弁明書の書き方|テンプレート例文、サンプル記載例|審査請求対応
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弁明書とは
弁明書とは、処分庁等が処分を行ったこと、又は処分を行っていないことの理由を説明した書面です。
住民から処分又は不作為についての審査請求があった際に、公務員は弁明書を作成する必要があります。
「処分」についての審査請求に対する弁明書
弁明書には「処分の内容及び理由(行政不服審査法29条3項1号)」を記載します。
弁明書の記載は、抽象的・一般的なものでは不十分です。
審理員等が処分の内容及び理由を明確に認識し得るよう、根拠となる法令の条項等を示した上で、対象となる処分について、原因となる事実と当該条項等の適用関係を、具体的に記載します。
審査請求書に、処分が違法又は不当であるとする理由についての審査請求人の主張が具体的に記載されている場合には、それも踏まえて、審査請求人の主張が認められない理由を具体的に記載します。
審査請求に係る処分について審査基準や処分基準を公にしている場合には、これらの基準の適用関係についても明示する必要があります(最高裁令和23年6月7日第三小法廷判決・民集第65巻4号2081頁参照)
「不作為」についての審査請求に対する弁明書
弁明書には「処分をしていない理由並びに予定される処分の時期、内容及び理由(行政不服審査法29条3項2号)」を記載します。
当該申請がいかなる処理段階にあるのかを明示し、審査に通常よりも時間を要する事情があれば当該事情を明らかにするなどして、処分に至っていない理由を記載する必要があります。「業務が忙しいため」といった抽象的な記載では不十分です。
「予定される処分の時期」とは、弁明書の提出時点において予定されている予定時期であり、「標準処理期間のとおりであれば○月△日くらいであるが、本件の場合には○日程度遅れる見込み」などの記載が考えられます。
「未定」など、予定時期をまったく示さない記載は可能な限り避けます。
「予定される処分の内容及び理由」としては、弁明書の提出時点において予定されている処分の内容及び理由を、できる限り具体的に記載します。
状況により明示できない場合は、これを明示できない理由を記載します。
弁明書作成に当たっての注意点
(1) 審理の公正性を確保するため、審理員や審査庁担当(法務担当係)が弁明書の内容について事前に審査をすることはできません。
(2) 弁明書は、審査請求人及び参加人に送付されます(法29条5項)。弁明書には不必要な個人情報等は記載しないようにしましょう。
(3) 弁明書の作成に当たっては、組織内で十分に検討の上、原則として部長決裁の上で文書管理システムなどの庁内施行により、施行します。
① 審理員あてに提出する場合
⇒ 処分庁(市長、福祉事務所長など)から審理員あてに施行(宛先=審理員、送付先=審理員又は審理員補助者)
② 処分庁等が市長以外の場合(審査庁≠処分庁等)で、処分庁から審査庁(市長)宛てに提出するとき
⇒ 処分庁(福祉事務所長など)から審査庁(市長)あてに施行(宛先=市長、送付先=法務担当係員)
③ 処分庁等が市長の場合(審査庁=処分庁等)で、審査庁(=処分庁等)内部において、所管から審査庁担当に弁明書案を提出するとき
⇒ 各部長(弁明書案は市長名で作成)から、総務部長あてに施行(宛先=総務部長、送付先=法務担当係員)
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弁明書のテンプレート・例文
弁明書のサンプル、記載例は以下のとおりです。
○○○送第○○号
令和○年○月○日
審理員 ○○○○ 殿
○○市長 ○○○○
(※処分庁・不作為庁の名称)
弁明書の提出について
令和○年○月○日付け○○送第○号により提出要求のあった、審査請求人○○から提起された○○処分(令和○年○月○日付け○○第○号)に対する審査請求(令和○年審査請求第○号)に対する弁明書等を、行政不服審査法(令和26年法律第68号)第29条第5項の規定により、下記のとおり提出いたします。
(※審理員が指名されないときは、市長部局内部でのやりとりになるため、各部長→総務部長となります。)
記
1 弁明書 正副2通
2 添付書類 ○○○ 1通(別添1)
△△△ 1通(別添2)
(担当者名、連絡先)
