差別用語、不適切用語の言い換え一覧|片手落ち、片親等
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不適正用語の使用に関する原則
不適切な用語「差別用語」「不快用語」
公用文には、「差別用語」「不快用語」を使ってはいけません。
「差別用語」とは今日において差別的意図が認められる用語をいい、「不快用語」とは、元々は差別的意図はないものの、それを間接的に類推させる用語をいいます。
不快用語には、身体の一部を表す語句を用いた常套句の一部、聞いた当事者が嫌悪感を抱くもの、時間の経過によって差別感が伝わるようになったもの、語感から差別的なことを連想させるものなど様々なものがあります。
文章全体として差別的な印象や不快感を与えないようにすることが重要です。
同じ語句を使用しても、前後の文脈や状況によって、不適正用語になるときとならないときがあります。
不適正用語かそうでないか
不適正用語かそうでないかという議論は、時代や地域、個人の主義・主張によっても差があります。
また、その語句がもともとは差別的な意味を持っていたとしても、芸術作品や文学作品などでは常套句として使われ、言い換えることで豊かな表現を損なうこともあります。
しかし、公用文は芸術作品とは異なり、中立的な立場が求められます。
不適正との指摘を受ける可能性のある語句を、あえて使用する必要はありません。
多くの人の目に触れる公用文では、不快な思いをする人がいる可能性がある語句はできるだけ使用しないのがルールです。
とはいえ、言葉じりだけを捉えて、全く違う場面・意味で使用している言葉まで一様に制限するような取扱いは、適切とはいえないでしょう。
その言葉を使うことによって不快な思いをする人がいないかどうかということを、状況や背景を踏まえて実質的に考慮する必要があります。
不適正用語に関する定め
具体的にどの語句が不適正用語に当たるのかということは、常用漢字表などのように統一的なルールを定めたものはなく、時代によって頻繁に変化しています。
次に挙げるのは、現在一般に言われていることの整理ですので、公用文の作成においては、その時代、状況において何が適正なのかを判断する必要があります。
不適正用語について定めたものには、次のものがあります。
ア 障害に関する用語の整理に関する法律(昭和57年法律第66号)
イ 精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律(令和10年法律第110号)
公文書で使用しない用語
出自に関する用語
人の出自に関することは、公用文では必要のない限り言及しません。
「混血児」「ハーフ」「私生児」は用いません。
「私生児」は、法律的には「非嫡出子」という用語があり、マスコミでは「婚外子」という言葉を使用することもありますが、公用文では、法律的な内容で触れる必要がある場合を除いては、どちらも使用しません。
「片親」という言葉も同様で、「母子家庭」又は「父子家庭」を用いる必要がないときは、「一人親家庭」と言い換えます。
例
×混血児 ×ハーフ ×私生児 ×片親 ×家柄 ×血筋 ×血統
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性別に関する用語
男女共同参画社会においては、特に女性に対する差別用語やジェンダー(社会的に作られた性差別)の意識が強い語句は、用いるべきではありません。
「オールドミス」「出戻り」などの差別用語を使用しないのは当然ですが、「女史」「女傑」「才媛」「才女」などの女性を褒める言葉もできるだけ避けます。
これらはもともと女性の活躍が少ない時代の語句で、「女性にしては優秀」というニュアンスが伝わりますので、公用文の中で使用するのは適切でないからです。
「美人」「美女」など美醜に関する語句も、風土に関する記述を除いて用いません。
また、「女性議員」「女医」「女流」なども、あえて女性であることを説明する必要がないときは使用しません。
「女性はこう」「男性はこう」のように男女の性格や性質を断定的に言うのは、ジェンダーそのものであり、避けるようにします。
「女性(男性)には、○○な人が多い」というのも、同様に避けるべきです。
