「次条に定める」「従前の例による」「前各号」「この限りでない」などの法令用語の意味と使い方

「次条に定める」「従前の例による」「前各号」「この限りでない」などの法令用語の意味と使い方

「次条に定める」「従前の例による」「前各号」「この限りでない」などの法令用語の意味と使い方

法令等においては、何が対象となるのかなどによって権利義務関係に大きな影響を与えることがあり、使い方を間違えないよう注意が必要です。
たくさんの種類があり覚えにくいですが、法令業務に携わる方は一つずつ覚えていくようにしましょう。

 

(1) 「規程」と「規定」

「規程」は、一つの法令全体を指す場合に使います。
「規定」は、法令の中における個々の条項を示す場合及び「定め」の意味を示す場合に使います。

 

・職務権限規程 ・○○条例第○条の規定 ・「・・・規定を設けることができる。」

 

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(2) 「施行」と「適用」

「施行」は、法令の規定の効力が一般的、現実的に働き、作用するようになることで、通常は、それぞれの法令の付則で施行期日を定めています。
「適用」は、法令の規定が、個別的、具体的に特定の対象に対して、又は特定の時期に、現実に働き、作用することです。

 

・「この法律は、公布の日から施行する。」
・「次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。」

 

(3) 「準拠」と「準用」

「準拠」とは、のっとるべき規定や基準を示します。
「準用」は、一定の規定を、本来その規定が対象とする事柄とは本質が異なる事柄について、必要な修正を加えたうえで当てはめることをいいます。

 

・外国の法令に準拠して外国において銀行業を営む者(銀行法第4条第3項)
・この規程に定めのない事項については、○○市職務権限規程及び○○市服務規程を準用する。

 

(4) 「改正する」と「改める」

「改正する」は、改正すべき法令の全体を指示して表現する場合に使います。
「改める」は、改正すべき法令の個々の規定(条、項や号)を指示して表現する場合に使います。

 

・○○条例の一部を次のように改正する。
・第○条を次のように改める。

 

(5) 「以上」、「超える」、「以下」、「未満」

ア 「以上」は、基準となる一定の数量を含んでそれより多い数量を表します。
イ 「超える」は、基準となる一定の数量を含まないでそれより多い数量を表します。「超えない」は、「以下」と同じです。
ウ 「以下」は、基準となる一定の数量を含んでそれより少ない数量を表します。
エ 「未満」は、基準となる一定の数量を含まないでそれより少ない数量を表します。

 

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(6) 「以前」、「以後」、「前」、「後」

ア 「以前」と「以後」は、基準点を含んでそれより前や後の時間的範囲を表します。
イ 「前」と「後」は、基準点を含まないでそれより前や後の時間的範囲を表します。

 

(7) 「者」、「物」、「もの」

「者」は、法律上の人格を持つ対象を、つまり、自然人、法人を示します。「物」は、人格者を除いた有体物を総称します。
「もの」は、「者」、「物」で表現できない抽象的なものや法人格のない社団、財団などを表現する場合や者、物をさらに限定して表現する場合に使います。

 

・「市の機関の定める規則で公表を要するものにこれを準用する。」
・「保有個人情報の集合物であって、次に掲げるもの」

 

(8) 「当該」

「当該」の語は、基本的には「その」という連体詞と異なるところはありません。
しかし、法令では、次のようないくつかの意味を持つ語として使います。
ア 「その」「問題となっている当の」「そこで問題となっている場合のそれぞれの」という意味に使います。
イ 「当該各号」の表現のように、「該当するそれぞれの号」といった意味に使います。
ウ 「当該職員」のように「当該」と「職員」とに分けるのではなく、一つの特殊な法令用語として使います。
   この場合は、職制上や特別の委任により一定の行政上の権限を与えられている国や地方公共団体の職員を意味します。

 

・前項の関係市町村の意見については、当該市町村の議会の議決を経なければならない(地方自治法第18条1の2第3項)
・この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
・国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、普通法人等の法人税に関する調査に際しては、前項の帳簿を検査するものとする。(法人税法第150条の2)

 

(9) 「直ちに」、「遅滞なく」、「速やかに」

三つとも時間的即時性を表す言葉ですが、次のように若干のニュアンスの違いがあります。
ア 「直ちに」は、三つの中では一番時間的即時性が強く、「何をおいても、すぐに」という意味を表そうとする場合に使います。
イ 「遅滞なく」も、時間的即時性は強く要求されます。
    ただ、その場合でも正当な理由や合理的理由に基づく遅滞は許されるというように解されています。
    つまり、「事情の許すかぎり最も速やかに」という趣旨を表します。
ウ 「速やかに」も、もちろん「できるだけ早く」という意味を表しますが、訓示的な意味に使います。
    これに違反し、義務を怠った場合でも「直ちに」「遅滞なく」のように違法という問題が生じない場合に使われることが多くあります。

