公務員の文書は「効率化」と「適正化」がキーワード

公務員の文書は「効率化」と「適正化」がキーワード

効率化ってどういうこと?

地方公共団体には、事務を効率的に行うことが要請されています(地方自治法第2条第14項)。
そして、事務は基本的に文書によって行われていますから(文書主義の原則)、事務を効率的に行うためには、文書事務を効率化しなければなりません。

 

<地方自治法>
(地方公共団体の法人格及び事務)
第2条
14 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

 

では、どのように事務を効率化すべきでしょうか?
文書事務の効率化のためには、次の点に留意する必要があります。

 

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文書管理システムの利用

社会の情報化の進展に伴い、流通する文書も電子文書が主体となりつつあります。
行政機関においても、LGWAN(総合行政ネットワーク)により全国の自治体がつながれ、公文書のやり取りも電子的に行えるようになりました。

 

庁内においても、文書の作成はパソコンで行われることが当たり前になり、文書のやり取りも全庁LAN上のグループウェアで行われるようになりました。
このような状況において、正式な文書が紙媒体のままでは、効率的な事務処理ができません。

 

文書の作成から、意思決定、さらには、送付まで、一貫して電子的に行えるような仕組みが必要となりました。
そこで、導入されたのが文書管理システムです。
文書を電子化することにより、庁内での情報共有が促進され、迅速な意思決定も行えるようになります。
また、保管した文書もすぐに検索することにより、参照することができるようになります。
したがって、文書事務を効率的に処理するためには、文書管理システムを利用することが原則となっています。

 

電子文書を扱いやすいルールを作る

しかし、文書管理システムを導入しただけでは、文書事務は効率化することはできません。
電子的に文書事務を処理するのにふさわしいルールが必要です。

 

業務を改善する

さらに重要なのは、各課において業務処理のフローを電子的に行うことを前提に見直すことです。
従来の紙文書で行っていた事務処理の流れをそのまま文書管理システムで行おうとすることは、かえって非効率を生みます。
見直しのポイントは次のとおりです。

 

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収受・起案の単位の見直し

本来は、収受した文書はその都度収受登録するのが原則です。
しかし、1日に同じ種類の文書を何件も受領する場合、1件ごとに登録するのは非常に手間がかかります。
このような場合において、収受日などや発信者などの情報がある程度まとめて管理でき、起案や供覧をまとめてできる単位であれば、収受登録もまとめて行うことができます。

 

添付文書の見直し

起案文書に、承認・決定者の意思決定の参考になると思われる文書を添付することがあります。
意思決定を行うのに必要な文書は添付することは大切ですが、本当に承認・決定者の判断に必要なものなのか、疑問に思われる場合も多々見られます。

 

「今まで添付して回すのが慣例だったから」
「本当は必要ではないんだけど、もしかしたら、課長が見たいというかもしれないから」
こういった理由で添付していたものはないでしょうか。

 

改めて、起案文書の添付文書として、本当に必要なのか検討しましょう。
疑義があったときだけ確認すれば済むのであれば、起案文書の添付文書にする必要はありません。
添付文書を少なくすることにより、起案者の起案の手間も軽減するとともに、承認・決定者が確認する手間も省けます。

 

決裁ルートの見直し

「電子決裁にすると、かえって決定までに時間がかかる」
といわれることがあります。

 

たしかに、手続としての速さでいえば、紙の起案文書を持ち回り、紙文書を確認して印をもらうほうが早いのは間違いないでしょう。
しかし電子決裁による意思決定を迅速に行う方法があります。
それは、決裁ルートから、意思決定に必要のない人を外すということです。

 

本来は意思決定には必要のない、情報提供だけを行えば足りる人も決裁ルートに加えることにより、起案の手続の中で情報提供をしている例があります。
しかし、これは意思決定ではありません。
この人たちへの情報提供は、意思決定の中ではなく、別途情報提供を行うようにすれば、意思決定を迅速化することができます。

 

決裁ルートから外すからといって、情報提供が必要なくなるということではありません。
情報提供は、意思決定が終わったあとに、文書管理システムの決定後通知や、電子メールなどを使って行うことができます。
複数の関係者に同時に文書を閲覧させることができるのは、電子文書のメリットの一つです。

 

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紙文書の電子化する

電子文書の方が効率的に事務処理を行うことができますが、住民や国、他の地方自治体からの文書は、いまだに紙文書のものが多いのが現状です。
おそらく、しばらくはこの現状は変わらないでしょう。

 

電子文書と紙文書が並存している状況では、文書の流れ、すなわち事務処理の流れも、電子と紙の二つができてしまい、効率的に事務が行うことが困難です。
このような現状で、できるだけ効率的な事務執行を行うためには、紙を紙のまま扱うのではなく、スキャナや複合機を利用して、電子化して扱うことが必要です。

 

事務処理自体の見直し

最も重要なのは、以上を踏まえて、事務処理全体をどのような流れで行えば、もっと効率的な事務執行ができるのか常にアンテナをはることです。
紙文書を前提に考えられていた業務フローを、そのまま行うのではなく、文書管理システムを使って、電子文書で扱う場合には、どのようなフローが効率的なのかを検討する必要があります。

 

