「です・ます」体と「である」体の使い分け、混在のさせ方|公文書の書き方
文体には、文末が「です・ます・でございます」体の敬体、「だ・である」体の常体があります。
また、もう一つの文体の区分として「口語体」と「文語体」がありますが、このうち「文語体」は原則公用文では用いないことになっています。
以下では公文書においての常体と敬体の使い方を具体例とともにご紹介していきます。
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公文書での常体と敬体の使い分け方
常体とは、敬語を用いず文末に「だ、である」などを用いる普通の文章様式をいいます。
一方敬体は、文末に「です、ます、ございます」などを用いて統一した文章様式をいいます。
公用文の文体の使い分け等については、次のようなルールに注意する必要があります。
・常体「である」体と敬体「ます」体を使い分ける
・敬体「です」体や「ございます」体の取扱い
・文章中の常体と敬体の混用は厳禁
・敬体の文章の中でも、箇条書は常体で書く
・敬体の文章の中でも、原則敬語は用いない
公用文の文体について、国が定める表記の基準の中で触れているのは、「公用文作成の要領」(昭和27年4月4日内閣閣甲第16号)です。
ここに公用文に「である」体と「ます」体の文体を用いるという原則がはっきりと打ち出されています。
そのため、現代においては、国も地方公共団体も、大方次のような使い分けをしています。
常体「である」体・・・法令、告示、令達、契約、証明、辞令、訓令などの文書
敬体「です・ます」体・・・往復文書(通知、依頼、照会、回答、送付、報告、申請、進達、副申、願書、届書、建議、勧告、協議等)、儀礼文書(式辞、祝辞、表彰状、感謝状等)など特定の相手を対象とした文書
公用文では従来「である」体が主流でしたが、国民へのサービス行政の観点から丁寧な言い回しが求められ、現在では多くの文書で「です・ます」体が使われるようになりました。
敬体「です」体と「でございます体」の取扱い
常体と敬体を細かく分けて、丁寧さの低いものから並べると以下の表になります。
文体 | 「○○」体(丁寧さの低い順) |
---|---|
常体 |
①「だ」体 |
②「である」体 | |
敬体 |
③「です」体、「ます」体 |
④「でございます」体 |
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このように分けると、「です」体と「ます」体は丁寧さにおいては同格といえます。
ただ、「です」体は「断定」の助動詞で、「ます」体は単に「丁寧」の助動詞で断定の意味はありません。
そうすると、「ます」体での断定表現は「~であります」を用いることになります。
しかし、この「~であります」は「~である」の丁寧体といえますが、現代の感覚には余りそぐわない表現です。
コンビニエンスストアで住民票の交付を受けるためには、マイナンバーカードが必要であります。
「ます」体しか使えないとすると、このように軍隊調の表記になってしまいます。
そのため、現代の公用文では、国も地方公共団体も「必要です。」と「です」体を用いて断定するのが原則なっています。
公用文の専門書のなかには、上記「公用文作成の要領」を根拠にして「です」体を用いることに懸念を示しているものもありますが、現代の公用文では、「です・ます」体を用いて簡潔に書いたほうが現在の感覚にふさわしいといえます。
「である」体とは
「である」体は文末に「である、であろう、であった」を用いるものです。
「である」は断定の助動詞なので、「である」体でも断定しないときは「である」を使用しません。
例
・措置をお願いする。
・届出を提出した。
・添付が必要である。
「です・ます」体とは
「です」体と「ます」体の意味と活用の違いは次のとおりです。
公文書では、この活用形を全て用いるわけでないところに注意します。
語 | 意味 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
です | 断定 | でしょ | でし | です | (です) | - | - |
ます | 丁寧 |
ませ |
まし | ます | (ます) | (ますれ) |
(ませ) |
公文書での「です」「ます」体は、文末に「ます、ましょう、ました」を用いるものです。
「ます」は丁寧の助動詞なので、「です・ます」体では「です」を用いない場合は必ず「ます」を用います。
例
・措置をお願いします。
・届出を提出しました。
・添付が必要です(であります)。
