書簡文とは|公文書の挨拶文の書き出し方、行政上の手紙の例文
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書簡とは
形式を定めておく必要のない不定形文の一つに、書簡があります。
書簡は、行政機関の長やその補助機関が、公務員としての資格で、手紙(私文書)と同じような形式で出す文書です。
例えば案内状、礼状、あいさつ状などがあります。
書簡は、権利義務関係に影響を与えるような公文書とは違い、どういうときに出さなければいけないという明確な基準や根拠はありません。
社会的な慣習に従い、礼にかなった書き方をする必要があります。
こちらでは役所等の公務において書状をしたためる場合の記載方法について解説しますが、電子メールの場合はまた別の注意点があるため「公務員のメールの書き方のルール」も参照してください。
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書簡と手紙の違い
一般的には書簡は手紙の意味で用いられ、「書簡」と「手紙」に大きな意味の違いはありません。
強いて挙げるとすれば、書簡は封筒に入れて出す意味が強く、手紙ははがきも含む程度の違いです。
ただし、官公庁が手紙の意味で用いる用語としては、他の通知文や依頼文と区別するために、専ら「書簡」を用います。
書簡の基本構成と書き出し方
書簡は、基本的には、①前文、②本文、③末文、④あと付け、⑤副文の5つからなります。
①前文
手紙の書き出しには、頭語、時候のあいさつ、安否の問い合わせ、感謝やお詫びのあいさつを入れます。
頭語と結語
手紙の性質や相手との関係によって使い方がある程度決まっており、かつ、結語と対応して使われます。
また、男性か女性かによって使われ方が異なる場合があります。
例
拝啓→敬具(敬白、拝具)
ひと筆申し上げます→かしこ<女性の場合>
時候のあいさつ
頭語の次には、季節の折に触れたあいさつを書くのが一般的です。
例
新年、厳冬(1月) -新春を迎えられ
早春(2月~3月)-残寒の折(候)
仲春(3月~4月)-陽春の候
晩春(4月~5月)-晩春の候
初夏(5月~6月)-初夏の候
盛夏(7月)-猛暑の候、暑さ厳しき折
晩夏(8月)-残暑厳しき折
初秋(9月)-初秋の候
仲秋(10月)-秋冷の候
晩秋(11月)-暮秋の候
初冬(11月~12月)-木枯らしの季節
仲冬、歳末(12月)-寒冷の候、年の瀬もおしつまり
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安否のあいさつ
時候のあいさつに続けて書きます。まず相手の安否を尋ね、場合によっては差出人の安否を書きます。
例
皆様(貴殿・各位・貴市・貴職)ますます御健勝(御清栄・御発展)のこととお喜び申し上げます(拝察申し上げます)。
感謝・おわび
安否のあいさつの次には感謝やおわびのあいさつを書きます。
ただし、感謝やおわび自体がその手紙の目的である場合は、本文の中で書きます。
例
・日ごろ(平素・毎度)一方ならぬ(何かと・特別の・いろいろと)お世話(御指導・御協力・御支援)にあずかり、誠にありがたく存じております(ありがとうございます・お礼申し上げます)。
・先日(先般)参上の折(おじゃました節)は、格別の(一方ならぬ)お世話(御配慮・御指導)をいただき(にあずかり)厚くお礼申し上げます。
・日ごろのごぶさたおわび申し上げます。
・御返事遅れて申し訳ございません。
②本文
前文の次には本題の内容を書きますが、その場合には、下記のような起語を使って本文に移ります。
例
・さて、突然のお願いで恐れ入りますが
・早速ですが、先日御依頼申し上げた○○につきまして
・ところで、御承知のとおり、本年も○○を実施することになり
・さて、御承知かと存じますが
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③末文
末文は手紙の全体を締めくくる部分で、結びのあいさつと結語からなります。結語は頭語と対応しています。
結びのあいさつは、①主文で述べた用件を結ぶ、②相手の健康、多幸を祈る、③将来の引き立てを依頼する、④返事を求める、⑤伝言を依頼する、⑥伝言を取り次ぐ、⑦後日の行動を述べる、⑧文をわびるなどに分けられます。
例
① 取り急ぎ用件のみ、以上くれぐれもよろしくお願い申し上げます
② 御多幸を御祈り申し上げます。
③ 今後ともよろしく御指導(御配慮)賜りますようお願いいたします。
④ お手数ながら折り返し御返事くださいますようお願い申し上げます
⑤、⑥ 末筆ながら皆様にくれぐれもよろしくお伝えくださいますよう
⑦ 詳しくは、いずれお目にかかりました折に申し上げます
⑧ 乱筆お許しください
④あと付け
手紙の終わりには、日付、差出人の署名(発信者名)、あて名(あて先)などを書きます。
⑤副文
あと付けを書いた後で、書き加える必要のある事柄が新たに生じた場合に書き添えるものをいいます。
手紙の効果を考えて、副文を計画的に使う場合もあります。
複文の冒頭には、「追伸」「二伸」「再啓」「追って一言申し上げます」などと書きます。
書簡の例文
案内状
拝啓 春暖の候ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、○○○○の建設につきましては、何かと御配慮をいただきましたが、おかげをもちまして、いよいよ着工の運びとなりました。
このことは、ひとえに皆様の御理解と御協力のたまものと深く感謝申し上げる次第であります。
