(記録)を残す必要があります。
自治体において意思決定が対外的に有効なものとして認められるためには、次の要件を備えていることが必要です。

(1) 決定内容が明確であること(意思決定内容の確定)。
(2) 決定した内容が決定した者以外の者にも明示されること(意思決定の明示)。
(3) 決定されたことが記録され、一定期間保存されること(意思決定記録の保存)。

自治体における意思決定は、文書主義の原則に基づき、「起案文書」を作成し、それに決定権者が決定の記録を残すことで行われます。

 

起案文書の書き方

起案文書には、意思決定の対象となる事項(何を決定するのかということ)を記述するのは当然ですが、それに加えて起案の理由及び事案の経過を明らかにしなければなりません。
また、必要に応じてそれらを明らかにする資料を添えます。
これを整理すると次のようになります。

 

1 意思決定の対象となる項目
 ① 起案伺い文
 ② 起案文
 ③ 送付(施行)文書(送付・施行すべき文書があるときに限ります。)
2 起案の理由
3 事案の経過
4 起案の理由や事案の経過等を明らかにする添付資料

 

1から3までは、必ず記述しなければなりません。
なぜなら、これらが欠けるときは、承認者や決定権者が判断を行うことができないからです。
4については、2又は3では足りない場合に、必要に応じて添付します。

 

また、起案文書は以下のア~カの要素で構成されています。

ア 文書の属性情報
イ 伺い文
ウ 起案本文
エ 送付(施行)文書
オ 添付文書
カ 関連文書

 

これを前述のとおり整理した内容と対応させると、1①は「イ 起案伺い文」、1②は「ウ 起案本文」、1③は「エ 送付文書」となります。
2及び3は、「ウ 起案本文」に記述し、4は「オ 添付文書」として添付します。
起案文書に必要なものは、原則としてこれだけです。
承認・決定権者が判断を行うのに必要な内容のみを記述します。

 

起案文の具体的な例文や、詳細な書き方については、公務員の起案文書(伺い文)の書き方|伺い書の例文集も参照してください。

 

起案と供覧の違い

起案が、何らかの意思決定を求める行為であるのに対し、意思決定を伴わない文書を組織内において閲覧に供するために回付することを「供覧」といいます。
起案と供覧は全く異なる処理です。
同じ文書を回す行為であっても、何らかの意思決定、つまり「YES/NOの判断」を行わないのであれば、それは供覧であり、起案ではありません。
意思決定の記録を明確にするためにも、また効率的な情報共有の促進のためにも、意思決定を伴う起案と、意思決定を伴わない供覧は、明確に分けて処理する必要があります。
具体的には、起案と供覧の使い分けは次のように考えられます。

 

起案を行う場合

①収受した文書に対して、交付を決定したり、回答を送付するような場合
②組織として、正式に通知や依頼を発する場合
③その他、組織としての、何らかの意思決定が伴う場合

 

供覧を行う場合

①収受した文書を、単に周知のために、対象者を特定して回付する場合
②作成した文書を、報告などのために、対象者を特定して回付する場合
③その他、意思決定を行う場合以外で、閲覧させるために文書を回付する場合

 

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意思決定の手続の方式

意思決定の方式としては、一般に「稟議方式」と「決定書方式」があります。
また、意思決定の手続は、文書主義の原則に基づき、文書により行われます。

 

稟議方式とは

稟議方式とは、「事務担当者が最良と考える決定案を作成して上司その他の関係者に回付し、承認を求めること」をいいます。
事務担当者が作成した案に対して、関係者全員が承認をすることで事案を決定する方式であり、行政機関で広く行われていました。
稟議方式には、以下のメリットがあるといわれています。

①下位者によって原案が作成されるため、実際的な案が出やすい
②意思決定に関係するものに対して広く、事前に調整を行うことができる

 

一方、稟議方式には、以下のデメリットがあるともいわれています。

①回付する関係者の範囲が不必要に広がり、起案から意思決定までに時間がかかり過ぎる
②決定権限と責任の所在が不明確である
③最高管理者のリーダーシップが発揮できない

 

そこで、稟議方式の欠点を改良し、意思決定を迅速かつ効果的に行うために採られる方式が「決定書方式」です。

 

決定書方式とは

決定書方式とは、決定権者が自ら決定案を作成し、決定することができる方式です。
この方式では、案の作成を下位者に行わせることはできますが、事案を決定するのは決定権を持つ一人の決定権者です。

 

稟議方式が有する決定機能・調整機能と伝達機能とを分離し、意思決定の手続に関与する者を起案責任者(起案者)、調整責任者(決定関与者)及び決定責任者(決定権者)に限定して意思決定を行います。
つまり、広い意見調整や情報提供は意思決定の事務の中で行うのではなく、別の手段で行うことにより、意思決定そのものは迅速に行うというものです。
この方式は、「事務運営に関する意見(りん議の改善について)」(昭和39年9月29日臨時行政調査会答申)を期に、各自治体で採用されてきました。
この答申の中で同調査会は、権限の大幅な委譲を前提として、決定結果の責任の概念を導入し、決定書方式の採用を勧告しています。
現在多くの自治体ではこの方式が採用されています。
決定権者が必要以上に上位者になっていないか、単に情報提供や周知で足りる者が協議者になっていないかといった点を再確認し、できる限り意思決定の手続を簡略化し、迅速化します。

 

文書管理システム等による意思決定

原則の手続

自治体における意思決定の手続は、原則として次の方法により行います。

 

①文書管理システム等に必要事項を入力して起案文書を作成し、電磁的に表示する。
②決定の経過を文書管理システムに電磁的に記録する。
③決定関与の経過を文書管理システムに電磁的に記録する。

 

文書管理システム等を活用すれば保存文書を電磁的に管理できるため、保管段階における省スペース、検索性、再利用性の向上といった利点があります。
また、進捗状況の把握、決定記録の適正管理、遠隔地においては文書の輸送時間の短縮などを図ることができます。
システムにより起案文書の管理を行うのは、作成から意思決定、保管、利用、情報公開、廃棄といった一連の文書のライフサイクルを一元的に、そして適正に管理することにより、文書事務の長期的・全体的な効率化及び適正化を図るためです。
文書1件当たりの作成及び承認・承認の迅速化や、ペーパーレスによる紙の減量を主たる目的として行うものではありません。

 

例外の手続

例外的な場合として、次の方法により行うこともあります。
ただし、これらの方法はあくまで例外であり、統括文書管理責任者が認める場合にしか行うことができません。

 

①文書管理システムに必要な事項を入力し、起案用紙を出力して、書面による起案を行う。又は、文書管理システムは使わず、特例帳票を使用して書面による起案を行う。
② ①の方法で書面により起案した文書に、決定権者が押印する。
③ ①の方法で書面により起案した文書に、決定関与者が押印する。

 

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