公文書の保存期間の考え方、廃棄と運用方法

公文書の保存期間の考え方、廃棄と運用方法

保存期間の考え方

保存期間とは、行政文書を管理するに当たって、その文書を最低限何年間保存する必要があるかをあらかじめ定めておくものです。
行政文書は、定められた保存期間が経過するまでは廃棄することができません。
行政文書は、組織として客観的な基準により管理し、必ず保存期間をあらかじめ決めておく必要があります。

 

1 保存期間の意義
行政文書は、一定期間保存する必要があります。
そして、その保存期間は行政文書分類基準表(以下「分類基準表」といいます。)によりあらかじめ定めなければなりません。
保存期間は、法令等の定め、当該行政文書の効力、重要度、利用度、資料価値等の要素を考慮して定めます。
例えば、権利義務に関係する文書等について、その権利の消滅時効が完成するまで保存するような場合や、業務上、前例を参考にしたい場合に必要な期間です。
保存期間はこれらに基づいて決めることになります。

 

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仮に、あらかじめ保存期間を定めずに、単に「不要になったら廃棄する」という運用をした場合、その時々、そして組織や担当者によって違う判断をしてしまうことになります。
行政文書は住民との共有物ですので、それでは外部に対しての説明責任を果たすことができません。
例えば、行政文書開示請求があった文書がすでに廃棄されていた場合、行政の都合で恣意的に廃棄されたのではないかという疑いを、晴らすことができません。
そこで、上記の要素を勘案して、何年間保存するのかをあらかじめ基準として定め、それを誰もが確認できる状態にしておく必要があります。
それが保存期間です。
また、保存期間は、あらかじめ基準として公開しておくことに意味があります。
文書の保存が始まった後にいつ廃棄するかを決めるのでは、文書の内容によって恣意的な判断がされる可能性があるからです。

 

2 保存期間とは
保存期間は、その文書を保存しなければならない最低限の期間を定めたものです。
保存期間が満了した時点で、さらに保存する必要が生じたときには、文書管理責任者(課長)の決定により保存期間の延長をすることができます。
保存期間が経過するまでは、廃棄することはできません。
保存期間を定めて管理を行うのは、電子文書を管理する場合も紙文書を管理する場合も同じです。

 

3 長期から30年へ
かつて10年を超えて保存すべき行政文書や、いつ廃棄できるか分からないものは「長期」保存されることが多かったのも事実です。
長期保存になった文書は必要に応じて見直しを行い、不要になったら廃棄することになっていましたが、現実には見直しがなされることはあまりなく、事実上永久に保存されることになっていました。
現在多くの自治体で、「長期」や「永年」という保存期間の定めはなくなり、最長は「30年」となっています。
ただし、30年保存ということは、30年後に必ず廃棄しなければならないということではなく、前述のとおり、保存期間が満了したときに「廃棄」か「延長」かの判断を行うということです。

 

これは、30年を一区切りとして保存継続の必要性の見直しを的確に実施する趣旨であり、国の定める「行政文書の管理方策に関するガイドライン」に従ったものです。

 

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4 条件付保存期間
文書の中には、文書の発生時には具体的な年数は決まらないが、一定の保存期間が定まるものがあります。
例えば、貸付金関係の書類において「償還後1年」としたり、最新版を保存すれば足りるものについて「改訂時差替」としたりするものがこれに当たります。
そういった場合の保存期間は、「条件付」となります。
かつて保存期間が定まらない文書については、長期保存にするなどの運用が多く見られました。
そして事実上見直しがされずに必要以上に保管しておくことがありました。
現在では、保存期間が定まらない文書については「条件付」とし、毎年度末に条件が達成していないかの確認を行うことにより、必要以上に保存をしないようにしています。

 

保存期間の基準

1 保存期間管理の単位
保存期間は、本来は文書の保存期間として定まっているものです。
しかし、文書1件ごとに廃棄や延長の手続などを行うのでは、事務が煩雑になりすぎます。
また、文書の所在管理の単位はフォルダです。
そのため、フォルダは同じ保存期間の文書が収納されることを前提に作成し、保存期間は、同等の扱いができるまとまり(フォルダ)ごとに管理を行います。
したがって、フォルダを作成する際には、「同じ保存期間で管理ができる」ということが前提になります。

 

