主語、述語、目的語を分かりやすく書く|公文書の書き方

主語、述語、目的語を分かりやすく書く|公文書の書き方

主語、述語、目的語を分かりやすく書く|公文書の書き方

主語と述語の関係が破綻している常体を、「文章のねじれ」といいます。
ねじれ文と出会ってしまうと、読み手は想像力をフル稼働させて理解しなければなりません。

 

公文書は、義務教育課程で使われる標準語の文法で作ります。
特に主語と述語の表現は、間違いやすいので注意が必要です。

 

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主語と述語が対応していない例

日本語では、主語が文頭にあるのは諸外国語と同じですが、述語が主語と離れて文末にあるのが原則です。
また、本当の主語は省略され、隠れていることが多いのも日本語の特色です。

 

主語と述語が離れていると、長い文での対応に間違うことが多くあります。
また、日本語では主語を省略することができるので、逆に主語があるときに、それに対応する述語を忘れてしまうような間違いもよくあります。
次はその典型的な例です。
このような文章を書かないよう、必ず文章をかいたら読み直しをすることが重要です。

 

条件句が入るとき

市長は、この条例に違反したときは、その利用の許可を取り消すことができる。

 

上記の例文は一見正しそうですが、主語は「市長は」です。
そしてこの主語は、「この条例に違反したときは」という条件句を飛び越えて、「その利用の許可を取り消すことができる。」を述語にしています。
ここで、条件句「この条例に違反したときは」の主語を考えると「市長は」では理屈が通りません。
そのため、必要な条件句の主語が抜けていることが分かります。
改善例

市長は、○○施設を利用する者がこの条例に違反したときは、その利用の許可を取り消すことができる。

 

このように、主な主語は書いてあっても、条件句などの挿入句の主語を落としがちなので注意します。

 

1文で複数の行為を述べるとき

× 活動内容は、子供たちを集めてソフトボールの試合をしたり、日曜日には近くの山に出かけて自然探検などをしています。

 

上のような例は公用文の中でよく見かける失敗例の一つです。
「活動内容は」という主語に対して、対応する述語がありません。
しかし日本語の主語は英語などと比べて不安定なので、主述の一致した文章を書くことはかなり難しいことです。
上の文書を文法的に正しい文書に直そうとすると、次のようになります。

 

○ 活動内容は、日曜日等に子供たちを集め、ソフトボールの試合や近くの山に出かけて自然探検などをすることです。

 

また、無生物主語は、擬人的に用いる場合を除き、日本語に余りなじみがありません。
もちろん現代日本語を書くのに無生物主語は必要ですが、上記の例でいえば「活動内容」を主語にすると、正確に書いても伝わりやすい文章は出来ません。
そういう場合は、例えば「私たちは」や「この会では」というように、生物や法人を主語として、「では」「においては」などの語句を用いて間接的な表現をすると、伝わりやすい日本語になります。

 

○ 私たちは、日曜日等に子供たちを集め、ソフトボールの試合や近くの山に出かけての自然探検を行うなどの活動をしています。

 

正しく主語と述語を使うポイント

主語を述語を取り出して対応させる

例えば、次のような通知文があったとします。

 

× 今回は、○○視察団を迎え、下記のとおり貴県を訪問し、地方行政の概要説明及び関連施設等の視察考えています。

 

「迎え」と「考えています」は、この通知文の通知元が主語です。
「訪問し」と「視察」は、通知元も同行したとしても、基本的には「○○視察団」が主語になります。
さらに「概要説明」は担当者がするのか、「○○視察団」がするのか曖昧です。
このように主語がバラバラな語句を単純につないでしまうと、意味不明な文章になってしまいます。

 

主述の不一致は、長い文章の中で主語があちこちに揺れることで起こりやすい現象です。
文章を書くときは、常に主語を固定して意識するようにしてください。
主述の不一致を直すためには、文章を書いたら、主語・述語以外の部分を取り除いて読んでみて、主述のつながりが正しいかどうか確認することも大切です。
また、間違いを防ぐために一文をなるべく短くするのが良いでしょう。

