「など、等」「ため、為」「さらに、更に」の使い分け方|公用文の漢字とひらがな
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公用文は、どんな漢字を用いてもいいということになっていません。
また、漢字で書いても、平仮名で書いても大丈夫ということもありません。一定のルールがあります。
「など、等」「ため、為」「さらに、更に」の使い分け方
例えば、文章を作るとき、「など、等」「ため、為」「さらに、更に」というように、漢字を使うべきかひらがなを使うべきか迷うことがあると思います。
それぞれ詳しくは後述しますが、結論からいうと、まず「等」については、「等」を「など」と読ませたいときにはひらがなで書きます。
一方、「等」を「とう」と読むときには、熟語の一部であると考えられているので漢字で書きます。
「~のため」「~の為」については、公用文の助詞・助動詞はひらがなで表記する原則があるため、必ず「ため」を使用します。「為」は誤りです。
「さらに」「更に」については、公用文の接続詞はひらがなで表記する原則があるため、後ろに続く文全体にかかる場合は「さらに」を使用します。
一方、副詞は漢字で表記する原則があるため、一つの単語を装飾する場合は「更に」と使い分けます。
「さらに」と「更に」の使い分け例
さらに、住民からの意見を聴取する必要があるだろう。(接続詞)
住民からの意見を、更に聴取する必要があるだろう。(副詞)
このように、公用文を書くときに、漢字で書くべきなのか、ひらがなで書くべきなのかの判断の基準になるのが以下の2つです(文化庁にリンクされます)。
① 「常用漢字表」(平成22年11月30日内閣告示第2号)
② 「公用文における漢字使用等について」(平成22年11月30日内閣訓令第1号)
「常用漢字表」は、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」であり、「科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない」ものとされています。
ここには「目安」とありますが、公用文においては、「常用漢字表」に従うことが「原則」なっています。
②「公用文における漢字使用等について」は、その第1の基準に「公用文における漢字使用は常用漢字によるものとする」とはっきりと明言をしているため、公用文では漢字は常用漢字表に掲げられているものを用います。
ただし、常用漢字表に掲げられている漢字でも、読みが掲げられていない語句には用いることができません。
常用漢字表が示す「音訓」も、厳密な原則となっています。
ちなみに、マスコミでは「新聞用語懇談会」により漢字表記について統一の基準を設けています。
この中では、「常用漢字になっているがマスコミでは使用しないとしている漢字」や、「常用漢字ではないが読み仮名なしで使用とすることになっている漢字」などもあります。
例えば「きょう」「きのう」「あす」は、マスコミでは平仮名表記ですが、公用文では「今日」「昨日」「明日」の表記が認められています。
このようにマスコミで使用する漢字は必ずしも常用漢字とは一致しませんので、注意が必要です。
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常用漢字表による漢字使用の基本原則
常用漢字表による漢字使用の基本原則は、次のとおりです。
パソコン等を使用して文書を作成する場合、読み書きが困難な漢字でも容易に変換することができるため、常用漢字でない漢字を使用してしまう間違いが起きやすいので注意が必要です。
(1) 漢字は、常用漢字表に掲げられているものを用います。ただし、常用漢字表に掲げられている漢字でも、読みが掲げられていない語句には用いることができません。
次のような用語は、常用漢字表に読みがないので、ひらがなで表記します。
あらかじめ(×予め) いまだ(×未だ)
おおむね(×概ね) こたえる(×応える)
おのずから(×自ずから)
とどめる(×留める、止める)
はぐくむ(×育む) ゆだねる(×委ねる)
あえて(×敢えて) たつ(×経つ)
なす(×為す) のっとる(×則る)
はかどる(×捗る) もって(×以て)
よる(×依る、拠る) よろしく(×宜しく)
(2) 常用漢字表に掲げられている漢字を用いて表記できる語句は、漢字を用いて表記しなければなりません。
(3) 漢字が常用漢字表に掲げられていない場合は、ひらがなで表記します。この場合、ひらがなに傍点(文字の横に付ける「・」又は「、」のこと)を打ってはなりません。
その他の漢字ルール
固有名詞の場合
地名・人名などの固有名詞には、公用文の漢字使用の原則に拘束されません。
人名について漢字を用いる場合は、人名用漢字別紙に定められている、いわゆる「人名漢字表」を用いることになっていて、そもそも常用漢字表に拘束されません。
固有名詞については常用漢字表の適用対象外であり、氏名については本人の意思を尊重したものを、地名について通用しているものを用います。
ただし、その漢字の字体と常用漢字等の字体との違いが微細であるときは、関係者の了承を得たうえで常用漢字等の代替漢字を用いることも考慮すべきです。
動植物名の場合
動植物名については、常用漢字で書けるものは漢字で、そうでないものは平仮名又はカタカナで書くのが原則です。
例
犬 牛 桑 桜
ねずみ(ネズミ) らくだ(ラクダ)
すすき(ススキ)
学術用語については、動植物名を全てカタカナで書いたり、化学物質名の一部をカタカナで書いたり、星座名を平仮名で書いたりすることができます。
例
ニホンザル マツタケ
タンパク質 リン酸
おおくま座
専門用語の場合
専門用語・特殊用語を書き表す場合など、特殊な漢字使用を必要とする場合も、常用漢字表に拘束されません。
その理由として、専門用語・特殊用語は他の語句に言い換えられないことが挙げられます。また、平仮名で書くとかえって分かりにくくなるという事情もあります。
専門用語や特殊用語を書き表すとき、仮名で書くと意味が分かりづらいときなど、どうしても漢字を用いる必要がある場合は、漢字を用いて記載し、振り仮名(ルビ)をひらがなで付けるのが一般的なルールです。
最近では振り仮名は文章全体または章ごとの初出の箇所のみに付ければ足りる扱いとなっています。