2 保存期間の決め方
保存期間は、法令等の定め、当該行政文書の効力、重要度、利用度、資料価値等を考慮して定めます。
しかし、これだけでは具体的な行政文書の保存期間を決めるのは困難です。
行政文書の保存期間を決めるに当たって、それぞれの組織がこの判断を行っていたのでは、非効率なうえ、統一性がなくなるおそれがあります。
そのため、自治体は判断の基準として、保存期間基準表を定めています。

 

また、かつては保存期限が到来したら基本的に廃棄する運用であったため、始めから保存期間を長めに設定しておくようなことが見受けられました。
現在では、保存期間はあくまで「最低限保有しなければならない期間」を定めたものであり、保存期間満了時には必ず確認のうえ、必要があれば文書管理責任者の決定により延長する運用になっています。
例外的な事情などにより長く保存しなければならなくなった場合には、延長を行えますので、登録時に定める保存期間は、本来必要な期間を定めるようにします。

 

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(1) 保存期間の種類と内容
保存期間は、0年、1年、3年、5年、10年、30年、条件付の7種類です。
それぞれの保存期間の基本的な扱い方は次のとおりですが、0年、1年、3年、5年、10年、30年の場合には、原則として文書管理規則等の定めに従って定めます。
条件付の扱いは、下記オの通りです。

 

ただし、規則の基準にかかわらず、法令等に定めがある場合は、それに従います。
また、特別な事情がありそれ以外の保存期間で管理する必要がある場合には、統括文書管理責任者の承認を得て、文書管理責任者が別に定めることができます。
上の7種類に当てはまらない保存期間のときは、「その他」として、下記カのように扱います。

 

ア 30年保存(別表第1項)
自治体政治の基本に関わる重要文書又は永年保存が義務付けられているものは30年保存で扱います。
廃棄するための何らかの条件が決まっている場合には、30年保存ではなく「条件付」となります。

 

イ 3年、5年、10年保存
これらの保存期間の文書は、原則として、置き換え、引継ぎを経て、文書庫に保存します。
これらは、後述(1)から(5)に従い、保存期間を選びます。

 

ウ 1年保存
1年保存文書は、引継ぎも保存もせず、発生年度の翌々年度に各係が廃棄する文書です。
定例的な文書等で、前年度のものを参照すれば足りるような場合が、これに当たります。

 

エ 0年保存
0年とは、文書が不要になったときに、年度内でもすぐに廃棄できる文書のことです。
1年保存の必要さえない軽易な文書が該当します。

 

オ 条件付
文書の発生時には具体的な年数は決まらないが、何らかの条件により一定の保存期間が定まるものは「条件付」となります。
廃棄するための何らかの条件が決まっている場合には、30年保存などではなく、「条件付」とします。
保存期間が条件付の場合には、条件が達成したときには随時保存期限日の設定を行うとともに、保存期間コメントに条件が成就した日付等を記入します。
また、年度末の文書整理時には、必ず「条件が達成していないか」の確認を行うものとします。

 

例)・貸付金関係の文書において、「償還後1年」などとする場合
・最新版を保存すれば足りる場合において「改訂時」などとする場合

 

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カ その他
具体的な保存年数が決まっている場合で、「0年、1年、3年、5年、10年、30年」のいずれにも当てはまらないものの場合は、保存期間は「その他」として扱います。
「その他」に指定するのは、法令等で具体的な年数が定められている場合など、特に理由がある場合のみです。
法令等に基づく保存期間については、後述します。

 

(2) 別に定めがある場合
保存期間の判断の基準が別に定めてある場合、原則としてこの基準に従います。

 

(3) 別に定めがない場合
重要度の判断に当たっては、決裁区分が一つの目安になります。
上記の別に当てはまらないものであれば、おおよそ市長決裁の文書は10年、部長決裁の文書は5年、課長決裁のものは3年と判断することができます。
ただし、決裁区分はあくまで目安であり、それだけで判断することはできません。
あくまで、業務上の必要性で判断する必要があります。

 

(4) 法令等に基づく保存期間
上の基準にかかわらず、法令等で決まっているものは、その保存期間にします。
また、自治体の条例、規則、訓令、要綱で決まっているものは、その保存期間にします。
保存期間を決めるに当たっては、その根拠となる法令等の規定を十分確認する必要があります。
また、書類の保存期間として明記されているときはもちろんですが、権利義務(債権債務)の得喪に関して時効の規定があるときも、時効の完成まで証拠として保存する必要がある行政文書については、その期間を考慮して保存期間を決めます。

 

法令等の改正により、文書の保存すべき期間が変更になることがあります。
しかし、法令等の改正に伴い保存期間の基準が変わったとしても、保存期間が変わるのは基本的に改正後に発生する行政文書についてであって、過去に既に発生した文書の保存期間まで当然に変わるわけではありません。

