行政文書の開示決定の不服申立てはどうする?具体的な対策と事務とは
解釈・運用
1 開示決定等に対する不服申立てがあった場合、市長は、情報公開及び個人情報保護審査会( 以下「審査会」といいます。) に対する諮問を経た後に、当該不服申立てについての決定を行わなければなりません。
2 行政不服審査法に基づく不服申立てが、審査の結果、不服申立人としての要件に該当しない、期間経過後の不服申立てであるなどの要件不備により却下されます。
3 開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示しない旨の決定を取り消し、又は変更し、結果的に当該行政文書の全部を開示する場合は、第三者からの反対意見書が提出されているときを除き、審査会への諮問が不要です。
4 不服申立てがあった場合の取扱い
⑴ 主管課における再検討
開示決定等について、行政不服審査法第6条の規定に基づく不服申立てがあった場合は、当該開示決定等が妥当であるかどうか再検討を行います。
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⑵ 審査会への諮問
ア 主管課は、再検討を行った結果、なお当該開示決定等が妥当であると判断した場合は、条例に該当する場合を除き、速やかに情報公開審査会及び個人情報保護審査会に諮問しなければなりません。なお、開示請求が条例に規定する要件を満たさず、開示請求者が補正に応じない等の理由により開示請求を却下する場合は、当該処分は開示決定等に含まれないことから、審査会への諮問は要しません。
イ 条例に該当する場合は、審査会に諮問する必要はありませんが、総務課長に協議するものとします。
5 第三者からの不服申立てへの対応
⑴ 開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示する旨の決定に対し、当該行政文書を開示請求者に開示する日までの間に第三者から不服申立てがあった場合は、上記に準じて取り扱うとともに、主管課は、職権で当該行政文書の開示又は一部開示の実施を停止し、当該開示請求者にその旨を通
知します。この場合においては、総務課長に協議します。
⑵ 開示請求者からの不服申立てに係る開示決定等を変更して開示部分を広げる決定をした場合において、当該決定に対して第三者から不服申立てがあったときは、速やかに審査会に諮問することとします。
諮問をした旨の通知
市長は、不服申立人や行政不服審査法第24条に規定する参加人などの関係者に対し、審査会に諮問をした旨を通知しなければなりません。
解釈・運用
1 不服申立人及び当該不服申立てに利害関係人として参加している参加人に対し、審査会に諮問をした旨を通知します。
2 開示決定について第三者が不服申立てを提起している場合、開示請求者に対し、審査会に諮問をした旨を通知します。
3 開示決定等について反対意見書を提出した第三者が参加人となっていない場合であっても、当該第三者に対し、審査会に諮問をした旨を通知することとしたものです。
4 不服申立てがあった場合の取扱い
総務課長は、審査会に諮問した後、速やかに条例に該当するものに審査会諮問通知書により諮問をした旨を通知します。
第三者からの不服申立てを棄却する場合等における手続
第三者に関する情報が記録されている行政文書の開示決定等 に対する不服申立てについて、開示決定( 行政文書の全部又は一部を開示する決定をいう。以下同じ。) に対する第三者からの不服申立てを却下し、若しくは棄却する決定を行う場合、又は開示請求に係る行政文書の全部若しくは一部を開示しない旨の決定を変更し、当初の決定より開示する部分を拡大する決定を行う場合に、当該決定に係る行政文書に自己の情報が記録されている第三者に訴訟提起の機会を確保します。
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解釈・運用
1 開示決定に対する第三者からの不服申立てを却下し、又は棄却する場合、当該行政文書は開示されることとなるが、その結果、当該第三者に回復不能の利益侵害が生じるおそれがあるため、当該第三者に訴訟を提起する機会を与えることが、裁判を受ける権利の保障の観点から望ましいと考えられます。
そこで、このような場合には、不服申立てに対する決定の日と開示をする日との間に2 週間以上の期間を置き、当該第三者が訴訟を提起する機会を確保します。
2 開示請求に係る行政文書の開示決定等に対する不服申立てが行われた結果、当該不服申立てに係る開示決定等を変更し、当初の決定より開示する部分を拡大する決定を行うこととなった場合についても、開示決定を行う場合と同様に、第三者の権利保護を図る必要があることから、開示決定等を変更する決定の日と開示をする日との間に2 週間以上の期間を置きます。
3 当該第三者に対し、開示する旨の決定をした旨及びその理由並びに開示をする日を書面により通知しなければなりません。
4 決定により開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示しない旨の決定が取り消された結果、主管課が再度行う当該行政文書の開示決定は、開示決定の日と開示をする日との間に2 週間以上の期間を置くとともに、当該第三者に対し、開示決定をした旨及びその理由並びに開示をする日を書面により通知しなければなりません。
5 行政文書の開示決定の取消しを求める不服申立てが提起された場合、当該不服申立ての提起自体には、行政不服審査法第34条第1 項の規定により、当該開示決定に係る行政文書の開示に対する執行停止の効力はありませんが、同法第34条第2 項若しくは第3 項又は第48条の規定により、処分の取消しを求める不服申立てに併せて執行停止の申立てがあり、これを審査庁である市長が認めたとき、又は市長が職権により執行停止を行ったときは、当該不服申立てに対する決定の日までは開示をしないこととします。執行停止の申立てがあったとき又は職権による執行停止を行おうとするときは、総務課長に協議します。