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令和○年度審査請求第○号
審査請求人 ○○○○
処分庁 ○○市長
弁 明 書
審理員 ○○○○ 殿(※審理員が指名されないときは不要)
処分庁 ○○市長 ○○○○
1 事件の表示
審査請求人○○○(以下「請求人」という。)が、令和○年○月○日付けで提起した、○法○条に基づく○○○決定処分(令和○年○月○日付け○○送第○号。以下「本件処分」という。)の取消しを求める審査請求
2 審査請求の趣旨に対する意見(※1)
「本件審査請求を棄却する」との裁決を求める。
3 審査請求の理由についての認否(※2)
(1) 請求人が、令和○年○月○日付けで○○申請書を提出したこと及びその内容が審査請求書別紙記載のとおりであることは認める。
(2) 請求人が、令和○年○月○日に○○窓口に来庁したこと、○○旨述べたことは認め、その際処分庁職員○○が○○旨述べたことは否認する。同職員は、△△旨説明したものであり、○○とは述べていない。
(3) 処分庁が、令和○年○月○日付けで、○○申請に対して○○決定処分を行ったことは認め、その内容が違法であるとの点は争う。その余は不知。
4 本件処分に係る事実経緯等
(1) 本件処分に関する法令等の定め(※3)
ア ○○市○○手当条例(令和○年○○市条例第○号。以下「本件条例」という。)
(ア) 第1条・・・・・・・・・
(イ) 第4条・・・・・・・・・
第1項
第1号・・・・・・・・・
第2号・・・・・・・・・
第2項・・・
第1号・・・・・・・・・
第2号・第3号 (略)
(ウ) 第6条・・・・・・・・・・
イ ○○市○○手当条例施行規則(令和○年○○市規則第○号。以下「本件規則」という。)
(ア) 第3条・・・・・・・・・
(イ) 第4条・・・・・・・・・
(ウ) 第7条・・・・・・・・・
(エ) 第8条・・・・・・・・・
(2) 事実の経緯(※4)
ア 令和○年○月○日、請求人は、○○窓口において、本件条例第6条及び本件規則第7条に基づき、○○手当認定申請書(本件規則第1号様式)及び添付資料(別添資料1)を提出し(以下「本件申請」という。)、○○市○○部○○課○○係(以下「○○係」という。)はこれを受理した。
イ 令和○年○月○日、市長は、請求人の前年の所得が△△円であり(別添資料2)、条例第4条第2項第1号に該当することから(本件規則第3条)、○○手当の支給要件に該当しないものとして、○○課長の専決により、本件申請を却下する決定を行い(別添資料3)、同日付け、本件規則第8条第2項に基づき、請求人に○○手当認定申請却下通知書(本件規則第3号様式。別添資料4)を送付した(本件処分)。
5 処分庁の意見(※5)
(1) ○○手当は、○○の福祉の増進を図ることを目的とするものである(本件条例第1条)。
本件条例第4条第1項は、○○手当の支給要件として、・・・・(第1号)及び・・・・(第2号)を定めており、同条第2項は、○○の前年の所得が○○市規則で定める額以上であるときには、同条第1項の規定に関わらず○○手当を支給しないとしている。
また、本件規則第3条は、本件条例第4条第2項にいう「○○市規則で定める額」について、▲▲円と定めている。
(2) 請求人については、前年の所得が△△円であり(別添資料2)、▲▲円を超えるものであるから、本件条例第4条第2項第1号に該当し、○○手当の支給対象外となることが明らかである。
(3) 請求人は、○月○日の来庁時に○○係職員が○○旨述べたことを前提に、本件処分が、○○手当の支給要件とは関係のない××の事情によりなされたものであるとして、本件処分に裁量権の逸脱・濫用があると主張するようであるが、そもそも、○○係職員が○○旨述べた事実はないし、本件処分は、本件条例及び本件規則の定めに基づきなされたものであって××を理由になされたものではない(別添資料3)
(4) 以上述べたとおり、本件処分は、手続においても内容においても何ら違法・不当な点はない。したがって、本件請求は理由がないから速やかに棄却されるべきである。
証拠方法(※6)
1 資料1 ○○手当認定申請書及び添付書類
2 資料2 ○○調査書
3 資料3 ○○原義(令和○年○月○日付け○○第○号)
4 資料4 ○○手当認定申請却下通知書
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審査請求の趣旨に対する意見(※1)