適正化とは

適正化はなぜ必要か

文書事務は、効率的かつ適正に行わなければなりません。
文書事務は、単なる内部事務ではなく、対住民への説明責任を果たすためのものでもあります。
内部的に効率的であるというだけでは、この目的を果たせません。
言い換えれば、適正な文書事務を効率的に行わなければならないのです。
適正な文書事務を行うためには、この文書事務の目的を常に意識しなければなりません。

 

記録管理と法令遵守

<民事訴訟法>
(文書の成立)
第228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。

 

文書事務は、私たちが業務を処理するうえで、必ず必要となるものです。
しかし、一連の処理が終わったからといって、文書の役割が終わったわけではありません。

 

文書は、私たちの業務処理の記録です。
私たちがどのように事務を処理したのかどうか、それを後で確認するための証拠でもあるのです。
監査委員が行う監査や民事訴訟、刑事訴訟等において、文書の提出が求められるのは、そのためでもあります。
このとき、提出された文書、すなわち私たちの業務の記録が、本当に正しいものであることを証明することができなければなりません。

 

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民事訴訟法においては、証拠としての文書の真正性について、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるものであれば、真正に成立した公文書と推定するとしています。
したがって、訴訟においてちゃんとした証拠として認められるためには、この要件を満たす必要があります。

 

そして、この要件を満たすため、つまり職務上作成したものと認められるためには、文書管理規則及びこの手引で定めるルール及び方式に則って作成しなければならないのです。
現在は、自治体のみならず、民間においても、コンプライアンス(法令遵守)の観点から、この記録管理、文書管理が非常に重要になってきています。

 

起案文書はすべて業務の記録であり、住民からの申請書等の収受文書も記録です。
事務処理の証拠として適正に管理する必要があります。

 

適正化のためにすべきこと

文書事務を適正に行うためには、文書管理規則等に定められたルールに従うことが必要です。
特に、起案や意思決定の日付の操作や文書の内容の変更、添付文書の差替えなどは、たとえ、それが理由のある場合であっても、住民等に疑念を抱かせることになります。
また、故意に文書を改ざんしたり、保存期限が到来しないのに廃棄することは、場合によっては、公文書偽造や公用文書毀棄の刑事責任を問われる可能性もあります。

 

文書事務のルールは、自治体の行う事務が適正に行われていることを対外的に証明できるように、定められています。
ルールを守らないで処理された文書があると、その文書の真正が疑われるだけでなく、自治体の文書事務全体の信頼性自体も損なわれることとなります。

 

文書事務は、前述したように効率的に行うことも目的としていますが、その究極の目的は自治体の文書の信頼性を高めることが目的です。
そのために、収受登録、起案、意思決定など処理ごとに必要な手順を定めています。
一つ一つの手順には、そのような意味があるのだと、意識して、処理を行う必要があります。

 

適正な文書管理とは

JIS規格(JIS X 0902-1:2005)によれば自治体が行う文書管理が適正であるといえるためには、「文書が真正であること(真正性)」、「文書が信頼できるものであること(信頼性)」、「文書が完全なものであること(完全性)」及び「文書が利用できるものであること(利用性)」の四つの要件を満たしていなければなりません。

 

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7.2.2 真正性 真正な記録とは,次のことを立証できるものとする。
a) 記録が主張しているとおりのものであること。
b) それを作成又は送付したと主張する者が,作成又は送付していること。
c) 主張された時間に作成し,送付していること。
記録が真正であることを確実にするために,組織は,記録作成者に権限を与え,それがだれかを明確にすることが望ましい。許可のない記録の追加,削除,変更,利用及び隠ぺい(蔽)から確実に記録が守られるように,記録の作成,取得,送信,維持及び処分を管理する方針並びに手順を実施し,文書化することが望ましい。

 

7.2.3 信頼性 信頼のおける記録とは,その内容が,処理,活動又は事実が完全であると信じることができ,そして継続して起こるその後の処理及び活動の過程を証明し,かつ,よりどころとすることができるものをいう。記録は,関連する処理又は事象の発生時に,又はその直後に,事実について直接知っている個人によって,又は処理を行う業務で日常的に使われる機器によって作成されることが望ましい。

 

7.2.4 完全性 記録の完全性は,その内容が完結していて変更されていないことを意味する。
記録は,許可のない変更から守られなければならない。記録管理の方針及び手順は,記録作成後どんな追加又は注釈が許されるのか,どのような状況で追加又は注釈が許される場合があるか,だれに追加又は注釈を入れる権限があるのかを定めることが望ましい。どのような追加,注釈又は削除でも,それが明示され追跡可能になっていることが望ましい。

 

7.2.5 利用性 利用できる記録は,所在場所がわかり,検索でき,表示でき,解釈できるものをいう。記録は,それを作り出した業務活動又は業務処理に直接関係するものとして,その後,提示できるものであることが望ましい。記録のコンテキストのつながりには,記録を作成し利用した業務処理の理解に必要な情報を含むことが望ましい。より広い業務の活動又は機能のコンテキストの中で,記録を見つけることが可能であることが望ましい。一連の活動を文書化した記録間のつながりを,維持することが望ましい。

 

文書管理規則等は、これらの要件を実現するためのルールであり、また、文書管理システムは、実現するためのシステムです。
自治体の文書管理が適正なものであるというためには、定められたルールに従い、文書管理システムを利用して、文書事務を行わなければなりません。
「面倒くさい」、「手間がかかる」といった理由で、ルールに従わずに文書事務を行うことは許されません。

 

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