 

例)・(労働基準法)
第109条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。
   ・(民法)
第167条 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
・(地方税法)
第18条 地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利(以下本款において「地方税の徴収権」という。)は、法定納期限(次の各号に掲げる地方団体の徴収金については、それぞれ当該各号に掲げる日)の翌日から起算して5年間行使しないことによって、時効により消滅する。

 

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(5) 共通分類基準表に定める保存期間
庁内共通文書については、統括文書管理責任者が別に定める共通行政文書分類基準表に従って保存期間を決めます。
ただし、共通分類基準表に定めのある全庁共通文書であっても、その業務を主管する係など、他の組織とは異なる基準で保存する必要がある場合などは、共通分類基準表に従うのではなく、個別の分類基準表として別に定めて管理を行います。
例えば、文書係が情報公開担当課として情報公開に関する文書を保存する場合、その保存期間は共通分類基準表ではなく、個別分類基準表により定めます。

 

(6) 歴史的に価値のある文書の保存
行政文書の中には、上に述べたような、証拠としての保存が必要な期間、業務での利用に必要な期間が過ぎたとしても、歴史的・資料的な価値があるものもあります。
これらの保護はとても重要です。
しかし、文書発生の時点でそれを考慮して保存期間を決めるとなると、ほとんどの文書は保存期間が判断できなくなってしまいます。
そこで、保存期間というのはあくまで、上で示したような業務上、法令上必要な保存期間を設定するものとし、歴史的価値のある文書の保存については、保存期間満了後に、別の仕組みの中で管理するものとします。

 

廃棄年度の計算方法

1 年度管理と暦年管理
文書の保存期間は、会計年度により管理する場合と、暦年により管理する場合とがあります。
自治体で発生する文書は、特別の事情がない限り、会計年度により管理を行います。
たとえ、文書の発番などを暦年で管理する必要があるとしても、保存期間の計算は暦年にする必要はありません。

 

2 保存期間の計算方法
(1)年度管理の文書
年度単位の文書は、文書の発生年度の翌年度の初日(4月1日)から数えて保存し、保存年限が満了する年度の3月31日を過ぎたときに廃棄します。
ただし、0年保存の文書については、1年未満の期間内において業務上必要がなくなったときに廃棄することができます。
文書は年度単位で管理をしていますので、同じ年度に所属する文書においては、年度始めに発生した文書でも年度末に発生した文書でも、廃棄は同時期となります。
ただし、例外として、会計年度の末に作成した起案文書で翌会計年度の会計事務に係るものについては、保存期間の終了する日
から起算して1年を経過した日が、保存期間の満了する日となります。

 

例)・平成28年5月発生・5年保存文書
保存起算日=平成29年4月1日 保存期限の満了日=平成34年3月31日
・平成29年3月発生・10年保存文書
保存起算日=平成29年4月1日 保存期限の満了日=平成39年3月31日
・平成29年3月発生・5年保存文書
※ 28年度末に、29年度の事業(支出を伴うもの)の起案を行った場合
保存起算日=平成29年4月1日 保存期限の満了日=平成35年3月31日

 

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(2)暦年管理の文書
暦年単位の文書については、発生した年の翌年(1月1日)から数えて保管・保存し、保存期間が満了する年の12月31日が過ぎたときに廃棄します。
暦年で管理するのは、例外的な場合です。
保存期限日を遅らせることにより年度管理が可能なのであれば、年度により保存管理を行います。
文書の発番を1月1日から暦年で管理したい場合であっても、そのフォルダの保存期間を暦年にする必要はありません。
フォルダの単位と、文書の発番の単位は、異なるものです。
一つのフォルダの中に、異なる台帳で発番した文書が収納されても、何も問題ありません。

 

保存期間の変更

保存期間の基準は、行政文書の管理の基準として対外的に公表しているものです。
その保存期間が満了するまでは廃棄をすることはできません。
一度分類基準表で定めた保存期間で保存を開始した文書の保存期間を変更する場合には、対外的な説明ができるようにしなければなりません。
そうでなければ、例えば行政文書開示請求があった場合に、行政にとって都合の悪い文書を恣意的に廃棄したと言われかねません。

 

(1) 分類基準表の変更
法令等の変更や業務上の必要性の変化等により、保存期間を変更する必要が生じた場合には、まず、分類基準表の変更を行います。

 