審査請求人による審査請求の趣旨(例)「○○処分の取消しを求める」、「○○処分の変更を求める」など)に対して、どのような裁決を求めるのか、処分庁としての簡潔な結論です。
審査請求の理由についての認否(※2)
① 審査請求人が主張する「事実」(「いつ、誰が、どうした」という部分)については、そのような事実の有無についての処分担当課の認識を「認める(是認)」「認めない(否認)」のいずれかで明らかにします。
否認する場合には、どのように違うのか、実際はどうなのかという点について説明します。
処分担当課で知り得ない点については、「不知(知らない)」とします。
【例】
「審査請求人は、○月○日、○○課窓口を訪れ、○○課職員に○○旨申し述べた。」
→ 認める。
→ 否認する。審査請求人は○○課窓口を訪れたことはない。
→ 審査請求人が○月○日に○○課窓口を訪れたことは認め、○○課職員に○○旨申し述べたとの点は否認する。審査請求人は○○課職員に▲▲と述べたものであり、○○とは述べていない。
② 審査請求人による法的主張(法令の解釈、法令の要件への当否など、評価に係る部分)については、「認める」「争う」のいずれかを述べます。争う場合(異なる法的主張をする場合)は、後述する「処分庁の意見」において処分庁の主張を記載します。
本件処分に関する法令等の定め(※3)
審査請求の対象となっている処分について、その根拠となる法令の該当部分を示します。
事実の経緯(※4)
本件処分の原因となった事実の発生(法令に基づく申請行為、違反行為の発覚など)から、調査、その他法令に定める手続等を経て本件処分を行うに至るまでの客観的な事実経緯を、時系列で具体的に記載します。
この際、法令等に定めのある手続については、当該法令等の規定に沿って、根拠規定の適用関係がわかるように記載してください。
【例】
・令和○年○月○日、請求人が○○課窓口に来庁の上、○○条例第○条に基づく○○申請書(○○規則第○号様式)を提出し、同日、○○課はこれを受理した。
・令和○年○月○日、市長は、○○法○条に基づき、○○に対して○○に係る照会を行った。
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処分庁の意見(※5)
上記で述べた裁決を求める理由を、具体的に記載します。
① 却下を求める場合
審査請求が不適法である理由、つまり形式的な要件を欠いている理由を具体的に記載します。
【例】
本件処分は令和○年○月○日に審査請求人に到達しているところ、本件審査請求は同年○月○日付けでなされたものであるから、行政不服審査法18条1項所定の審査請求期間を徒過しており不適法である。
② 棄却を求める場合
処分の適法性・正当性を具体的に記載します。
ア 問題となる処分について、まず、①一般的にどのような場合に処分要件に当たるのかという基準(法令等の規定、当該規定の解釈を示した通達等、当該規定の適用に関する裁判例等)を示した上で、②本件において、どのような事実関係によってその基準に該当する(該当しない)と判断したのかを、具体的に記載します。
処分の要件に直接関係のない間接事実は、記載する必要ありません。
イ 審査請求書は、法律の専門家ではない一般の方が作成していることが多く、審査請求書において法律上の争点が必ずしも整理されているわけではありません。
審査請求書に書かれた違法事由に対応する反論だけではなく、処分が適法かつ正当であることを、法令等に沿ってひととおり説明してください。
証拠方法(※6)
処分の理由となる事実を証する書類、つまり上記に述べてきた事実関係や主張等を裏付ける書類等を併せて提出します(法32条2項)。
証拠書類には、特定ができるように資料番号を付し、弁明書等の中で引用する場合にはその番号を記します。
処分担当課は、次のような資料がある場合は、証拠書類として提出するようにしてください。
① 行政手続法又は行政手続条例に基づく聴聞手続又は弁明の機会の付与を行ったときは、その資料
② 処分に係る起案・決定書及び添付文書
③ 処分に当たり調査等を行った場合はその資料
④ 処分の基準を定めた通達、要綱等(法律、政令、省令、条例及び規則については公開されている情報ですので証拠として提出する必要ありません。)。
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