つきましては、下記により起工式を挙行し、皆様ともども工事の安全かつ順調な完成を祈願いたしたいと思います。御多忙中とは存じますが、御出席くださいますよう御案内申し上げます。
敬具
令和○年○月○日
○○市長 ○○○○
○ ○ ○ ○ 様
記
1 日 時 令和○年○月○日 午前10時から
2 場 所 ○○○○○○○
3 式次第 ○○○○○○○○○○○○○○
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挨拶状
拝啓 初冬の候ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、私ことこの度、はからずも○○部○○課長を命ぜられました。○○部○○課在職中は、公私とも格別の御厚情、御援助をいただき、まことに感謝にたえません。
ここに謹んでお礼申し上げますとともに、今後いっそうの御厚情と御指導を賜りますようお願い申し上げます。
まずはとりあえずお礼かたがたごあいさつ申し上げます。
令和○年○月○日
○○市○○部○○課長 ○○○○
○○○○ 様
礼状
拝啓 炎暑の候ますます御健勝のことと拝察いたします。
さて、このたび、○○○○調査のため貴市へ出張の節は、公私とも御多忙のところ、種々御配慮いただき、厚くお礼申し上げます。
(中略)
まずは略儀ながら書中をもってお礼申し上げます。
敬具
令和○年○月○日
○○市○○部○○課
○○○○
○○○市○○部○○課
○ ○ ○ ○ 様
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書簡を書く際の注意点
1 件名は書きません。
2 文書記号番号は書きません。
3 あて先と発信者は、それぞれ職名と氏名を書きます。
4 相手に礼を失しない程度に、書き出しの「拝啓」や「拝復」、結びの「敬具」を使います。また、時候のあいさつ、「ますます御清栄」といったあいさつ文を書きます。ただし、「前略」、「冠省」、「草々」などは使いません。
5 公印は押しません。
6 敬語の使用方法やその他の言い回しは、誤りがないよう十分注意します。
7 縦書きで書くことが多くありますが、横書きでもかまいません。
文中の「記」以下について
通知文等では「下記のとおり」という表現を使い、詳細を「記」以下に書くことがよくあります。
「記」以下において、文末を必ず「~こと。」にする必要はありませんが、文末表現に「~こと。」を用いる場合は、原則として全ての文末を「~こと。」で統一します。
「~されたいこと」としたものもありますが、公用文には敬語を用いないルールがあるので「~すること。」とするのが本来は正しいです
なお、ただし書、なお書き等がある場合は、その文末を「~こと。」としない慣例もあります。
実際の文書作成にあたっては、文末を「~こと。」で結ぶのが困難な場合もありますが、その場合でも「~こと。」で結べそうな他の表現を探す必要があります。
「原則」の使い方
通知文等では、「原則」という用語がよく用いられます。
その際、名詞の副詞的用法である「原則~する(しない)」という表現は、出来るだけ避けて「原則として」とします。
同様に以下の用語にも注意が必要です。
結果として~(×結果~)
実際に~(×実際~)
事実として~(×事実~)
ある意味では~(×ある意味~)
略称の使い方
通知文等で同じ文章中で何度も出てくる長い用語については、略称をを用いる方が合理的です。
略称を用いる場合は、その用語が初出のところで「(以下「○○」という。)」と括弧書きで略称規定を置きます。その際、「以下」の後には「、」を打ちません。
例
感染症対策に関係する省庁(以下「関係省庁」という。)は、~
文字数が多い文書は見出しを付ける
国語分科会報告書では、文字数が多い文書では、内容の中心となるところを端的に表わす見出しの活用を勧めています。
その際、見出しを層化して、中見出しや小見出しを活用することも有効であり、読み手が見出しだけを読んでいれば、文書の内容と流れがつかめるようにすると良いとされています。
また、見出し活用する際は、見出しが目立つフォントを使うことも重要です。
くどい表現を避ける
具体的に以下のような語句を必要以上に用いると、くどい表現になりがちなので注意します。
こと もの ところ という しているところ していく となっている 行っている 思う 考える
くどい表現の例文
×勝つことができるでしょう。(勝てるでしょう)
×賛成できないものがある。(賛成できない)
×嫌いということではない。(嫌いではない)
×団結というものに期待している。(団結に期待している)
×伺っているところであり~(伺っているので~)
×書いてくことにしている。(書くことにしている)
×調査中になっており~(調査中であり~)
×目指したいと思います。(目指します)
×検証を行っている。(検証している)
また、二重否定の表現もくどい表現の例です。
×~しないわけではない。(~することもある)
×~を除いて実現しなかった。(~のみ実現した)
他にも重言を使用しないよう注意が必要です。
×諸先生方 ×各都道府県ごと ×一番最後
×今の現状 ×過半数を超える ×従来から
×まず最初に ×当面の間
公用文でも分かりやすい自然な言い回しを意識します。
くどい表現をなくすためには、字数をできるだけ減らす観点で読み直すと解決することも多いです。
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