 

主語をなるべく前に出す

主語が何なのかあいまいになると文章が分かりづらくなります。
主語はなるべく文の始めに置くようにします。

 

戦後政治の混乱の中で何度となく改正され、一時は廃止されそうにもなった○○制度は、現在では、国民生活にとって欠くことのできないものになっています。

→○○制度は、戦後政治の混乱の中で何度となく改正され、一時は廃止されそうにもなりました。しかし、現在では、国民生活にとって欠くことのできない制度になっています。

 

述語を明確にし、主語や助詞は省略しない

 

× 管理人の許可なく立入りを認めません。
○ 管理人の許可なく立ち入ることを認めません。

 

× 大阪まで旅費を支給します
○ 大阪までの旅費を支給します。

 

中止法を避ける

中止法とは、「~をし、」「~であり、」のように、述語の動詞等を連用形で中止し、文章を続ける記述の仕方です。
多くの人が行っている記述法ですが、この中止法を多用すると意味が分かりにくくなるため注意が必要です。
同様に、接続助詞の「が」を多用すると、文章が長くなってしまうので注意します。

 

× 該当事項を丸で囲み、いずれにも該当しない場合は「その他」を丸で囲み、右の欄に理由を記入すること。

 

例の場合、その他を丸で囲んだ場合のみ右の欄に理由を記入するのであって、その他以外のときには理由は記入する必要がないのか、それともどれを丸で囲んだとしても理由を記入する必要があるのかはっきりしません。
公用文であっても、間違っていなければいいというものではなく、読み手の頭にすっきり入るような文章を作る必要があります。
そのためには、文は短く書くことが大切です。二つの文章に分かれば分かりやすくなります。

 

○ 該当事項を丸で囲むこと。いずれにも該当しない場合は「その他」を丸で囲み、右の欄に理由を記入すること。

 

その他の例

・75歳以上の後期高齢者は、利用許可の申請により市長の許可を受ければ、4月1日から○○介護施設を利用することができます。
→75歳以上の後期高齢者は、4月1日から○○介護施設を利用することができます。この場合、利用許可の申請により市長の許可を受ける必要があります。

 

・次の欄に要求事項を記入し、要求事項がない場合は「ない」と記入し、その理由を記入してください。
→次の欄に要求事項を記入してください。要求事項がない場合は「ない」と記入し、その理由を記入してください。

 

・この政策の目的は、高齢者福祉を維持向上させることであり、令和6年度から実施されます。
→①この政策は、高齢者福祉を維持向上させることを目的として、令和6年度から実施されます。(1文で書く場合)
→②この政策の目的は、高齢者福祉を維持向上させることです。この政策は、令和6年度から実施されます。(2文に分ける場合)

 

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主語を統一する

1つの文で2つのことを表現する場合、前半と後半で主語が変わってしまう間違いがよくあります。
特に後半の主語が省略されている場合は注意してください。

 

× 係長は、主任に自らの業務の効率化をさせ、税金を大切に使う職員にならなければならない。
○ 係長は、主任に自らの業務の効率化をさせ、税金を大切に使う職員として育てなければならない。

 

上記の間違った例では、前半の主語が「効率化をさせる」係長で、後半の主語が「職員になる」主任になってしまっています。
2つ目の例では「育てる」を述語にすることで、どちらも係長が主語になり、意味が通りやすくなります。
文章が長い場合は二つの主語を用いる場合もありますが、短い文では1つの統一した主語で、2つのことを表現した方がすっきりした文章になります。

 

 

一文は40~50文字までにする

主語と述語の間に盛り込む内容が多すぎると一文が長くなってしまいます。
省略できる内容は削り、省略できない内容は別の一文を書き添えるようにするだけでも分かりやすい文章になります。
下記の文を読むと分かるように、60文字以上の文章は読むとストレスを感じます。
一文の理想は40文字程度、長くても50文字程度に抑えるようにしましょう。