 

・各部長は、公印に盗難、紛失、偽造又は変造があったときは、第3号様式により、 直ちに総務部長を経由して市長に届け出なければならない。
・出納員は、取り扱つた収納金を、納付書によつて遅滞なく指定金融機関、収納代理金融機関又は郵便局に払い込まなければならない。
・前条の規定に基づき代決した場合、代決者は、事案の決定後速やかに決定権者の閲覧を受けなければならない。

 

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(10) 「削除」、「削る」

「削除」は、法令中の条や号を削った場合に、その条名や号名を残しておく必要のある場合に使います。
   この場合には、削られる条や号は、「削除」という形に改められます。
「削る」は、ある法令の一部の規定をなくしたい場合で、その部分を跡形もなく消してしまうときに使います。

 

(11) 「推定する」「みなす」

「推定する」は、ある事柄に当事者間の取り決めがない場合に、法令が一応、一定の事実状態にあるものとして判断し、そのように取り扱うことです。
   「みなす」は、法令の規定により、ある事物を他の事物と同一視して、そのある事物に生じる法律効果をその他の事物に生じさせることです。

 

・妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。(民法第772条)
・胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。(民法第886条)

 

(12) 「ただし」「この場合において」

どちらも、文章と文章を結ぶ場合に使います。
「ただし」は、通常主文章である前の文章の内容に対して、その例外を定めたり、その内容を制限する場合に使います。
また、まれにですが、単に前の文章を受けてその内容に若干の説明を付け加える場合に使うこともあります。
「この場合において」は、主文章である前の文章の内容をそのまま受けて、その場合の中で特定の内容を表現するときに使います。

 

・起案文書を作成したときは、その起案者は、文書管理システムに文書管理事項を記録するものとする。
  ただし、第25条第2項ただし書の規定により、特例起案帳票を用いて起案した場合の登録については、統括文書管理責任者が別に定める。
・行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、第1項の規定による通知を、その者の氏名、同項第3号及び第4号に掲げる事項並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から2週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。(行政手続条例第15条)

 

(13) 「例とする」、「例による」

「例とする」は、通常の場合はそこに定められたようにしなければなりませが、合理的な理由がある場合は、そこに定められたようにしなくても法律上の義務違反となるものではないことを表す語として使います。
「例による」は、「準用する」と似た意味を持つ表現で、ある事項について、他の法令の下における制度や手続を包括的に当てはめて適用することを表現する語として使います。

 

・常会は、毎年1月中に召集するのを常例とする。(国会法第2条)
・行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。(行政事件訴訟法第7条)

 

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(14) 「なお従前の例による」、「なお効力を有する」

どちらも、法令を改廃する場合に、付則で、新旧法令の適用関係について経過措置を規定する際に使われる慣用句です。
意味は、二つとも大体同じような意味で、新法令の規定によらず、旧法令の規定を適用するということです。
しかし、その法律効果は、次のように少し違います。

 

ア 「なお効力を有する」の場合、その根拠はなお効力を有するとされた旧規定そのものです。一方、「なお従前の例による」の場合は、旧規定は失効していて、この規定だけを適用の根拠とします。

 

イ 「なお効力を有する」の場合、なお効力を有するとされるのはその旧規定だけです。旧規定に基づく下位規範である政省令(条例の場合は施行規則等)については、それに関する経過措置を別に定める必要があります。これに対して、「なお従前の例による」の場合は、下位規範を含めて包括的に従前の例によることとなります。下位規範に関する経過措置を別に定める必要はありません。

 

ウ 「なお従前の例による」の場合は、新法令の施行直前の旧制度をそのまま凍結して適用するものです。
したがって、この凍結状態を解除することなしに、旧制度の一部分である下位規範を後で改正することはできません。
しかし、「なお効力を有する」の場合は、効力を有する旧規定に基づく下位規範を後で改正することはできます。

 

(15) 「この限りでない」、「・・・することを妨げない」

「この限りでない」は、前に出ている規定の全部や一部の適用をある特定の場合に打ち消したり、除外する場合に使います。ただし書の文章の終わりに使われることが多くあります。
「・・・することを妨げない」は、ある規定に対して、一定の行為を消極的に認める場合や、ある規定に対して、例外として他の規定の適用もあることを明確にする必要がある場合に使います。

 