また、国語分科会報告書では、読み仮名を括弧が書きで示すことも認めています(熟語の場合は一部ではなく全体を読み仮名示します)。
なお、法令に限っては振り仮名の促音(っ)と拗音(ゃ・ゅ・ょ)は、大書きします。
常用漢字表にない漢字を使う場合は、「人名用漢字別表」の字体のほか、「表外漢字字体表」(平成12年12月8日国語審議会答申)の印刷標準字体を用います。
振り仮名(ルビ)をひらがなで付けた例
ひそ が きんこ かし
砒素、蛾、禁錮、瑕疵
2字熟語で1字だけ常用漢字である場合
2字熟語で1字だけ常用漢字である場合、単語の一部だけを仮名に改める方法はできるだけ避けます。(例1)
例1
斡旋→あっせん 煉瓦→れんが
ただし、一部に漢字を用いた方が分かりやすい場合はこの限りではないとされています。(例2)
例2
堰堤→えん堤 救恤→救じゅつ
改竄→改ざん 口腔→口こう
橋梁→橋りょう 屎尿→し尿
出捐→出えん 塵肺→しん肺
溜池→ため池 澱粉→でん粉
顛末→てん末 屠畜→と畜
煤煙→ばい煙 排泄→排せつ
封緘→封かん 僻地→へき地
烙印→らく印 漏洩→漏えい
また国語分科会報告書では、上記例1のような語句に次のものを上げるとともに、上記例2のような語句は、一部に振り仮名を付けても、一部を平仮名で書いてもよいこととしています。
例
億劫→おっくう 痙攣→けいれん
颯爽→さっそう 杜撰→ずさん
石鹸→せっけん 覿面→てき面
咄嗟→とっさ
ざん
改竄→改竄 or 改ざん
へい
招聘→招聘 or 招へい
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当て字と熟字訓
常用漢字表の「付表」には、当て字と熟字訓の語句が挙げられています。
当て字とは、意味に関係なく漢字の音を当てた語句のことです。
熟字訓とは、漢字の音に関係なく熟語の意味で読ませる語句のことです。
いずれも公用文では「付表」に掲げられた語句に限り使用することができます。
漢字を使う例
一日(ついたち) 二日(ふつか)
今日(きょう) 昨日(きのう)
明日(あす) 師走(しわす)
弥生(やよい) 五月(さつき)
叔父・伯父(おじ)
叔母・伯母(おば)
笑顔(えがお) 大人(おとな)
風邪(かぜ) 景色(けしき)
上手(じょうず) 白髪(しらが)
梅雨(つゆ) 時計(とけい)
友達(ともだち) 下手(へた)
部屋(へや) 土産(みやげ)
ひらがなを使う例
おととい(×一昨日) あさって(×明後日)
あじさい(×紫陽花) こすもす(×秋桜)
おいしい(×美味しい)
すばらしい(×素晴らしい)
ふさわしい(×相応しい)
ほほえむ(×微笑む)
傍点は使用しない
元々は漢字の熟語でも、常用漢字表の制限から平仮名で表記するものについては、傍点を打ってはいけないこととされています。
傍点とは、文字の横に付ける「・」又は「、」のことです。
古い法令や小説などでは傍点を打ったものがありますが、公用文では使用しません。
専門用語や特殊用語などで、どうしても漢字を用いる必要がある場合は、漢字で記載し常用漢字以外の漢字に振り仮名(ルビ)を平仮名で付けます。
簡易な表現ができる場合
広く一般に向けた広報等においては、分かりやすさや読み手への配慮を優先し、常用漢字であっても振り仮名を付けたり、平仮名で書くことができます。
その範囲については、特に限定はありません。
例
語彙→語い 進捗→進ちょく
若しくは→もしくは 飽くまで→あくまで
常用漢字で書けない語句の言い換え
常用漢字で書けない語句は、平仮名で書くほかに、音訓が同じほかの語句に言い換えたり、別の分かりやすい語句に言い換えたりすることを考慮します。
安易に平仮名で書き換えた場合、文中で仮名の中に埋もれてしまってかえって分かりにくくなることもあり得るからです。
国語分科会報告書では、語句の言い換えについて以下のように例示しています。
例 同じ訓を持つ語句に言い換えるもの
活かす→生かす 嚇す・威す→脅す
伐る→切る 口惜しい→悔しい
歎く→嘆く 拓く→開く
解る・判る→分かる
想い→思い 哀しい→悲しい
真に→誠に
例 同じ音を持つ語句に言い換えるもの
恰好→格好 義捐金→義援金
煽動→扇動 日蝕→日食
例 他の常用漢字を用いた語句に言い換えるもの
軋轢→摩擦 竣工→落成・完工
捺印→押印 誹謗→中傷・悪口
逼迫→切迫 論駁→反論・抗論
例 他の分かりやすい語句に言い換えるもの
安堵する→安心する・ほっとする
狭隘な→狭い 豪奢な→豪華な
誤謬→誤り 塵埃→ほこり
斟酌→遠慮・手加減
脆弱な→弱い・もろい
庇護する→かばう・守る
畢竟→つまるところ
酩酊する→酔う
凌駕する→しのぐ・上回る
漏洩する→漏らす
また、以下の常用漢字にはカッコ書きの読みはないので、公用文では使用できません。
例 カッコ書きの読みをしない漢字
哀(×かなしい) 為(×ため)
悦(×よろこぶ) 活(×いかす)
敢(×あえて) 宜(×よろしく)
顕(×あらわれる) 醒(×さめる)
総(×すべて) 即(×すなわち)
戴(×いただく) 拓(×ひらく)
弾(×はじく) 停(×とまる)
途(×みち) 到(×いたる)
敗(×まける) 撲(×なぐる)
諭(×さとす) 愉(×たのしむ)
誉(×ほめる) 留(×とめる)
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常用漢字にあっても平仮名で書く語句
次の語は、常用漢字表にあっても、仮名で書くことになっています。
おそれ(×虞 ×恐れ) かつ(×且つ)
したがって(接続詞)(×従って)
ただし(×但し) ほか(×外)
また(×又) よる(×因る)
いる(×居る)
意味によって漢字とひらがなを使い分ける語句
公用文では、一定の品詞等を除いて「常用漢字表」の漢字で書けるものは漢字で書くのが原則です。
語句の意味によって漢字とひらがなを使い分けることは基本的にありません。
しかし実務上は、下記の用語についてはその意味によって、漢字とひらがな両方を使い分けているのが実情です。
「おそれ」の使い分け方
おそれ・・・「懸念」という意味で用いるとき
恐れ・・・「恐怖」という意味で用いるとき
「いただく」の使い分け方
いただく・・・「~していただく」のような用法のとき
頂く・・・「物をもらう」という意味で用いるとき
※「おそれ、とおり、いただく」の使い分けの詳細は、「おそれ、恐れ」「とおり、通り」「いただく、頂く」の使い分け方|公用文漢字もご参照ください。
