公印とは|公印の押し方、公印省略の書き方、位置等|公務員の契約事務
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公印とは
公印とは、公務上作成された文書に使用する印章をいいます。
公印の意義
公印は、文書の内容及び成立が真正であることを認証し、その文書について官公庁又は公務員が自ら責任を負うことを明らかにするために使用するものです。
公印を押すことについては、個々の法令等で文書形式を定めている以外は、一般的に公文書に公印を押すべきものと定めた法令等はありません。
そのため、公印が押されていないからといって、公文書として直ちに無効になるわけではありません。
しかし、民事訴訟法第228条第2項においては、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定するとしています。
つまり、自治体が定めた形式により作成されている公文書は、真正に成立された公文書と推定されます。
したがって、公印を押すべきものと定めている文書について公印が押されていない場合には、自治体が定めた形式で作成されているとはいえないため、民事訴訟法上、真正に成立した公文書であるという推定は働きません。
その文書について受取人がその真正さを疑うときは、その作成名義人(発信者)、つまり自治体は、その文書が真正な公文書であることを立証しなければその効力を主張できない可能性があります。
各業務において、その文書の作成に関する根拠規定等を確認のうえ、公印が必要な文書には必ず押さなければいけません。
また、自治体が公印を押すべきものと定めている文書については、公印が押されている場合は真正なものと推定されます。
つまり、公印が発信者の真意を表していない(不正に公印が利用されていた)としても、受取人は、その文書を真正なものとして、その効力を主張できる可能性が高くなります。
公印管理者は、公印の不正な使用がないよう、十分注意を払わなければなりません。
<民事訴訟法>
(文書の成立)
第228条
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
公印の押し方、位置
公印使用簿の記入
公印の使用について記録を残すため、公印管理者は、使用者に公印使用簿を記入させます。
公印を押す位置
職印と庁印
公印は、発信者の職氏名の最後の文字か職名の最後の文字の半分にかけて押します。
これは、押印後の発信者の改ざんを防ぐために行われている慣行です。
そのため、発信者名の位置は公印の大きさによって決めることになります。
レイアウトとしては、公式ルールはありませんが、「公印の右端が他の項目の右側と揃うことが望ましい」とされています。
割印
電子決裁を行う場合には、割印を押す必要はありません。
例外的に紙による決裁を行った場合において、割印を押すときは、発送文書の上辺中央部と、決裁済みの起案文書の上部空欄とに半分ずつかかるように押します。
あて先が多数の場合は、別の用紙にあて先を書いて、それにかけて押します。
そして、それを決裁済みの起案文書に付けて照合と確認ができるようにしておきます。
契印(契約印)
契印が必要な場合は、文書のとじ目と継ぎ目にその文書に使った公印を押して契印とします。
職務代理を置いた場合の発信文書の公印
市長の職務代理が置かれている場合、押すべき公印は、市長印や副市長印ではなく、「職務代理者の印」となります。
職務代理者が置かれている期間については市長印を使用することはできません。
事務取扱を置いた場合の発信文書の公印
事務取扱を置いた場合は、押すべき公印は当該事務取扱の対象である職の公印となります。
例えば、副市長が総務部長の事務取扱となる場合には、部長印を押します。
公印規則
市長部局
市長部局の公印の名称、用途などについては、自治体ごとの公印規則等により定められています。
公印の作成、廃棄等の手続及び管理は、別に定めがあるときを除き、公印規則等に従って行います。
組織改正などにより新たな公印を作成するときなど、公印の状況に変更がある場合には、公印規則に従って所定の手続を行う必要があります。
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行政委員会等
行政委員会等についても、それぞれ公印についての規程が定まっていますので、その定めに従います。
公印の種類
職印と庁印
「市長印」や「副市長印」のように行政機関の長やその補助機関の一定の職名を表した公印を総称して「職印」といいます。
「○○市印」や「○○市保健所印」のように組織としての行政機関の名称を表示した公印は総称して「庁印」といいます。
各事業の根拠規定により自治体名で発信する場合や組織名で発信するときには、庁印を押します。
それ以外の場合には、職印を押します。
文書の発信者名については、「あて先・発信者名の表示」を参照してください。
割印と契印(契約印)