・普通地方公共団体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができる。但し、予算については、この限りでない。(地方自治法第112条)
・監査委員の任期は、識見を有する者のうちから選任される者にあっては4年とし、議員のうちから選任される者にあつては議員の任期による。ただし、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない。(地方自治法第197条)

 

(16) 「前項の」、「前項の規定による」

「前項の」と「前項の規定による」は、その前項で特定の意味内容を持つ語句や事項を、そのまま用いる場合に使います。
この場合、その語句や事項が名詞形のときは「前項の」で受け、動詞形のときは「前項の規定による」で受けます。

 

(17) 「前項の場合において」、「前項に規定する場合において」

「前項の場合において」は、項を改めて、前項で規定された事項の補足的事項を定める場合に使います。
項を改めて規定するほどのことがない場合には、その前項の後段として「この場合において」の語を使って書きます。
「前項に規定する場合において」は、前項の規定の中に、「・・・する場合においては」等の仮定的条件を示す部分がある場合において、この部分を受けて「その場合に」という意味を表そうとするときに用いられます。

 

・ 機構等は、機構等が施行する市街地再開発事業の施行により利益を受ける地方公共団体に対し、その利益を受ける限度において、その市街地再開発事業に要する費用の一部を負担することを求めることができる。
2 前項の場合において、・・・(略)(都市再開発法第120条)

 

・4 取引主任者証が交付された後第19条の2の規定により登録の移転があつたときは、当該取引主任者証は、その効力を失う。
5 前項に規定する場合において、・・・(略)(宅地建物取引業法第22条の2)

 

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(18) 「・・・(に)係る」

ある語句と他の語句とのつながりを示す場合に、関係代名詞的な用語として使います。
使われるケースに応じて、「・・・に関係がある」、「・・・についての」、「・・・に属する」、「・・・の」などの意味を表します。

 

・届出に係る事項 ・審査請求に係る処分

 

(19) 「しなければならない」、「してはならない」、「することができる」、「するものとする」

「しなければならない」は、一定の行為をなすべき義務(作為義務)を課する場合に使います。
一方、「してはならない」は、一定の行為をしない義務(不作為義務)を課する場合に使います。
「することができる」は、一定の権利、利益、地位、能力、権限などを与える場合に使います。
「するものとする」は、通常は「しなければならない」よりも若干弱いニュアンスの義務付けを表します。一般的な原則や方針を示す規定の述語として使われます。この用例は、行政機関などに一定の拘束を与える場合の規定として多く使われています。

 

・業として公衆浴場を経営しようとする者は、政令の定める手数料を納めて、都道府県知事の許可を受けなければならない。(公衆浴場法第2条第1項)
・弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。(行政手続条例第27条)

 

(20) 「を除くほか」、「のほか」

「を除くほか」は、「を除いて」「を除外して」というような、この語の対象となる事項を排除する意味で使います。
「のほか」は、この用語の対象となる事項を含める場合と、前に掲げるものに加えてという「及び」に近い意味で使われる場合の二つの用法があります。

 

・この法律に規定するものを除く外、財産区の事務に関しては、政令でこれを定める(地方自治法第297条)
・この章に定めるもののほか、会議の組織及び議員その他の職員その他会議に関して必要な事項は、政令で定める。(男女共同参画社会基本法第28条)

 

(21) 「同」

「同」は、同条、同項、同号などのように使います。
ある法文中で最も近い前の場所に表示された条、項、号などの字句を受けて、厳密に同一の対象であることを示す場合に使います。したがって、中間に異なる条、項、号などが挿入されている場合には、それより前に表示された条項、号などを「同」で受けることはできません。

 

(22) 「前条」、「次条」

「前条」は、ある条において、その直前に先行する条を指示する場合に使います。
ある条で、その直前に先行する条のすべてを指示する場合には、指示する条の数が4以上のときは「前各条」とします。ただし、その直前に先行する条の一部でかつ4条以上の条を指示する場合には、「前○条から前条まで」とします。また、指示する条の数が3以下のときは、それぞれ「前3条」、「前2条」や「前条」とします。
「次条」は、ある条において、その直後にある条を指示する場合に使います。ただし、「前3条」、「前2条」や「前各条」に対応する「次3条」、「次2条」や「次各条」の表現はありません。

 

(23) 「から起算して」、「から」

「から起算して」と「から」は、時の起点を示す場合に使います。「から起算して」は初日を算入し、「から」は初日を算入しないときに使います。

 

・この憲法は、公布の日から起算して6箇月を経過した日から、これを施行する。(日本国憲法第100条)
・衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない。(日本国憲法第54条)

 

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