6 不服申立てに係る事務
⑴ 条例による処分に対する不服申立て
ア 条例の規定による処分についての不服申立ては、上級庁が存在しませんので、異議申立てのみが可能です。具体的には、次の場合が考えられます。
イ 行政文書の開示請求に対する拒否決定(一部拒否決定を含む。)に対する請求者からの不服申立て
ウ 不作為に対する請求者からの不服申立て
エ 開示決定に対する第三者からの不服申立て
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⑵ 不服申立ての窓口
不服申立ては、開示請求に対する開示等の決定を行った処分庁に不服申立書を提出することにより行います。
⑶ 不服申立書の記載内容の確認
主管課職員は、不服申立てをしようとするものから不服申立書の提出を受ける際は、次の事項について確認を行うものとします。
ア 処分に対する不服申立ての場合
① 不服申立人の氏名及び年齢又は名称並びに住所
② 不服申立てに係る処分
③ 不服申立てに係る処分があったことを知った年月日
④ 不服申立ての趣旨及び理由
⑤ 処分庁(実施機関)の教示の有無及びその内容
⑥ 不服申立ての年月日
⑦ 不服申立人の押印
イ 不作為に対する不服申立ての場合
① 不服申立人の氏名及び年齢又は名称並びに住所
② 当該不作為に係る処分その他の行為についての請求の内容及び年月日
③ 不服申立ての年月日
④ 不服申立人の押印
⑷ 補正命令
主管課課職員は、不服申立書の提出を受ける際に、当該不服申立書の記載事項や添付書類に不備がある場合などのときには、不服申立人に対し、相当の期間を定めて、その補正を命じるものとします。
なお、不服申立人が、この補正命令に応じない場合又は相当の期間経過後に補正をなした場合には、当該不服申立ては、不適法であるとして却下します。
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⑸ 不適法な不服申立ての取扱い
主管課長は、要件審理の結果、不服申立てが不適法であるときは、実体審理に入ることなく「却下」決定を行うことになります。
なお、この実体審理に入り得ない不適法な不服申立てとは、次の場合が挙げられます。
ア 不服申立てが法定の期間経過後になされたとき。
イ 不服申立てができない事項について不服申立てがなされたとき。
ウ 不服申立てをする資格のないものから不服申立てがなされたとき。
エ 処分庁を誤った不服申立てがなされたとき。
オ 不服申立書に不備があり、補正を命じてもその補正がなされないまま不服申立てがなされたとき。
⑹ 審査会への諮問
主管課長は、不服申立てがあった場合は、当該不服申立てを不適法であることを理由として却下するとき及び公開決定等を取り消し又は変更し、当該不服申立てに係る行政文書の全部を公開するとき(当該開示決定等について反対意見書が提出されているときを除く。)を除き、すべて審査会に諮問します。各課は部長名で、総務部長あてに諮問依頼書を提出します。
諮問依頼書に添付する書類は次のとおりです。
ア 行政文書開示請求書
イ 行政文書一部開示決定通知書・行政文書不開示決定通知書
ウ 不服申立書
エ 不開示理由説明書
オ 請求の対象となった情報
カ その他必要な書類
その後の審査会への手続きは、総務課が行います。
⑺ 不服申立人への諮問した旨の通知
総務課長は、審査会に諮問したときは、直ちに次に掲げる者に通知します。
ア 不服申立人及び参加人
イ 公開請求者
ウ 公開決定等について反対意見書を提出した者
⑻ 審査会への資料の提出等
審査会は、情報公開及び個人情報保護審査会条例により、強力な調査権限が付与されています。主管課長は、審査会から次に掲げる要請があった場合には、必ず応じなければなりません。
ア 不服申立てのあった当該行政文書の提出を求めること(インカメラ審議)
イ 審査会の指定する方法で分類整理した資料を作成し、その提出を求めること(ボーン・インデックス審議)
⑼ 不服申立てに対する決定
主管課長は、審査会から答申を受けたときは、その答申を尊重して当該不服申立てに対する決定を行わなければなりません。決定手続は、起案文書により行い、決定書の案及び審査会からの答申書を起案文書に添付するものとします。
⑽ 不服申立人への決定内容の通知
主管課長は、不服申立てに対する決定を行ったときは、直ちに不服申立人に対し、決定書の謄本を送達するものとします。決定の送達を確実に、かつ、後日の紛争を防止するために、決定書の謄本は、配達証明扱いの郵便で送付するものとします。
なお、請求を拒否する決定を取り消して、請求を認容する決定をする場合には、決定書の謄本の送達と同時に、行政文書開示決定等通知書を不服申立人に送付するとともに、当該請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記録されているときは、当該第三者に対し決定内容を通知するものとします
答申の尊重義務
1 実施機関は、審査会が当初の実施機関の不開示決定(一部開示決定も含みます。) を覆す答申を行った場合に、その答申を最大限尊重し、不服申立てに対する決定を行うよう求めるものです。
2 審査会の答申は、法的に実施機関を拘束するものではありませんが、主管課は、答申に従わない決定を行うときは、その後の訴訟対策等を念頭に入れたうえで、慎重に判断する必要があります。その決定をする場合は必ず事前に総務課長と協議します。
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