「です・ます」体では文末表現として「です、でしょう、でした」も使用できます。
「である」体と「です・ます」体は混在させないのが原則
常体と敬体は、全く異質な文体なので、公用文でも原則として「である」体と「です・ます」体は混在させません。
このことは「文体は文末で統一する」のが原則であるということを意味します。
ただし、通知文などの一般的な公用文では、次の例文のように「混在」させても問題はなく、むしろ簡潔な文章になるといえます。
例1
通知があったので(ありましたので)、別添のとおりお知らせします。
文の途中の動詞には「ます」を省略した例です。
ただし、文章によって「ます」を付けないと語感がおかしくなる場合には、「ます」を付加しても許容されます。
また、通知文等では、文中の動詞以外でも、「~につきましては」は使用せず、「~については」を使用する。
例2
詳細については(×つきましては)、年内に再度通知します。
例3
A地区の施設は施行済みだが、B地区の施設は計画中である。
※「だ」体と「である」体の混在だが、通知文等であれば問題ない。
例4
地方公共団体が目標としているのは、公共の福祉を維持向上させることです。
※「しているのは」を「していますのは」とする必要はありません。
例5
資料を送付するので、あらかじめ御検討願います。
※「するので」を「しますので」とする必要はありません。
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箇条書は常体で混在させる
文章中に箇条書や記書きを入れる場合は、「です・ます」体と「である」体が混在していても許容されます。
箇条書は敬体の文章の中でも、常体で書くという原則があるからです。
つまり「箇条書は常に常体で書く」ことになります。
箇条書の例
1 箇条書には、次のような利点があります。
(1) 接続詞を必要とせず、楽に文を書くことができる。
(2) 分かりやすくなり、要点をつかみやすくなる。
2 表には、次のような利点があります。
(1) 文章が極めて簡単でよい。
(2) 視覚的に分かりやすい。
「だ」体は使用しない
「だ」「だろう」「だった」は「だ」体で、「である」体とは別物であり、公用文では使用しません。
したがって、推定の場合でも「~だろう」とせずに「~であろう」とするのが原則です。
「である」体では、「である」「であろう」「であった」を使用します。
例
SDGsは、ますます重要になるであろう(×だろう)。
一方の「です・ます」体での断定の文末表現は「です」「でしょう」「でした」「であります」を用います。
原則、敬語は用いない
公文書では、祝辞などの儀礼文書を除いて、「丁寧語」以外の敬語は用いないのが原則です。
「敬語」には、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があります。
「です」「ます」、接頭語の「御」「お」」は丁寧語で、一般的公用文に用いられます。
公用文は丁寧で分かりやすい必要がありますが、必要以上の敬語表現はしません。
以下のような文言は乱用されがちのため、特に注意します。
尊敬語「おっしゃる」「いらっしゃる」
謙譲語「いたします」「まいります」「しております」
例1
会議を○月○日に開催いたしますので御参加願ます。
※謙譲語「いたします」は、単に「します」にします。
例2
研修に参加してまいりました結果を御報告いたします。
※「してまいりました」は「しました」又は「した」、「いたします」は「します」にします。
例3
市民会館は地震の被災者が避難所として使用しております。
※「しております」は「しています」にします。他人の行為に謙譲語「おります」は使えません。
文語的表現は使用しない
文体のもう一つの区分として、口語体と文語体があります。
口語体は話し言葉として使用してきた文体で、文語体は書き言葉として使用してきた文体です。
現代の公用文では、言文一致の原則により、文語的表現は使用せず、口語的表現を用います。
・その提案は、受け入れない(×ぬ)ことにしている。
・主な(×主なる)問題点を整理しなければ(×せねば)ならない。
・債権者である(×たる)者
・必要な(×必要なる)処理を適切に行うことが必要である。
・推進する方向で(×推進すべく)検討している。
・そのような考え方もできるであろう。(×できよう)
・もし賛成ならば(×なら)、挙手してほしい。
「ごとき」「ごとく」も散見される表現ですが、使用しません。
それぞれ「ように」「ような」と口語体にして言い換えます。
