不快感を生じさせるような「不適正用語」は公文書では使ってはいけない

不快感を生じさせるような「不適正用語」は公文書では使ってはいけない

不適正用語の使用に関する原則

(1) 公用文における不適正用語の不使用
公用文には、相手に差別的な印象を与えたり、不快感を生じさせるような不適正用語は使ってはいけません。
また、文章全体として差別的な印象や不快感を与えないようにすることが重要です。
同じ語句を使用しても、前後の文脈や状況によって、不適正用語になるときとならないときがあります。

 

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(2) 不適正用語かそうでないか
不適正用語かそうでないかという議論は、時代や地域、個人の主義・主張によっても差があります。
また、その語句がもともとは差別的な意味を持っていたとしても、芸術作品や文学作品などでは常套句として使われ、言い換えることで豊かな表現を損なうこともあります。

 

しかし、公用文は芸術作品とは異なり、中立的な立場が求められます。
不適正との指摘を受ける可能性のある語句を、あえて使用する必要はありません。
多くの人の目に触れる公用文では、不快な思いをする人がいる可能性がある語句はできるだけ使用しないのがルールです。

 

けれども、言葉じりだけを捉えて、全く違う場面・意味で使用している言葉まで一様に制限するような取扱いは、適切とはいえないでしょう。
その言葉を使うことによって不快な思いをする人がいないかどうかということを、状況や背景を踏まえて実質的に考慮する必要があります。

 

(3) 不適正用語に関する定め
具体的にどの語句が不適正用語に当たるのかということは、常用漢字表などのように統一的なルールを定めたものはなく、時代によって頻繁に変化しています。
次に挙げるのは、現在一般に言われていることの整理ですので、公用文の作成においては、その時代、状況において何が適正なのかを判断する必要があります。
不適正用語について定めたものには、次のものがあります。

 

ア 障害に関する用語の整理に関する法律(昭和57年法律第66号)
イ 精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律(平成10年法律第110号)

 

出生に関する用語

人の出生に関することは、公用文では必要のない限り言及しません。
「私生児」は、法律的には「非嫡出子」、マスコミでは「婚外子」という言葉を使用することもありますが、公用文では、法律的な内容で触れる必要がある場合を除いては、どちらも使用しません。

 

例:× 混血児 × ハーフ × 私生児 × 片親 × 家柄

 

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女性に関する用語

男女共同参画社会においては、特に女性に対する差別用語やジェンダー(社会的性差)の意識が強い語句は、用いるべきではありません。
「オールドミス」「出戻り」などの差別用語を使用しないのは当然ですが、「女史」「才媛」「才女」などの女性をほめる言葉であっても注意が必要です。
これらはもともと女性の活躍が少ない時代の語句で、「女性にしては優秀」というニュアンスが伝わりますので、公用文の中で使用するのは適切ではありません。
また、差別を意味するものでなくても、「女性議員」「女医」のような語句は、あえて女性であることを強調する必要がない場合は使用しません。
職業の呼び名でも、男性名詞や女性名詞はできるだけ用いないものとされています。
そのほか、一般に「婦人」という言葉は用いない方向にあります。

 

例:
×「未亡人」 ×「男らしい」「女らしい」 ×「御主人」
×「キーマン」→ ○「キーパーソン」

 

障害に関する用語

(1) 心身障害や病気についての用語
心身障害者については、「目の不自由な人」「足の不自由な人」という言い方が定着してきています。
「めくら」、「つんぼ」といった明らかな差別用語は、最近はほとんど使われなくなりましたが、当然、公用文で使用しません。

 

また、そもそも「障害」の「害」という言葉自体に否定的なニュアンスがあるため、「障がい」と平仮名で表記すべきであるとの意見もあり、「障がい」と表記する自治体もあります。
病気については、「難病」や「不治の病」といった言葉は使用しません。
また、最近では「精神分裂病」は「統合失調症」と、「痴呆」は「認知症」と改められましたので注意が必要です。

 

例:
×「不具」→ ○「身体の障害」など
×「廃疾」→ ○「障害」など
×「めくら」「盲人」 → ○「目の不自由な人」など
×「つんぼ」→ ○「耳の不自由な人」など
×「おし」→ ○「言葉の不自由な人」など
×「ちんば」「びっこ」→ ○「足の不自由な」など
×「どもり」「吃音」→ ○「発音の不自由な」など
×「白痴者」「精神薄弱者」「知恵遅れ」→ ○「知的障害者」
×「精神分裂病」→ ○「統合失調症」
×「痴呆」→ ○「認知症」
×「アル中」→ ○「アルコール依存症」
×「らい病」→ ○「ハンセン病」
×「気違い」→ ○「精神障害者」

 

(2) 身体の一部を表す語句
「めくら判」「片手落ち」など、差別用語から派生して別の意味を持つようになった語句についても、公用文では使用しません。
これらについては、差別的な意図はない常套句として使われることがあるため、その是非について議論はありますが、公用文ではあえて使用する必要はありません。
また、「チビ」などのように、身体的特徴をやゆする言葉も、差別用語となるので公用文では使用しません。

 

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職業に関する用語

最近、男女共同参画社会を推進するため、従来女性名詞で用いられていた国家資格の呼び名が、次々と法律改正されました。
これにより、「看護婦」「保母」などが、それぞれ「看護師」「保育士」などとなりました。
また、職業ではありませんが、「ホームレス」という言葉もやや揺れており、最近は「路上生活者」という言葉が用いられます。

 

例:
×「あんま」→ ○「マッサージ師」
×「産婆」→ ○「助産師」
×「百姓」→ ○「農業従事者」
×「土方」「人夫」「労務者」→ ○「作業員」「労働者」
×「床屋」→ ○「理髪店」
×「興信所」→ ○「民間調査機関」
×「サラ金」→ ○「消費者金融」

 

 

国籍、民族、人種、地域に関する用語

まず、「外人」という言葉は公用文に用いてはなりません。
また、「黒人」「白人」などは、公用文であえて強調する必要がある場合は考えづらく、使用は不適切です。

 

「後進国」というのは、従来は「発展途上国」と言い換えることとされていましたが、現在では「開発途上国」の方が良いとされています。
また、「帰化」という言葉は法律用語ではありますが、元は朝廷への帰属を意味する言葉であったことから、「国籍取得」の方が望ましいと言われています。
「支那」という言葉は、本来は英語の「China」と語源を同じくしているので言葉そのものが差別的な意味を持つわけではありませんが、日本が侵略した時代に使用されていた言葉であるとの配慮から、使わないこととされています。
この種類の不適正用語では特に、語句自体は差別的な意味は持っていなくても、その用語が使われていた背景などから差別用語と言われることがありますので、注意が必要です。

 

例:
×「外人」→ ○「外国人」
×「後進国」→ ○「開発途上国」
×「原住民」→ ○「先住民」「現地人」
×「土人」 ×「チョン」 ×「支那人」

 

 

その他の不快用語

学校用語では、「登校拒否」という言葉は最近「不登校」と言い換えられています。「落ちこぼれ」
という言葉も最近は用いません。
その他、特殊な世界の隠語なども、公用文で使用するのは適切ではありません。

 

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