「ある、有、在」の使い分け方
「ある」については、「在る」を用いて「存在する」という意味を強調したり、「有る」を用いて「所有する」という意味を強調したりする表記の仕方は、現行の常用漢字表も認めています。
とはいえ、公用文では、これら両者を使い分ける実益が無いという慣例から、「ある」と平仮名で統一して書いている市役所等も多いのが実情です。
ある、ない・・・「問題がある」のような抽象的なものの有無の意味で用いるとき
在る、無い・・・「ビルが東京に在る」のような存在・不存在の意味で用いるとき
有る・・・「権利が有る」のような所有の意味で用いるとき
「ない、無い」の使い分け方
「ない」については、助動詞の場合は「行かない」というように平仮名で書きます。
また、「お金がない」というように、形容詞の「ない」を述語として用いるときも平仮名で用いるのが原則です。
ただし述語でなく名詞を修飾するときは「無い物ねだり」、動詞のときは「無くする」と漢字を用います。
ない・・・「行かない」(助動詞)、「欠点がない」(形容詞述語)
無い・・・「無い物ねだり」(名詞修飾)、「無くする」(動詞)
「なる、成る」の使い分け方
「なる」は平仮名で書くことが多いですが、「出来上がる」「成功する」「構成される」というような意味で意味で用いるときは漢字で書きます。
なる・・・「合計すると10,000円になる」のような結果の意味で用いるとき
成る・・・「日本は、本州とその他の島から成る」(構成)、「体育館が新装成る」(出来)、「全勝優勝成らず」(成功)
「いう」の使い分け方
いう・・・「~という」「~をいう」のような動作意外の意味で用いるとき
言う・・・「物を言う」のような動作の意味で用いるとき
※「とはいえ」「とはいうものの」も同様
「いく」の使い分け方
いく・・・「うまくいく」「納得がいく」のような動作意外の意味で用いるとき
行く・・・「東京へ行く」のような動作の意味で用いるとき
「いる」の使い分け方
「いる」については、「居る」を用いて「存在する」という意味を強調する表記の仕方は、現行の常用漢字表も認めています。
とはいえ、公用文では、これら両者を使い分ける実益が無いという慣例から、「いる」と平仮名で統一して書いている市役所等も多いのが実情です。
いる・・・「仕事をしている」(助動詞)、「ここに関係者がいる」(一般的な使い方)
居る・・・「部屋に居る」「故郷に居る」(特に存在を強調したいとき)
「もつ」の使い分け方
もつ・・・「身体がもたない」「肩をもつ」のような耐久や支持の意味で用いるとき
持つ・・・「勇気をもつ」のような感情を含めた保持の意味で用いるとき
「とる」の使い分け方
とる・・・「手続をとる」のような取得以外の意味で用いるとき
取る・・・「免許を取る」のような取得の意味で用いるとき
「よく」の使い分け方
よく・・・「よく出張する」のような程度や頻度の意味で用いるとき
良く・・・「良くなった」のような程度や頻度以外の意味で用いるとき
「あと」の使い分け方
あと・・・「あと5年」のような残余の意味で用いるとき
後・・・「後から来ます」のような後刻や後方の意味で用いるとき
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「接続詞」は原則ひらがな表記
接続詞はひらがなで書くのが原則です。
ただし、「又は、若しくは、及び、並びに」の4語だけは例外で漢字表記します。
また、「はじめに」「おわりに」は原則通りひらがな表記ですが、「最初に」「最後に」「一方」「以上」のような熟語を用いる接続詞は漢字で表記します。
例
おって(×追って) さらに(×更に)
したがって(×従って) ただし(×但し)
なお(×尚) また(×又) ゆえに(×故に)
あるいは(×或いは) かつ(×且つ)
くわえて(×加えて) ついては(×付いては)
つぎに(×次に) ところが(×所が)
また(×又) ゆえに(×故に)
上記のように、接続詞は原則平仮名で書きます。
特に間違いが多いのが「したがって」「さらに」「また」「ゆえに」で、漢字で書かないよう注意します。
「さらに」は副詞の場合は「更に」と漢字で書きます。
「したがって」も、動詞の「従う」の活用形であれば「~に従って」と書くように、品詞によって表記の仕方が変わってくる語は他にも多数あるので注意します。
「ゆえに」も、「故あって海外に行くことになった」などと、「故」本来の理由・原因・訳という意味で名詞として用いるときは漢字で書きますが、接続詞の「ゆえに」は本来の意味を失っているため漢字では書けません。「ところが」「ところで」なども「場所」という本来の意味を失っているため、漢字では書けません。
「副詞」は漢字表記
「副詞」は漢字で表記するのが原則です。
「副詞」とは、動詞、形容詞及び形容動詞を修飾する語句をいいます。
「接続詞」との区別がつきにくいのですが、「接続詞」は文と文との意味の繋がりを説明する語句をいい、通常文頭に置かれます。
その言葉が以下の文全体に掛かっていれば「接続詞」、特定の用言のみを修飾していれば「副詞」です。
ちなみに「仮に」「例えば」「特に」については、文頭に置かれても副詞として常に漢字で書くこととされています。
これらは副詞扱いのため、文頭にあっても原則としてその後に「、」は打ちません。
「自」は「自ら(みずから)」は漢字、「おのずから」はひらがな表記です。
「すぐ」「すなわち」「まず」も、「直」「即」「先」に読みがないため、ひらがな表記になります。
「さらに」と「更に」の使い分け
「さらに」(接続詞)・・・【例文】さらに、財政状況についても検討することが必要である。
「更に」(副詞)・・・【例文】 財政状況について、更に検討することが必要である。
※「さらに」「更に」と似た「さらなる」「更なる」という表現があります。
しかし、現代の公用文では、言文一致の原則により、文語的表現は使用せず、口語的表現を用います。
「さらなる」「更なる」は文語的表現のため基本的に用いず、「一層の」など口語的表現に言い換えるようにします。
「ごとき」「ごとく」も散見される表現ですが、それぞれ「ように」「ような」と口語体にして言い換えます。
「あわせて」と「併せて」の使い分け
「あわせて」(接続詞)・・・【例文】あわせて、住民の意向調査を行うべきである。