(2) 基準表の変更に伴う過去文書の保存期間変更
分類基準表の変更は、将来発生する文書についての保存期間を変更したものです。
過去に発生して、すでに保存を開始している文書について及ぶものではありません。
制度改正等により、過去に発生した文書についても保存期間の変更が必要になった場合には、次のように扱います。

 

ア 保存期間の延長
通常の延長処理(特殊な事情により、そのときに限りフォルダ又は文書の保存期限日を延長すること)ではなく、保存期間の基準自体を変更したことに伴い、過去に発生した文書全ての保存期間を延長する場合には、分類基準表の決定だけではなく、過去文書の保存期間を延長することについても起案し、文書管理責任者が決定します。

 

イ 保存期間の短縮
一度決められた基準で保存を開始した文書については、原則として保存期間を短縮することはできません。
特別な事情により、過去に発生した文書についても保存期間の短縮が必要な場合には、統括文書管理責任者に協議するものとします。

 

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(参考)時効にかかる保存年限など
時効は、下記のような特別の定めがあるもの以外は一般に5年です。

 

1 私法上の時効
(1) 所有権の取得時効(民法第162条) 20年、10年
(2) 所有権以外の財産権の取得時効(民法第163条) 20年、10年
(3) 債権、財産権の消滅時効(民法第167条) 10年、20年
(4) 定期金債権の消滅時効(民法第168条) 20年、10年
(5) 1年以下の定期給付債権の消滅時効(民法第169条) 5年
(6) 医師、助産師及び薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権の消滅時効(民法第170条) 3年
(7) 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権の消滅時効(同) 3年
(8) 弁護士及び公証人の職務関係受領書類の責任の消滅時効(民法第171条) 3年
(9) 弁護士及び公証人の職務に関する債権の消滅時効(民法第172条) 2年
(10) 生産者、卸売商人及び小売商人売却した産物及び商品の代価の消滅時効(民法第173条) 2年
(11) 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をするこ
とを業とする者の仕事に関する債権(同) 2年
(12) 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権(同)2年
(13) 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権(民法第174条) 1年
(14) 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権(同)1年

(15) 運送賃に係る債権(同) 1年
(16) 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権(同) 1年
(17) 動産の損料に係る債権(同) 1年
(18) 判決で確定した権利の消滅時効(民法第174条の2) 10年
(19) 商行為による債権の消滅時効(商法第522条) 5年
(20) 社債の償還請求権の消滅時効(商法第316条) 10年
(21) 利息、無記名社債の欠缺した利札と引き換えの控除金支払請求権の消滅時効(同) 5年
(22) 運送取扱人及び運送人の責任の消滅時効(商法第566条・第589条) 1年
(23) 運送取扱人及び運送人の委託者又は荷受人に対する債権の消滅時効(商法第567条・第589条)1年
(24) 倉庫営業所の寄託物に対する責任の消滅時効(商法第626条) 1年
(25) 保険金額支払義務及び保険料返還義務の消滅時効(商法第663条) 2年
保険料支払い義務の消滅時効(同) 1年
(26) 被保険者のための積立金の返戻義務の消滅時効(商法第682条) 2年
(27) 賃金、災害補償その他の請求権の消滅時効(労働基準法第115条) 2年
退職手当の請求権の消滅時効(同) 5年
(28) 療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、療養給付、休業給付及び葬祭給付を受ける権利の消滅時効(労働災害者補償保険法第42条) 2年

障害補償給付、遺族補償給付、障害旧及び遺族給付を受ける権利の消滅時効(同) 5年
(29) 保険料その他国民健康保険法による徴収金の徴収又は還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利の消滅時効(国民健康保険法第110条) 2年
(30) 保険料その他厚生年金保険法による徴収金の徴収又はその還付を受ける権利の消滅時効(厚生年金保険法第92条) 2年 同保険給付を受ける権利の消滅時効(同) 5年
(31) 失業給付の支給又は返還を受ける権利及び納付すべきことを命ぜられて金額を徴収する権利の消滅時効(雇用保険法第74条) 2年

 

2 公法上の金銭債権の消滅時効
(1) 恩給を受ける権利(恩給法第5条) 7年
(2) 地方公務員が公務災害等により補償を受ける権利(地方公務員災害補償法第63条) 2年
ただし、障害補償及び遺族補償を受ける権利 5年
(3) 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利(地方自治法第236条) 5年
(4) 地方税の徴収権及び還付金に係る債権(地方税法第18条・第18条の3) 5年

 

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