「主なる、必要なる、平等なる、更なる」も間違って使ってしまいがちなので注意します。
それぞれ「主な、必要な、平等な、一層の」と口語的表現で言い換えます。
他にも「たる」は文語のため使わず、「である」に言い換えます。
「~すべく」も積極性を持たせる意味で「推進すべく、着手する」のように使ってしまいがちですが、公用文では使用しません。
他にも「べき。」で終わる文も、公用文では使用せず、「べきである。」「べきでない。」まで書くのが正しいです。
同様に「べし。」も公用文では用いません。(※「べき」の用法は後述)
「にて」も、よく見掛ける表現ですが、文語のため「で」に言い換えます。
× 会議室にて行われます。
○ 会議室で行われます。
また、「~しつつも」「~とみなし」といった硬い表現は、それぞれ口語を用いて「~としながらも」「~とみて」と表現します。
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文語体「べき」の意味と用法
「公用文の作成要領では、例外として、文語体の「べき」と「あり・なし・同じ」は条件付で用いてよいとしています。
文語体の「べき」は、助動詞「べし」の連体形であって「当然~である」などの意味を表します。
「~ねばならない」「~のはず」という意味で「来るべき人が来ない」など、一般でも頻繁に使われています。
「べき」は複雑な意味をわずか2文字で表現できるため、一般公用文にも多用されている表現です。
しかし用法には以下のような注意が必要です。
①「べく、べし」などの活用形では用いない。必ず連体形「べき」でのみ用いる。
②「~する」に続くときは、「するべき」とせず、「すべき」とする。
正しい用法例
議論すべき問題(×するべき)
実施すべきである(×するべき)
早く行くべきである
一般の新聞やニュースでは「するべき」と表記することにしているので、公用文との違いに注意が必要です。
文語体「あり・なし・同じ」の用法
文語体「あり・なし・同じ」は、簡単な注記や表などの中で、次の例のように記号的に用いても良いとされています。
例
被扶養者 あり。
配偶者 なし。
住所 本籍に同じ。
冗長な言回しに注意する
「である」体などで洗練された文章を書こうとして言い回しの工夫を重ねているうちに、無駄に長い文章になってしまうことがあるので注意します。
「つきまして」「ところである」といった言葉を「を」「の」「は」等の助詞で端的に言い換えられる場合や、「こと」「もの」を省いても意味が通る場合は、無駄に使っている可能性があるので削ぎ落すようにします。
余計な言葉をなくすだけで、文章は格段に読みやすくなります。
△ 本日、令和3年度一般会計の予備費の使用につきまして閣議決定を行ったところでありますが、緊急対応策により新たに追加される感染症予防対策に伴う地方負担に対しましては、今回、新たに追加の財政措置を講ずることを予定しておりますので、その旨、本通知によりお知らせいたします。
○ 本日、令和3年度一般会計の予備費の使用を閣議決定しましたが、緊急対応策として追加される感染症予防対策の地方負担は、新たに財政措置を講ずる予定であることを、お知らせいたします。
間違いやすい文語体の表現
「より」と「から」を使い分ける
「から」は時を表す語に付いて行動の始点を表し、場所を表す語に付いて出発点を表します。
一方「より」は、物の比較をする場合に用いる語で、後にはものを形容する語が続きます。
「より」も文語体では動作の時間的・空間的な起点を表す語として用いられてきたので、今でも世間一般では「5時より会議を始めます」など、「から」との混用されています。
しかし、公用文においては混用は認められていません。
「より」は比較を表す場合のみに用い、時・場所の起点を表す場合には「から」を用います。
使い分けを簡単に言うと、「より」と「から」のいずれも用いることができる場合は、「から」を用います。
「~すべく」は使わない
文語体の「べき」は、例外として公用文に用いることができると前述しました。
「べき」は、助動詞「べし」の連体形で、この連体形だけが使用できるのであって、終止形の「べし」、連用形の「べく」は用いることができません。
そのため「年度内に実施すべく計画中である」というような表現は使えません。
「年度内に実施するように計画中である」「年度内に実施する予定で計画中である」などと口語体に書き換える必要があります。
「~したく」は使わない
「市民の意見を把握したく、別紙の調査を行います」というような表現の、「~したく」も用いることができません。