「併せて」(副詞)・・・【例文】住民の意向調査を併せて行うべきである。
「おって」と「追って」の使い分け
「おって」(接続詞)・・・【例文】おって、集会の場所は後日お知らせします
「追って」(副詞)・・・【例文】集会の場所は、追ってお知らせします
漢字で表記する副詞の例
明るく 飽くまで 余り 至って 大いに 恐らく 自ら
概して 必ず 必ずしも 辛うじて 極めて 殊に
更に 去る 実に 少なくとも 少し 既に 全て 速やかに 切に
大して 絶えず 互いに 直ちに 例えば 次いで 務めて 常に 特に 突然
初めて 果たして 甚だ 再び
全く 無論 最も 専ら
僅か 割に 無論
公用文で用いる副詞は、ほぼ漢字で書きます。
「更に」は副詞の場合は漢字ですが、接続詞で用いる場合は「さらに」と平仮名になります。
また「全て」は、旧常用漢字表では「すべて」と平仮名で書くのが原則でしたが、現行の常用漢字表で「全」に「すべて」という字訓が追加されたため漢字で書くことになりました。
ただし、次の副詞は例外として平仮名で書きます。
ひらがなで表記する副詞の例
かなり(×可成り) ふと(×不図)
やはり(×矢張り) よほど(×余程)
※「初めて」「始めて」の使い分け
「はじめて」は、ひらがなで書けるのがいいですが、「副詞は漢字表記ルール」から、「初めて」か「始めて」か決めて使い分ける必要があります。
上記の常用漢字表から、公用文においては「始」と「初」は以下のように使い分けます。
1 「はじめて」という副詞には、特に「初めて」が掲げられているので「初」を用いる。
2 「始める」という動詞はあるが「初める」という動詞はないので、動詞には必ず「始」を用いる。
3 名詞には「初め」も「始め」も掲げられているので以下のように使い分ける。
・「初め」は時間的な始まりに用いる。例:年の初め
・「始め」は物事の始まりに用いる。例:仕事始め
「連体詞」は漢字表記
連体詞も原則として漢字で表記します。
「連体詞」とは、名詞、代名詞(体言)を修飾する言葉のうち活用のないものをいいます。
活用のあるものは、「形容詞」「形容動詞」です。
「形容詞」とは、「美しい」や「大きい」など、活用があり、単独で述語になることができる語句をいいます。
「副詞」と「連体詞」は、民間ではひらがな書きがルールとされていることも多いです。
そのため「余りに」「既に」「特に」「飽くまで」「大変」「無論」などがひらがなになっている例も多いですが、公用文では漢字で表記します。
例
明くる(日) 大きな(人) 来る(日)
去る(日) 小さな(人) 我が(国)
※「大きな」「小さな」は形容詞と思われがちですが、形容詞では「大きい人」「小さい人」となります
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「助詞」「助動詞」等はひらがな表記する
助詞及び助動詞並びにそれらと類似した語句は、原則としてひらがなで表記します。
具体的には、独立した意味を持たず、単語として自立できない附属語として、助詞、助動詞、補助動詞、接尾辞、形式名詞及び指示代名詞が該当します。
助詞の例
~は ~が ~ぐらい(×位)
~など(「等」は「など」とは読まない。)
~のほど(×程) ~ほど(×程)
~まで(×迄)
~ごとに(×毎) ~とともに(×共に)
~において(×於いて)
~にかかわらず(×拘わらず)
助動詞の例
~すること(×事) ~ない(×無い)
※~にすぎない(×過ぎない)
~のため(×為) ~できる(×出来る)
~してください(×下さい)
~してほしい(×欲しい)
~のようだ(×様だ)
~しれない(×知れない)
~してかまわない(構わない)
※「にすぎない」は、いくつかの品詞が連なった語句です。
格助詞「に」に、「過ぎる」の未然形「過ぎ」、助動詞の「ない」が連なっています。
この「にすぎない」は、「~以上のものではない、ただ~だけだ」という意味で用いられ、本来の「過ぎる」の意味を失っているため、やはり平仮名で書くことになります。
間違って「に過ぎない」と書いてしまいがちですが、「にすぎない」は全体で一つの慣用句とみなされ、公用文では常に平仮名で書くことに注意します。
例
調査だけにすぎない。単なる言い逃れにすぎない
助動詞とは、上記の「ない」「ようだ」のように、常に他の語の後に付いて用いられる語のうち、活用する語であって話し手の判断などを表現するものをいいます。
助詞とは上記の例の「ぐらい」「ほど」のように、常に他の語の後に付いて用いられる語のうち、活用しない語であって附属する語に「程度」などの多用な意味を添えたり、文中の主格、目的格などの位置づけを与えたりするものをいいます。
これらの助詞、助動詞は全て平仮名で書きます。
「方法がない様だ」「30歳位」と漢字で書く間違いが多いので特に注意が必要です。
接尾辞の例
~げ(惜しげもなく) ~とも(二人とも)
~たち(君たち) ~ども(私ども)
~ら(僕ら) ~ぶる(もったいぶる)
~ぶり(書きぶり) ~み(有り難み)
~め(少なめ)
指示代名詞の例
これ それ どれ
ここ そこ どこ
人称代名詞の例
俺 彼 誰 何 僕 私 我々
漢字で書ける人称代名詞は漢字で書きます。
これらのうち、「誰」は旧常用漢字表にはなく、現行の常用漢字表で新たに常用漢字表の字とされました。
また「私」は旧常用漢字表では「わたくし」という字訓しかありませんでしたが、現行の常用漢字表でで「わたし」という字訓が追加されました。
ただし次の語句は、漢字で表記するので注意が必要です。
漢字で表記する例
~宛て ~(し)得る
~に係る(かかる) ~に関わる(かかわる)
~付け ~の都度
~の上・中・下(もと) ※~のうちは平仮名
「ください、下さい」の使い分け方
「ください」は、単独の動詞として用いる場合は漢字を使いますが、助動詞として用いる場合はひらがなを用います。
「ください」と「下さい」の使い分け例
資料を提出してください。(助動詞)
資料を下さい。(動詞)
「できる、出来る」の使い分け方
「できる」には、「可能である」「能力がある」「ものが完成する」という意味がありますが、意味に関わらずひらがなで書きます。
ただし「出来高」「良い出来」など名詞として用いるときは漢字を使用します。
「出来上がる」も名詞と動詞の複合語と考えて漢字で表記します。
例
通行ができるようになった。(可能)