 

△ 駅前地区は、狭い道路や行き止まりの私道が多く木造家屋が密集しており、オープンスペースも不足しているなど、防災性の向上や住居環境の改善が喫緊の課題である。(76文字)

 

△ 駅前地区は、狭い道路が多く木造家屋が密集しており、オープンスペースも不足しているなど、防災性の向上や住居環境の改善が喫緊の課題である。(67文字)

 

○ 駅前地区は、狭い道路が多く木造家屋が密集しており、防災性の向上が喫緊の課題である。(41文字)

 

「手段」「目的」の順番で書く

文章に説得力を持たせるには、①「手段」、②「目的」の順番で書くようにします。
具体的な表現を例示すると以下のような言い回しになります。

 

× 「~を実現するために、~を行う。」
○ 「~を行うことで、~を実現する。」

 

手段と目的が混在した以下のような文章は、読み手にとって理解が困難です。

× 市民の移動手段の利便性向上を図るため、市内公共交通の現状について調査・把握するとともに、既存の鉄道路線の延伸や新たな路線の構築など既存計画も踏まえた上で、目標年次を定めて、市が目指すべき公共交通網の将来像を検討するため、将来の社会情勢などを見据えたバス交通の充実や交通不便地域の解消に向けた課題を整理する。

 

「手段→目的」の順番を固定して整理すると以下のように分かりやすくなります。

○ 市内公共交通の現状について調査・把握することで【手段①】、既存の鉄道路線の延伸や新たな路線の構築の可能性を探り、市民が移動する際の利便性向上を目指す【目的①】。
さらに、バス交通の充実や交通不便地域の解消に向けた課題について、社会情勢の変化を見据えながら既存計画を踏まえて整理し【手段②】、目標年次を明確に定めて市が目指すべき公共交通網の将来像を作成する【目的②】。

 

無生物主語を避ける

主語には、2種類あります。
権限・義務の主体になり得る人(法人)を主語にする「生物主語」と、権限・義務の主体にはなり得ない抽象的な無生物を主語にする「無生物主語」です。
どちらが適切かは、その文章にもよりますが、多くの場合「生物主語」を選んだ方が、分かりやすい文章になります。

△ 我が市の主要な政策課題は、人口増加、財政の安定、住民福祉の充実である。
○ 我が市は、人口増加、財政の安定、住民福祉の充実を主要な政策課題としている。

なお、後者の例は、「我が市は」の主語をかえて「我が市においては」でも意味は通じますが、この場合、本当の主語が「市長は」又は「我々は」が省略され、主語が隠れた文章になってしまいます。

 

受け身形はなるべく用いない

受け身形の文は、客観性は出ますが、読み手には人ごとのように感じられるので、公用文にはあまり向いていません。
受け身形(受動態)の文では、抽象的なものや無生物主語になりやすいのも問題です。
このような表現は、翻訳調の表現であって日本語の表記にはあまりなじみません。
公用文の分野では、権利の主体又は義務の主体である自然人・法人に関わることが基本なので、それ以外の抽象的なものや無生物を主語にすることはできるだけ避けるべきです。

 

× 市では、このような政策は速やかに実施されなければならないと考えている。
○ 市では、このような政策は速やかに実施しなければならないと考えている。

 

「このような政策は」を主語にする「実施されなければならない」と受動態で書かなければなりませんが、能動態するだけで読み手に受け入れられやすい表現になります。

 

並列は明確にする

× 研修には、課長補佐と係長の半数を出席させてください。

 

この表現では、「課長補佐と係長の半数」が「(課長補佐の半数)+(係長の半数)」を意味しているのか、「(課長補佐)+(係長の半数)」を意味しているのかがはっきりしていません。
以下のように改善することで意味が分かるようになります。

 

○ 研修には、課長補佐と係長のそれぞれ半数を出席させてください。
○ 研修には、課長補佐全員と係長の半数を出席させてください。

 

 

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