割印は、決定文書とそれに基づいて作成された施行文書を照合して文書の施行を証明し、発送文書の件数を明示し、かつ偽造文書の発生を防ぐために押します。
契印(契約印)は、施行文書が2枚以上にわたる場合、それらが正しく連続していることを認証するために、文書のとじ目又は継ぎ目に、連続する文書の両方に半分ずつ掛けて押印します。
契約書、登記嘱託等権利の得喪に関する文書又は許可書の原本など特に重要な文書について、抜取り、差替えを防ぐ意味で押印するものです。
割印及び契印には、文書の発信者の職印を用いるのが原則ですが、自治体によっては、事務上の便宜から、割印については専用のものを作成して使用していることもあります。
電子決裁を行った文書を紙で交付する場合には、決定文書が改ざんされていないことを電子的に証明でき、決定時の文書と交付された文書の照合ができるため、割印は押す必要はありません。
ただし、紙の施行文書が2枚以上にわたる場合には、電子決裁の場合でも同様に契印を押します。
専用印
本来、公印は1種類について1個あればよいことになります。
しかし、行政需要が増えつづけている現在、それだけでは事務を処理することはできません。
そこで、特定の事務には専用公印が置かれています。
例えば、住民基本台帳事務用として、住民課と各出張所の戸籍係に公印が置かれていることがあります。
また、各部の庶務担当係に一般文書に使用する専用市長印を置いてあることもあります。
金銭出納員領収印
金銭出納員領収印も公印ですので、文書担当係等で一括で管理を行うことがあります。
公印省略ができる文書
対外文書の公印省略
公印は、原則として自治体が施行する文書にはすべて押します。
ただし、軽易な文書については、公印を省略することができます。
公印を省略した場合は、発送文書の発信者名の下に「(公印省略)」と書きます。
公印のない職(例えば課長)にある者が発信者となる場合は、公印の代わりに私印を押すことはありません。
このほかに、委嘱状には公印を押しますが、任命状には公印を押しません。
なぜなら、通常、委嘱状は外部に対して交付するのに対し、任命状は内部の職員に対して交付するものだからです。
文書管理システム等で起案・決裁を行った文書を郵送や電子メール等で外部に送付する場合、文書管理システムに決定の記録が残っていても、受信者はそれを確認することはできません。
施行文書に公印を押して外部に発送する必要がある場合には、施行文書を紙に印刷し、公印を押印したうえで、郵送などの方法で発送します。
公印が必要ない場合には「(公印省略)」と表示します。
対内文書の公印省略
対内文書は、公印を押すことを省略することができます。
庁内施行機能を使用して送付する場合
文書管理システム等の庁内施行の機能で送付する場合には、正当な権限者の意思で発信されたことがシステムで確認できるため、公印を押す必要はありません。
元々押す必要がないので、「(公印省略)」を表示する必要もありません。
庁内施行以外の方法で送付する場合
例外的に庁内施行機能を使用せずに施行する必要がある場合には、決定の記録が文書管理等システムに残っているとしても、受信者はそれを確認することができません。
したがって、原則として押印は省略しますが、押印の必要がない文書であることを受信者が確認できるよう、発送文書の発信者名の下に「(公印省略)」と表示します。
不必要に押印を義務付けると庁内文書の電子化の促進の妨げとなりますので、押印を行うのは、押印による確認が不可欠な重要な事案の場合のみです。
上記のとおり、庁内施行機能を使用することができれば、押印による確認をしなくても、決定の記録は確認できます。
「押印が必要なので、紙で送付する必要がある」というのは誤りです。
※ 対内文書における私印の扱い
庁内における申請・届出書類等の提出において、発信者である課長等の私印を押すことはありません。
特に文書管理システム等の内施行機能で電子文書を施行する場合においては、決定権者の承認・決定があることはシステムに記録されているため、押印する必要がないからです。
「公印省略」の書き方、位置
公印を省略する場合、「(公印省略)」と表示する位置は、「発送文書の発信者名の下」になります。
書き方、位置に厳密な基準はありませんが、発信者の文字の長さに応じてバランス良く中央に寄せて書くのが通例です。
特に発信者の文字数に合わせて均等割をする必要はありません。
公印省略の記載例
職員課長
(公印省略)
環 境 防 災 部 長
(公 印 省 略)
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割印について
割印は、対外文書のうち、①重要な文書、②相手方と枚数を確認しておく必要のある文書に押します。
ただし、文書管理システム等で起案し、電子決裁を行った場合には、割印は必要ありません。
施行後に起案文書の差替えが行われていないか、どこに施行されたかについてはシステム内の記録により確認できるからです。
文書管理システム等で起案した場合であっても、例外的に紙による決裁を行った場合には、紙の起案文書と施行文書に割印を押す必要があります。