あの人は、仕事ができる。(能力)
マンションができた。(完成)
「いたす、致す」の使い分け方
「いたす」は、「致し方ない」は漢字で書きますが、「ご案内いたします」のような敬語表現のときは、補助動詞であり、ひらがなで書きます。
「など、等」の使い分け方
「等」は「など」とは読みませんので、「など」と読ませたいときにはひらがなで書きます。
「等(とう)」と読むときには、熟語の一部であると考えられているので漢字で書きます。
「等」「など」の使い分けについては、「など」の方が柔らかい表現と言えますが、公用文において定まったルールはありません。
ただし、法令では原則として「等」を用います。逆にマスコミでは「等」を用いない傾向にあります。
平仮名の「など」を用いる場合も、ルールは「等」に準じます。
「など」を用いる場合は、接続助詞「や」を同時に用いて「AやBなど」とすることもあります。
「等」や「など」の後には、原則として「、」は打ちません。
例
明日は、出資額、役員の割当てなど重要な事項を協議する。
不必要に「等」を乱用すると、あいまいな印象になり、文章が読みにくくなるとともに、内容が不明確になります。
本当にその箇所に「等」が必要かよく吟味し、できるだけ「等」は使用しないようにします。
国語分科会報告書では、「等」をできるだけ使わないようにするため、次のような「関わる」を用いた言い換え方法も紹介されていますが、常に言い換えができるわけではありません。
例
遺跡の保存・活用等の実施
→遺跡の保存・活用に関わる取組の実施
「ほか、他、外」の使い分け方
「ほか」の字訓を持つ漢字は、「外」と「他」があり、両者は意味が違いますが、「その範囲から外れたところ」の意味で用いられる形式名詞の場合や後に打ち消しの語を伴い、「それ以外に手段・方法がない」という意味で用いられる副助詞の場合は、平仮名で書きます。
例
そのほか。特別の場合を除くほか。思いのほか。車で行くほかない。我慢するほかない。お手上げというほかない。
簡単に言えば、「他」は「ほか」と読ませたいときには基本的にひらがなで表記することになります。
「その他」など「他(た)」と読むときには漢字で書きます。
そのため「その他」は「そのた」としか読めず、「このほか」を「この他」とは書けません。
ちなみに法令では、「法令における漢字使用等について」により、「外・他」は平仮名で統一するのがルールになっています。
法令では、「外・他」を使い分ける実益がなく、次のような言い回しがよく用いられています。
例
第3条に定めるものを除くほか、~
この条例に定めるもののほか、~
公用文も法令に準じるもののため、「そと」「た」と誤読されるおそれがあるような場合は、「ほか」と平仮名で書くほうが適切な場合が多いと言えます。
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「方」と「ほう」の使い分け方
「ほう」は、「~(する)ほうが良い」というような選択の意味の場合は、形式名詞なのでひらがなで表記です。
ただし明確な選択肢がある場合は「A案の方が良い」と漢字で書くこともあります。
一方、「て」が付いた「~て良い。」は誤った表記なので、「~てよい。」も平仮名で書くことに注意します。
「~てよい。」の「よい」は、形容詞ですが「良い、悪い」の「良い」という意味ではなく、「~しても差し支えない」「~しても構わない」という意味の語なので「~て良い。」という表記は誤っていることになります。
例
廃棄してよい。帰ってよい。走ってよい。
その他の間違えやすい助動詞
間違いやすい助動詞の例
正しいもの(×物)と認める
試してみる(×見る) 進んでいく(×行く)
今のところ(×所)は問題ない
連絡してよい(×良い)
~かもしれない(×知れない)※
※「かもしれない」はいくつかの品詞が連なった言葉です。
副助詞「か」に係助詞「も」が付いた「かも」に、動詞の「知れる」の未然形「知れ」、助動詞の「ない」が連なっています。
この「かもしれない」は、「可能性があるが、不確実である」という意味で用いられ、本来の「知る」の意味を失っているため、平仮名で書くことになります。
間違って「かも知れない」と書いてしまいがちですが、「かもしれない」は全体で一つの慣用句とみなされ、公用文では常に平仮名で書くことに注意します。
例
間違いかもしれない。雨が降るかもしれない。なるほどそうかもしれない
補助動詞はひらがな表記
補助動詞とは、動詞の前に接続助詞の「て」や「で」が付いて、「~(し)てください」のような用い方をする一定の動詞をいい、ひらがなで書きます。
前の動詞に補助的な意味を加えるもので、「ある」「いく」「いる」「おく」「くる」「くれる」「しまう」「みせる」「みる」「もらう」「やる」「ゆく」「よい」などがあります。
補助動詞には敬語もあり、「あげる」「いただく」「いらっしゃる」「くださる」「さしあげる」「まいります」もひらがなで表記します。
補助動詞のなかには、「~(し)てもかまわない」のように「ても」が付くもの、「~してみてほしい」のように補助動詞が連続するものもありますが、全てひらがな表記です。
補助動詞の例
~てあげる(本を貸してあげる。)
~ていく(経費が増えていく。)
~いただく(報告していただく。)
~ておく(通知しておく。)
~てください(相談してください。)
~てくる(暑くなっていくる。)
~てしまう(失敗してしまう。)
~てみる(見てみる。)
補助動詞は、もともと動詞である語が本来の意味と自主語である性質を失って、助動詞のように用いられる語句をいいます。
例えば、「~ていただく」「~てください」だと以下のような違いがあります。
例文
(普通の動詞)お土産を頂く。資料を下さい。
(補助動詞)大臣に発言していただくことになっている。質問してください。
動詞の「頂く」「下さい」は、それぞれ謙譲語ですが、「物をもらう」「くれ」などという独立した意味を持っている普通動詞なので漢字で書きます。
一方、「発言していただく」「質問してください」の「いただく」「ください」は、「物をもらう」という意味ではなく、動詞に付いて丁寧さを表す助動詞的な働きをしています。
そこで、本来の意味の普通の動詞と区別するために、また、場合によっては誤読されることを避けるという目的もあって、平仮名で書きます。