「~したく」は、文語体の「たし」の連用形です。「たし」はどんな活用形でも公用文には使えません。
「市民の意見を把握したいので、別紙の調査を行います」などと言い換えます。
「~にて」は「で」「において」に言い換える
「にて」は、手段にも場所の特定にも用いることができる便利な語句ですが、文語体のため公用文には使えません。
手段であれば「通知で知らせます」、場所の特定であれば「市民会館で行います」又は「市民会館において行います」と表記します。
「から」と書いたら「まで」と書く
文語体では、期間や数量の範囲を示すのに、「10万円乃至(ないし)20万円の金額で購入する」「1月ないし3月の期間」という表現をしていた名残で、口語体でも「10万円から20万円の金額で購入する」「1月から3月の期間」といった「まで」抜きの表現が良く見受けられます。
公用文では、「乃」が常用漢字表にないため、「乃至」という漢字自体が使えません。
「ないし」と平仮名であっても、文語体であり、「又は、若しくは」の意味と紛らわしいので、使わない方がいいでしょう。
そのため、口語体でものの範囲を示す場合は「から~まで」を用います。
そして「から」を使った後は必ず「まで」で締めます。
「たり」と書いたらもう一度「たり」と書く
「たり」は、対句を示す助詞なので、片方だけに用いるのは誤りです。
例
施設内では、立ち入り禁止区域に立ち入ったり、設備を無断で使用したりしないでください。
このように「たり」を繰り返し付けるのがルールです。
「たり」を付けることで、くどく冗長になってしまう場合は、途中で文章を区切って接続詞でつなぐ方法もあります。
日常会話では、曖昧に含みを持たせるために1回だけ「たり」を使うことが多いですが、公用文では使えません。
「ので」と「から」の使い分け
「ので」「から」はどちらも原因、理由、根拠を表す助詞です。
その使い分け方ですが、「ので」は因果関係で結ばれる二つの事柄が一般的で客観的な事実であるような場合に、その原因、理由、根拠を表すのに用います。
一方「から」は、「原因、理由、根拠」がどちらかというと話し手の主観的な場合に用います。
例
応募者が定数を超えたので、締め切った。(事実)
寒いから、服を着た。(主観)
公用文では、主観より事実の方が表現として馴染むため、基本的に常に「ので」を使います。
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「ついては」と「あっては」を使い分ける
「ついては」「あっては」は、係助詞「は」を強調した表現で、話の題目となるものを示したり、他と区別したりする語句です。
公用文でよく使われる表現ですが、その違いは「ついては」は単独で使われることが多く、「あっては」は二つ以上の事柄を対句的に列挙する場合に疲れることが多いということです。
とはいえ、「あっては」は、同じ題目でも更に他とは異なることを強調するために単独で使われることもあります。
「あっては」の例文
・都道府県にあっては副知事を、市町村にあっては副市長村長を置くことができる。(二つの事柄)
・各部局の課長補佐(課長補佐を置かない部局にあっては、それに相当する職にある者)は、公文書取扱いの研修を受講しなければならない。(一つを強調する例)
「場合」と「とき」を使い分ける
「場合」「とき」はどちらも前提条件を表す語句です。
その使い分け方として公式のルールはありませんが、同一の文書の中ではどちらかを統一して使うようにします。
ただし、一つの文章の中で、大きな前提条件を掲げてさらに絞って小さな前提条件を重ねる場合は、大きな前提条件に「場合」を使い、小さな前提条件に「とき」を使うというルールはあります。
例文
上記の条件に該当する場合において、75歳に達したときは~
ちなみに「とき」を、漢字で「時」と書くか、平仮名で「とき」と書くかは、意味の違いで使い分けます。
「時」は、時間の流れの中にある、その時代、その時期、その時間など本来の意味の「実質名詞」として用いる場合に漢字で書きます。
一方、「とき」は、「場合」と同じ意味で条件を表す「形式名詞」として用いる場合に平仮名で書きます。
「形式名詞」には、「とき」以外にも「こと、とおり、もの」など多く存在し、公用文で多用されます。
「形式名詞」は本来の意味を失い、形式的に用いられ、修飾語がなければ独立した意味を持ち得ない名詞です。
公用文においては、両者を明確にするため、原則として「形式名詞=平仮名」「実質名詞=漢字」で表記するのがルールになっています。
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