なお、一般に「婦人」という言葉は用いない方向にあり、従来の「婦人警察官」は「女性警察官」と呼びます。
さらに、特に職業の呼び名で、男性名詞や女性名詞は、できるだけ用いないこととされています。
「内縁」「事実婚」など、婚姻に関する語句にも、使い方に注意が必要なものが多いです。
近年、異性愛以外の制施行を持つ者や性自認が付与された性別と異なる者などを揶揄する表現も、差別であると考えられるようになってきました。
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)等に対して、正しい知識を持つことが求められています。
例
×未亡人 ×男らしい ×女らしい
×キーマン→○キーパーソン
×スチュワーデス→○キャビンアテンダント(客室乗務員)
×入籍→○婚姻、結婚
×連れ子→○夫(妻)の子
障害・病気に関する用語
身体の一部を表す語句
かつて、「めくら判」や「片手落ち」という言葉が問題になったことがありました。
「めくら」は明かな差別用語で、それを用いた「めくら判」という語句は使うべきではありません。
「片手落ち」については、元々の差別的意図はないとする意見もありますが、読み手に不快感を与える可能性があるので使うべきではありません。「つんぼ桟橋」「片肺飛行」も同様です。
差別用語から派生して別の意味を持つようになった語句についても、公用文では使用しません。
また、「チビ」などのように、身体的特徴をやゆする言葉も、差別用語となるので公用文では使用しません。
公用文においては、身体の一部を表わす語句を用いた常套句に特に気を付ける必要があります。
身体の一部を表わす語句とマイナスイメージの語句が合わさってできた常套句は用いるべきではありません(例:足+切り)。
とはいえ、「腕が上がる」「目に付く」など、身体の一部を表す語句を用いた常套句は無数に存在し、これらが全て不快用語でないことはいうまでもありません。
常套句の言い換え一覧
×足切り→○二段階選抜
×舌足らず→○説明不足
×手短に→○簡潔に
障害や病気についての語句
障害に関して、「めくら」「つんぼ」といった明らかな差別用語は、最近はほとんど使われなくなりましたが、当然、公用文で使用しません。
現在、心身障害者については、「目の不自由な人」「耳の不自由な人」「足の不自由な人」という言い方が定着してきています。
法律用語では「視覚障害者」「聴覚障害者」「肢体不自由者」といいます。
また、「障害者」は法律用ですが、国会の委員会決議で「害」という言葉自体に否定的なニュアンスがあり人に対して用いるべきではないとして見直しが求められた結果、自治体によっては既に「障がい」と表記しているところもあります。
「障碍者」の表記を用いるため、「常用漢字表」に「碍」の字を追加するよう検討もされています。
その他、病気については、「不治の病」「植物人間」といった言葉は使用しません。
また、内的障害を「組織のがん」、抵抗があることを「アレルギーがある」など病気を比喩に用いることも絶対に避けます。
「障害・病気に関する語句」等の言い換え一覧
×「不具」→ ○「身体の障害」など
×「廃疾」→ ○「障害」など
×「めくら」「盲人」 → ○「目の不自由な人」など
×「つんぼ」→ ○「耳の不自由な人」など
×「おし」→ ○「言葉の不自由な人」など
×「ちんば」「びっこ」→ ○「足の不自由な」など
×「どもり」「吃音」→ ○「発音の不自由な」など
×「白痴者」「精神薄弱者」「知恵遅れ」→ ○「知的障害者」
×「精神分裂病」→ ○「統合失調症」
×「痴呆」→ ○「認知症」
×「アル中」→ ○「アルコール依存症」
×「らい病」→ ○「ハンセン病」
×「気違い」→ ○「精神障害者」
×蒙古症→○ダウン症候群
×ノイローゼ→○神経症
×成人病→○生活習慣病
×脳溢血→○脳出血
×文盲率→○識字率
×色盲→○色覚異常
×難病→○厚生労働省指定の特定疾患
×精神病院→○精神(・神経)科病院
×老人、お年寄り→高齢者
×老化→○加齢 ×ぎっちょ→左利き
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職業に関する用語