電子署名について
総合行政ネットワーク文書については、電子署名を行います。
総合行政ネットワーク及び電子署名については、「LGWAN(総合行政ネットワーク)とは」を参照してください。
公印の管理
市長部局における公印の管理は、公印規則等に従って適正に行います。
そのほかの行政委員会等については、それぞれの組織の規程に従います。
公印の作成・廃棄
市長部局の公印の作成、旧印の引継ぎ、保存、廃棄、公印台帳の作成などは、通常は文書担当係等が総括的に管理しています。
各組織だけの判断で、作成や廃棄などを行うことはできません。
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事故時の報告
公印は、前述のとおり、正当な権限者が文書を発信したことを推定させる重要なものです。
盗難や紛失などにより不正な利用がされないよう、十分注意しなければなりません。
もし、事故があった場合には、直ちに所定の届出を行います。
公印管理者の責務
公印規則は、各公印について管理者を定めています。
公印の管理者は、公印を常に丈夫な容器に入れ、執務時間外には、鍵の掛かる金庫などに保管しておかなければなりません。
また、公印を押す場合には、公印管理者は、公印を押す文書と決裁済みの起案文書とを照合し、決定が完了しているかどうかを確認しなければなりません。
公印は、紛失等がないよう、その管理には注意を払う必要があります。
また、先に述べているように、公印が押された文書については、たとえそれが発信者の真意を表すものでなくても効力を主張できる可能性が高くなりますので、不正な利用がないよう、十分注意を払います。
事前押印とは
事前押印とは、公印管理者の承認を得た文書に、あらかじめ公印を押すことです。
事前押印をすることができるのは、定例的かつ定型的な文書で、交付の日時、場所、発行先が不確定で、即時に交付する必要があるものです。
事前押印をすることは、総務担当部長に届け出る必要があります。
また、事前に押印された文書は、交付するまでの間、厳重に管理し、その文書が使用できなくなったときや使用する必要がなくなったときは、不正利用を防ぐため、すぐに廃棄します。
印影印刷とは
公印の印影をあらかじめ印刷することができるのは、定例的かつ定型的で一時に多数印刷する文書です。
具体的には、納税通知書などがこれに該当します。
印影を印刷するときも、事前押印と同様、総務担当部長に届け出る必要があります。
そして、その様式を使用しなくなったときには、事前押印と同様、不正利用を防ぐため、速やかに廃棄する必要があります。
電子計算組織による公印の出力とは
電子計算組織により公印の印影を出力できるのは、定例的かつ定型的な文書で、公印管理者が必要と認めたものです。
具体的には、住民票の写しなどがこれに該当します。
公印の印影を出力するときには、総務担当部長に届け出る必要があります。
公印の印影を出力するために使用する公印は、通常は文書担当係で管理しています。
公印管理において申請・届出が必要な場合
公印は、文書の内容及び成立が真正であることを推定させ、その文書について官公庁又は公務員が自ら責任を負うことを明らかにするためのものです。
その取扱いには十分注意し、必要な手続を行うようにします。
公印の作成・廃棄
各部長は、廃棄の場合には旧印を添え、所定の様式により総務担当部長に申請します。
公印事故届
各部長は、公印に盗難、紛失、偽造又は変造があったときは、所定の様式により、直ちに総務担当部長を経由して市長に届け出なければなりません。
事前押印
各部長は、所定の様式により総務担当部長に届け出ます。
印影印刷
事前押印に準じます。
電子計算組織による公印の印影の出力
各部長は、所定の様式により総務担当部長に届け出ます。
まとめ
・公印とは、公務上作成された文書に使用する印章をいう。
・文書の作成に関する根拠規定上、公印が必要な文書に公印がない場合、真正に成立された公文書と推定されなくなることがある。
・公印は、発信者の改ざんを防ぐため、発信者の職氏名の最後の文字か職名の最後の文字の半分にかけて押す。
・割印は、発送文書の上辺中央部と、決裁済みの起案文書の上部空欄とに半分ずつかかるように押す。
・契印(契約印)は、文書のとじ目と継ぎ目にその文書に使った公印を押す。
・市長部局の公印の名称、用途については、自治体ごとの公印規則等により定められており、公印の作成、廃棄等の手続及び管理は公印規則等に従って行う。
・公印には「職印」「庁印」「割印」「契印(契約印)」「専用印」「金銭出納員領収印」などの種類がある。
・対外文書について、原則は自治体が施行する文書にすべてに公印を押すが、軽易な文書については、公印を省略することができる。
・対内文書は、原則として公印を省略することができる。
・公印を省略した場合は、発送文書の発信者名の下に「(公印省略)」と書く。
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