補助動詞は、基本的に「て~」「で~」の形で書かれますが、接頭辞が付いて例えば「ご遠慮ください。」というように、「て~」「で~」の形をとらない場合もあります。
この場合の「ください」も補助動詞なので、「ご遠慮下さい」と漢字で書かずに、平仮名で書くことに注意してください。
複合動詞は漢字表記
単独の動詞や複合動詞は、常用漢字で書ける語句は漢字で書きます。
複合動詞とは「取り組む」のように二つの動詞を組み合わせたもので、前の動詞も後の動詞も漢字で書き、「取組み」などの複合動詞の名詞形も漢字で書きます。
また、複合動詞には「見直す」のように前の動詞が1音節のものもあります。
複合動詞は広義では、「近寄る」(形容詞+動詞)や「腰掛ける」(名詞+動詞)のように他の品詞と動詞を組み合わせたものもありますが、全て複合動詞として扱い漢字表記します。
単独の動詞の例
成果を見せる 権利が欲しい
状態が良い 贈り物を下さる
※「連絡してよい。」「相談してください。」という用法では平仮名で書く
複合動詞の例
買い入れる 食べ過ぎる
「共に」と「ともに」の使い分け方
「ともに」は、動詞か名詞に付く場合はひらがなで書きます。ただし、名詞が人の場合は漢字で書くのが慣例です。
副詞の場合は漢字で書きます。
例
申請書を提出するとともに~(動詞に付く場合)
申請書とともに~(名詞に付く場合)
上司と共に~(人に付く場合)
申請書と添付資料を共に提出する。(副詞の場合)
※「とともに」は常に平仮名
公用文では、「とともに」は平仮名で書きます。
前述のとおり副詞の場合は「共に」と漢字で書き、「一緒に」という意味で用いられます。
一方、「とともに」は、名詞と名詞をつなぐ場合は「報告資料とともに検討資料を作成する」というように、本来の「一緒に」という意味ですが、動詞をつなぐ場合には「報告するとともに説明を行う」というように、「同時に」という時間的な意味に変わっています。
こういった事情から、助詞「と」と副詞「ともに」が合体した「とともに」は、常に平仮名で書くことが慣例になっています。
ちなみに、「公用文における漢字使用等について」において、平仮名で書くものとして次の例が挙げられています。
例:説明するとともに意見を聞く。
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「程」と「ほど」の使い分け方
「ほど」は助詞として用いる場合や、助詞に準ずる用い方をする場合はひらがなで書きます。
漢字で書くのは、「程」が完全に独立した名詞として用いられる場合のみです。
「故」も同様で、「故あって」「故なく」は漢字、「~のゆえ」「それゆえ」などはひらがなです。
ちなみに「度」は漢字なので「この度」などと書きますが、「一度」は「いちど」と読まれるので、「一たび」と書きます。
例
・1週間ほどかかる。
・彼ほど、仕事好きの者はいない。
・覚悟の程を見せる。
・程を心得る。
形式名詞は平仮名で書く
形式名詞とは、名詞のうち、本来の意味を失って形式的に用いられ、修飾語がなければ独立した意味を持ち得ないものいいます。例えば、「とおり」で説明すれば次のような違いがあります。
(普通名詞)次の通りを曲がる
(形式名詞)次のとおりである。
名詞の「とおり」は、本来「人通り」「通り道」など用いられ「通り」そのものが一定の独立した意味を持っています。
これは「普通名詞」(実質的意味の名詞)であって、常用漢字であるかぎり、漢字で書くことになります。
しかし、「次のとおりである」の「とおり」は、そもそも「通り」の意味はなく、「次の」などの修飾語がついて初めて意味を成します。
そこで、本来の意味の普通名詞と区別するため、誤読を避けるために平仮名で書くことになっています。
このように本来の意味を失って、他の意味に転じた名詞を「形式名詞」といいますが、公用文では特に多用されます。
形式名詞の例
こと(許可しないことがある。)
ため(病気のため欠席する。)
とおり(次のとおりである。)
とき(事故のときは連絡する。)
ところ(現在のところ差し支えない。)
もの(正しいものを認める)
ゆえ(一部の反対のゆえはかどらない。)
わけ(賛成するわけにはいかない)
※「ため」以外は、普通の名詞の場合は漢字で書く(例:「大変な事が起きた」というような「事態・事件」の意味のとき)
「こと、事」の使い分け方
普通名詞の「事」は、「事象・現象・事態・事件・行為・行事」など、全て「具体的な事柄」を言う場合に漢字で書きます。
これに対し、形式名詞の「こと」は、抽象的な事柄を表す場合、活用する語の連体形に付いて名詞化する場合、文末に添えて約束や間接的な命令を表す場合などに用いられます。
そのため以下のような例で、漢字と平仮名を使い分けます。
例文
・大変な事が起きた。事あるときは。見付かったら事だ。事に当たって。本当の事。(事態・事件)
・そういうことだ。書くことができる。実施することになりました。走らないこと。(形式名詞)
「ため」の使い分け方
「ため」は常に平仮名で書きます。「為」と漢字で書きません。
「とおり」の使い分け方
とおり・・・「次のとおり」のような用法のとき
通り・・・「2通り、3通り」「バス通り」のような用法のとき
「時」と「とき」の使い分け方
「とき」を、漢字で「時」と書くか、平仮名で「とき」と書くかは、意味の違いで使い分けます。
普通名詞の「時」は、時間の流れの中にある、その時代、その時期、その時間など本来の意味の「実質名詞」として用いる場合に漢字で書きます。
これに対して、「とき」は、「場合」と同じ意味で条件を表す「形式名詞」として用いる場合に平仮名で書きます。
つまり「とき」は、時点の「時」と、条件の「とき」で使い分けます。
とはいえ、実務的には「時」を用いるのは「その時」(時刻)を強調する必要がある場合に限られます。
そのため「時点」と「条件」の意味合いを兼ね合わせているようなときは「とき」と平仮名で書きます。
例文
・攻撃を受けた時は、その町に誰もいなかった。時を知らせる。時が解決する。時の流れ。実施の時が来た。(時点)
・公印を使用するときは、庶務係へ決裁書を回してください。(条件・時点)
ちなみに、条件を表すときは「とき」の他「場合」を用いることもできます。
「とき」と「場合」の使い分けに公式ルールはなく、どちらを用いてもかまいません。
ただし、一文で両方を用いるときは、大きい前提に「場合」、小さい前提に「とき」を用います(例:この条件に該当する場合において、60歳に達したとき~)。
