不服申立ての種類と意味とは|具体的な書き方と審査請求の流れを解説

不服申立ての種類と意味とは|具体的な書き方と審査請求の流れを解説

不服申立ての種類と意味とは|具体的な書き方と審査請求の流れを解説

不服申立てとは

行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(広義の「処分」)について、その行使又は不行使に不服がある者が、行政庁に対して、その取消し等を求めることを、行政上の不服申立てといいます。
行政不服審査法(以下単に「法」といいます。)は、この不服申立てに関する制度の手続等を定める一般法であり、国民の権利利益の救済を図り、行政の適正な運営を確保することを目的とするものです。

 

不服申立ては、行政訴訟と比べて簡易迅速(手数料も不要)であること、違法性のみならず不当性についても判断できるなどの特徴があります(訴訟においては、裁量権行使の妥当性を審査すること、すなわち当不当の審査することは、権力分立原則に反するためできません。)。

 

行政不服審査法については、令和26年に大幅な改正がなされ(令和28年4月1日施行)、原処分に関与していない「審理員」による審理手続の導入、第三者機関である「行政不服審査会」への諮問手続の新設など、公正性の向上が図られました。

 

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不服申立ての種類

法に基づく不服申立ての原則は、「審査請求」(法2条及び3条)ですが、例外的に、処分の根拠等を定める個別法に特別の定めがある場合には、審査請求の前に処分庁に対して行う「再調査の請求」(法5条)や、審査請求の後にさらに別の行政庁に対して行う「再審査請求」をすることができます(法6条)。

 

令和26年改正前の行政不服審査法においては、不服申立ては、処分庁に上級行政庁がない場合に当該処分庁に対して行う「異議申立て」と、上級行政庁がある場合等に当該上級庁等に対して行う「審査請求」とがありましたが、改正法においては「審査請求」に一元化されました。

 

 

審査請求の対象

原則として、全ての行政庁の処分(下記(1))及び不作為(下記(2))が対象ですが、不服申立て制度になじまない処分及び不作為については対象外とされているほか(法7条1項各号)、処分の根拠等を定める個別法において、法に基づく不服申立制度の対象外とする旨の規定がおかれている場合があります。

 

(1) 行政庁の「処分」(法2条)
ここにいう「処分」とは、いわゆる行政処分のほか、人の収容や物の留置など、公権力の行使に当たる行政庁の行為も含まれます(法1条2項)。
行政処分とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものとされています(昭和39年10月29日最高裁判決)。
なお、審査請求の対象となる「処分」の範囲は、行政事件訴訟法にいう「処分」の範囲と同様とされています。

 

(2) 法令に基づく申請に対する不作為(法3条)
法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をしたにもかかわらず、当該申請に対して何らの処分もなされないことです。

 

審査請求を行うことができる者

(1) 処分についての審査請求
処分に「不服がある者」がすることができます(法2条)。
「不服がある者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、その範囲は、行政事件訴訟法9条の定める原告適格の範囲と同一と解されています(昭和53年3月14日最高裁第三小法廷判決)。
当該処分の名宛人のほか、処分の名宛人以外のものでも、当該処分により生命、身体、財産等に著しい不利益を受ける(おそれのある)者はこれに当たりますが、具体的には、個々の事案に即して、当該処分の根拠法令等に照らして判断する必要があります。

 

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(2) 不作為についての審査請求
不作為について審査請求をすることができるのは、当該不作為に係る申請をした者のみであり(法3条)、申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、不作為があるときにすることができます。
「相当の期間」とは、社会通念上当該申請を処理するのに必要とされる期間を意味しており、処分の内容等に照らして判断されます。

 

審査請求をすべき行政庁(審査庁)

(1) 原則
① 処分庁等に上級行政庁がある場合
処分庁又は不作為庁(以下、二つを併せて「処分庁等」といます。)に上級行政庁がある場合は、当該上級行政庁(複数ある場合は最上級行政庁)が審査請求先となります(法4条4号)。
「上級行政庁」とは、当該行政事務に関し、処分庁等を直接指揮監督する権限を有する行政庁をいいます。

 

② 処分庁等に上級行政庁がない場合
当該処分庁等が審査請求先となります(同条1号)。

 

(2) 例外
処分の根拠となる個別の法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合には、当該特別の定めによります(法4条)。
【例】
・法定受託事務に係る市長の処分等 ⇒ 県知事(地方自治法255条の2)
・生活保護法19条4項に基づき福祉事務所長に委任された事務に関する処分(生活保護の開始、変更、廃止等 ⇒ 県知事(生活保護法64条)
・建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事、指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為 ⇒ 建築審査会(建築基準法94条)

 

審査請求期間

(1) 処分に対する審査請求
原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときは、することができません(法18条1項)。
また、上記の期間内であっても、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができません(同条2項)。
ただし、その期間を経過した場合も、「正当な理由」がある場合には、審査請求が認められます。「正当な理由」がある場合とは、天災など、審査請求ができなかったことについてやむを得ない理由がある場合のほか、処分において審査請求期間が教示されなかった場合及び誤って長期の審査請求期間が教示された場合であって、審査請求人が他の方法で正しい審査請求期間を知ることができなかったような場合も含むとされています。

 

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(2) 不作為に対する審査請求
当該不作為が継続している間は、いつでもすることができます。

 

不服申立てと行政訴訟との関係

原則として、不服申立てを経なくても行政訴訟を提起できる自由選択主義がとられています。
ただし、個別法において、不服申立てを経なければ行政訴訟を提起できない(不服申立前置)と定められている場合もあります(例生活保護法に基づく処分の取消し(生活保護法69条))。

 

 

審査請求の手続に関わる部署

(1)審査庁
審査請求を受け、それに対する応答として、裁決を行う行政庁。
処分庁等に上級行政庁がある場合は、当該上級行政庁(複数ある場合は最上級行政庁)、処分庁等に上級行政庁がない場合は、当該処分庁等です。
市長が審査庁となる場合は、総務課法務担当係などがその業務を担当します。

 

(2)審理員
審査請求の審理に当たって中心的な役割を果たす者。
審理の公正性・透明性を高めるため、処分に関する手続に関与していない等一定の要件を満たす者がこれに当たり、審査庁の指揮を受けることなく、自らの名において審理を行います。
審理員は、審査庁が指名することになっており、市長が審査庁となる場合には、原則として総務部副参事及び総務課法務担当係長などが指名されます。

 

(3)行政不服審査会
審査庁の諮問を受けて、審理員が行った審理手続の適正性を含め、審査庁の判断の妥当性をチェックする第三者機関。
裁決の客観性・公正性を高めるため、審査庁が裁決するに当たっては、一定の場合を除き行政不服審査会への諮問が必要です。行政不服審査会は、弁護士等3名程度で構成されており、事務局は総務課職員などが行う市町村が多いです。

 

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