最近、男女共同参画社会を推進するため、従来女性名詞で用いられていた国家資格の呼び名が、次々と法律改正されました。
これにより、「看護婦」「保母」などが、それぞれ「看護師」「保育士」などとなりました。
「作業員」「労働者」などは使えますが、「労務者」は使えません。「人夫」「土方」も使えません。
また、職業ではありませんが、「ホームレス」という言葉もやや揺れており、最近は「路上生活者」という言葉が用いられます。
例
×「あんま」→ ○「マッサージ師」
×「産婆」→ ○「助産師」
×「百姓」→ ○「農業従事者」
×「土方」「人夫」「労務者」→ ○「作業員」「労働者」
×「床屋」→ ○「理髪店」
×「興信所」→ ○「民間調査機関」
×「サラ金」→ ○「消費者金融」
×保健婦→○保健師
×レントゲン技師→○診療放射線技師
×獣医→○獣医師
×出稼ぎ→○季節労働者
×共稼ぎ→○共働き
×土建屋→○建設業者
×芸人→○芸能人
国籍、民族、人種、地域に関する用語
まず、「外人」という言葉は公用文では使えません。
「在住外国人」という用語も、「外国籍住民」又は「外国人住民」と呼ぶのが適当とされています。
また、「黒人」「白人」などは、公用文であえて強調する必要がない文脈で使用すると差別になりえます。
さらに、言葉の問題ではありませんが、リーフレット等にイラストを活用する場合などでも、外国人の肌に対する配慮が必要です。
「後進国」というのは、従来は「発展途上国」と言い換えることとされていましたが、現在では「開発途上国」の方が良いとされています。
また、「帰化」という言葉は法律用語ではありますが、元は朝廷への帰属を意味する言葉であったことから、「国籍取得」の方が望ましいとされています。
「支那」という言葉は、古代の「秦」の変化、英語の「China」と語源を同じくしているので言葉そのものが差別的な意味を持つわけではありませんが、日本の侵略を思い出させるとの配慮から、使わないこととされています。ただし、「東シナ海」などカタカナ表記されているものは用いることができます。
「在日」という語句は、「在日韓国人」のように用いるのは可能ですが、全体を指して「在日の人」と用いるのは避けます。
特定の国や地域の生活水準や文化水準の成熟度をいう「民度」も、誤解されやすい語句なので公用文で用いるのは避けます。
また、日本の先住民族であるアイヌ民族については、「アイヌ」という語句を用いることは問題ありませんが、衆参両院で「北海道等に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認める」と決議されているため、「日本は単独民族から成る」といった表現はしてはいけません。
この種類の不適正用語では特に、語句自体は差別的な意味は持っていなくても、その用語が使われていた背景などから差別用語と言われることがありますので、注意が必要です。
例
×「外人」→ ○「外国人」
×「後進国」→ ○「開発途上国」
×「原住民」→ ○「先住民」「現地人」
×エスキモー→○イヌイット
×「土人」 ×「チョン」 ×「支那人」
その他の不快用語
学校用語では、「登校拒否」という言葉は最近「不登校」と言い換えられています。
「落ちこぼれ」という言葉も最近は用いず、「授業に付いていけない子供たち」などと言い換えています。
子供の敬称「ちゃん」は、原則として就学前の乳幼児のみに用います。
「君」は男子児童には使えますが、近年は男子にも女子にも「さん」を用いる学校が増えています。
社会的な用語では、「クビ」「首切り」は用いず、「解雇」を用います。
「企業戦士」「青田買い」も公用文では用いません。
また、「ホームレスが野放し」や「役人上がりの議員」など、人に対して「野放し」や「○○上がり」は差別的になるので用いません。
その他、特殊な世界の隠語なども、公用文で使用するのは適切ではありません。
例
×滑り止め→併願
×父兄会→保護者会
×鍵っ子→留守家庭児童
×特殊学級→特別支援学級
×坊主刈り→丸刈り
×チビ ×デブ ×気違い
×○○狂 ×○○マニア
×イカサマ ×いちゃもん
×ごね得 ×しらみつぶし
×尻ぬぐい ×猫ババ
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