「所」と「ところ」の使い分け方
普通名詞の「所」は、場所、居所、住所、その地方、ふさわしい位置や地位など本来の意味の名詞として用いられ、漢字で書くことになっています。
これに対し、形式名詞の「ところ」は、「今出掛けるところ」というように、状態、事態、場合、限り、程度など、「場所」ではない多様な意味で用いられ、平仮名で書きます。
つまり「ところ」は、場所を意味する用例以外は平仮名で書きます。
場所を意味しているのにもかかわらず、漢字で書いていない誤りが多いので注意します。
例文
・昨日、要望書を提出したところである。知るところとなった。法律の定めるところによる。
・私の所にもチラシが届いた。人の住むところ。役所のある所。所言葉。所を得る。
「もの」「物」「者」の使い分け方
普通名詞の「物」は、触れたり見たりすることができる形のある物品をいい、漢字で書きます。
ただし、慣用句として対象を漠然と捉えて言う場合にも用いられることもあります。
普通名詞の「者」は、人、法人のことをいい、漢字で書きます。
これらに対し形式名詞「もの」は抽象的なものを指します。
使い分けとしては「物」でも「者」でもないものには、「もの」を用い、平仮名で書きます。
物・・・物の価値。食べ物。物売り。大物。物好き。物知り。物笑い。
者・・・75歳未満の者。次の条件に該当する者。資格を有する者。
もの・・・よく頑張ったものだ。そんなことがあるものか。参加したものとみなす。
ただし、限定を表す「~で(あって)、~もの」の構文に限り、人であっても「者」ではなく「もの」とひらがな表記します。
一連の形で、一定の者や事物を更に限定する場合に用いる表現で、「説明のための「もの」」と呼ばれる用法です。
例文
・東京都在住の者で未成年を扶養しているものは、申請してください。
・市内に住所を有する者であって、年齢が60歳以上であるもの。
・市が施工する工事であって、その費用が1億円以上であるもの。
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「ゆえ」の使い分け方
普通名詞の「故」は、理由、原因、訳など本来の意味の名詞として用いられ、漢字で書きます。
これに対し、形式名詞「ゆえ」は、名詞や動詞の連体形について「~のため」「~だから」などの意味で用いられ、平仮名で書きます。
なお、接続詞の「ゆえ」も平仮名で書きます。
故・・・故あって。故なく。
ゆえ・・・君ゆえに許された。住民の反対ゆえにはかどらない。先を急ぐゆえ。それゆえ。
「わけ、訳」の使い分け方
意味、道理、理由などの意味で用いられる普通名詞の「訳」は、「良い訳」のように漢字で書きます。
一方、形式名詞の「わけ」は「~わけである」「~わけだ」という形で、帰結として「当然そうである、そうなった」ということを表す意味で用いられ、平仮名で書きます。
また形式名詞の「わけ」は、動詞の連体形に付いて「~するわけではない」「~わけにはいかない」という形で、帰結として「当然否定されるべきである」ということを表す意味でも用いられ、この用法でも平仮名で書きます。
例文
わけ・・・否定するわけではない。希望がかなったというわけだ。受け取るわけにはいかない。
訳・・・それには訳がある。訳あって。訳もなく。訳の分からない話。訳の分かる人。
接頭語の「御」「お」「ご」の使い分け方
「ご」は、マスコミでは一貫してひらがなを用いているので、ひらがなの方が正しいように思われがちなので注意が必要です。
公用文においては、「御」は後に漢字の語が来るときに用い、「ご」は後にひらがなの語がくるときに用います。
また、「御」には「おん」の読みはありますが「お」の読みはないので、「お」と読ませるときにはひらがなを用います。
そのため「御礼」は必ず「おんれい」と読み、「おれい」とは読みません。
「御」「お」「ご」の使い分け例
御理解 御承知 御礼(おんれい)
ごあいさつ お忙しい お願い
注意が必要な語句として「御存じ」「御覧になる」があります。
「存じ」は「存知」と書かれることもありますが、「知」には「じ」の読みがないので熟語であっても「御存じ」と一部ひらがなで表記します。
「御覧」は、一字の漢字であっても同様のルールで「御」を使います。
接尾語の使い分け方
次のような接尾語は、原則として、ひらがなで書きます。
げ(惜しげもなく) ども(私ども)
ぶる(偉ぶる) み(弱み)
め(少なめ) ら(子供ら)
接尾語で特に注意するのは以下のような点です。
「私ども」「甘み」「辛み」を「私共」「甘味」「辛味」と書きません。
接尾語「並み」は、「人並み」「世間並み」「月並み」などと漢字を使い、送り仮名「み」を付けます。一方、名詞の「並」は「並の人間」「並の肉」「並外れ」というように、送り仮名を付けません。
接尾語の「め」は、「少なめ」「多め」「長め」「細め」というように、形容詞の語幹に付いて性質、傾向、程度を表す場合は平仮名で書きます。一方、「三つ目」「3番目」「3人目」というように数に付いて順序を表す場合や、「控え目」「変わり目」「結び目というように」動詞の連用形に付いて状態、箇所を示す場合は「目」と漢字で書きます。
擬音語と擬態語
擬音語はカタカナ、擬態語はひらがなで表記するのが基本ですが、それぞれ例外もあります。
擬音語の例
ジャージャー ドカン ニャーニャー
ぱさぱさ
擬態語の例
うとうと ぎゅっと べたべた
スースー
「解説・広報等」で許される平仮名
「解説・広報等」においては、分かりやすさを優先して、原則漢字で書くべきものも平仮名で書くことができるとされています。
国語分科会報告書では、以下のような語句が例示されています。
接頭辞の許容例
御指導→ご指導 御参加→ご参加
接続詞の許容例
及び→および 又は→または
並びに→ならびに 若しくは→もしくは
副詞の許容例
飽くまで→あくまで 余り→あまり
幾ら→いくら 既に→すでに
直ちに→ただちに 何分→なにぶん
正に→まさに
これらは公用文の書き方のルール上分かりにくいものを列記しているものと考えられ、マスコミ表記に準じています。
具体的なルール化は、個々の官庁に委ねられているため、その例に従うことになります。
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その他の間違いやすい使い分け
「箇」と「か」の使い分け方
「~箇所」「~箇年」のように用いる場合は、前の数字が漢数字のときは漢字、算用数字のときはひらがなを用います。
「箇」の略字である「ヶ」は、公用文では用いません。
「箇」と「か」の例
五箇年計画 3か年分割
「付」と「附」の使い分け方
「附」が常用漢字表に存在している以上、「付」と「附」は使い分けが必要です。
とはいえ、「附」を用いるのは以下の5つの熟語のみとなっています。
「附」を用いる5つの熟語
寄附 附則 附属 附帯 附置
したがって、「付」と「附」の使い分け方としては、この「附」を用いる5つの熟語をしっかりと押さえておけばいいということになります。
その他の「交付」「付近」「付随」「付与」「付録」などは全て「付」を用います。
ちなみに「付」の方が元字であって、語源は「人+手」で、手をしっかりと他人の体にくっつけることを表し、本来「与える」という意味です。
一方「附」は、「阜(土盛り)+付(音符)」で、「土をっくつけた土盛り」のことでしたが、後に「付」で通用することになりました。
そのためイメージでいうと、「付」は動詞の意識が強く、「附」は名詞の意識が強いといえます。
なお、新聞などでは「附」は使わずに「寄付」などと書いてあるので、惑わされないように注意してください。
意味によって使い分ける漢字
特に間違いやすい漢字に「越える」と「超える」があります。
一定の数値をこえるという場合は、かならず「超える」と表記しなければなりません。
一方の「越える」は、またいでこえるという意味です。
例えば「権限をこえた行動」という場合は、「越える」を用います。
その他「意思」と「意志」など意味によって使い分ける漢字は多くあります。
詳細は成功をおさめるは「収める」「納める」?公文書の正しい漢字の使い分けも参照してください。
特に間違いやすい語句
① 漢字で書くのが正しいもの
挨拶(×あいさつ) 曖昧(×あいまい)
辺り(×あたり) 当たって(×あたって)
幾つ・幾ら(×いくつ・いくら)
椅子(×いす) 一旦(×いったん)
一斉(×いっせい) 桁(×けた)
一遍に(×いっぺんに) 今更(×いまさら)
面白い(×おもしろい)
片付ける(×かたづける)
括弧(×かっこ) 傍ら(×かたわら)
我慢(×がまん) 嫌いがある(×きらい)
殊更(×ことさら) 殊に(×ことに)
御無沙汰(×ごぶさた)
この期に及んで(×このご)
差し障り(×さしさわり)
早急(×さっきゅう) 誰(×だれ)
是非(×ぜひ) 大概(×たいがい)
大した(×たいした) 大層(×たいそう)
大体(×だいたい) 大抵(×たいてい)
駄目(×だめ) 丁寧(×ていねい)
帳尻(×帳じり)
取りあえず(×取り敢えず)
取り計らう(×とりはからう)
倣う(×ならう) 外れる(×はずれる)
無駄(×むだ) 眼鏡(×めがね)
面倒(×めんどう) 目途(×もくと)
厄介(×やっかい) 行方(×ゆくえ)
余計(×よけい) 知る由もない(×よし)
有り難い(ありがとうは平仮名)
思わく(×思惑) 十分(×充分)
大分(×だいぶ) 目指す(×めざす)
やむを得ず(×やむをえず、止むを得ず)
一人一人(×一人ひとり)
当たり前(×あたりまえ)
在り方(×あり方) 真面目(×まじめ)
一番(下)(×いちばん)
一緒(×いっしょ) 一層(×いっそう)
言わば(×いわば) 大勢(×おおぜい)
顧みる・省みる(×かえりみる)
辛うじて(×かろうじて)
肝腎(×かんじん) 来す(×きたす)
玄人(×くろうと) 被る(×こうむる)
様々に(×さまざまに)
強いて(×しいて) 素人(×しろうと)
随分(×ずいぶん) 切に(×せつに)
存ずる(×ぞんずる)
図らずも(×はからずも)
奮って(×ふるって)
僅か(×わずか) 我々(×われわれ)
② ひらがなで書くのが正しいもの
在りか(×在り処) いかん(×如何)
いちず(×一途) いろいろ(×色々)
おかげ(×お陰・お蔭)
しゅん工(×竣工)
しんしゃく(×斟酌) せっかく(×折角)
たくさん(×沢山) ちなみに(×因みに)
ちょうど(×丁度) ちょっと(×一寸)
取りやめ(×取り止め) 何とぞ(×何卒)
のっとる(×則る)
ふさわしい(×相応しい)
ふだん(×普段) まれ(×稀)
ますます(×益々) 見いだす(×見出す)
むなしい(×空しい) むやみ(×無闇)
もくろみ(×目論見) もろもろ(×諸々)
がんばる(×頑張る) はがき(×葉書)
はんこ(×判子)
とはいうものの(×とは言うものの)
とはいえ(×とは言え) いつ(×何時)
さすが(×流石) たばこ(×煙草)
見え(×見栄) みなす(×見なす)
めったに(×滅多に) もちろん(×勿論)
よほど(×余程) よりどころ(×拠り所)
③できるだけ用いず他の用語に言い換えるべきもの
×啓蒙→○啓発 ×趨勢→○成り行き
×聡明→○賢明 ×反駁→○反論
×編纂→○編集 ×莫大→○多大
×邁進→○突き進む
×酩酊→○酔っ払う
④その他注意を要するもの
手元(×手許) 部屋(×室)
真ん中(×真中)
まとめ
・「等」を「など」と読ませるときにはひらがなで、「とう」と読ませるときには漢字で書く。
・「~のため」は、助詞・助動詞はひらがなで表記するので、「~為」ではなく「ため」を使用する。
・「さらに」は後ろに続く文全体にかかる場合は「さらに」、一つの単語を装飾する場合は「更に」と使い分ける。
・漢字は常用漢字表に掲げられているものを用いる。ただし常用漢字表に掲げられている漢字でも、読みが掲げられていない語句は用いることができない。
・常用漢字表に掲げられている漢字を用いて表記できる語句は漢字を用いて表記し、漢字が常用漢字表に掲げられていない場合は、ひらがなで表記するのが基本原則。(固有名詞など例外もある)
・専門的用語で特に常用漢字表に掲げられていない漢字を用いて表記する必要があるものについては、当該漢字を用いて表記し、漢字に振り仮名を付ける。
・「おそれ」「とおり」「いただく」は意味によって、漢字とひらがなが変わる。
・接続詞はひらがなで書く。(「又は、若しくは、及び、並びに」の4語だけは例外)
・「副詞」「連体詞」は原則漢字表記、「接続詞」はひらがな表記する。
・「助詞」「助動詞」はひらがな表記。
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