個人情報保護制度とは?目的と定義を分かりやすく解説
目的
個人情報条例は、高度情報社会の進展に伴い個人情報の利用が拡大していることを考え、自治体の実施機関が個人情報の収集、保管または利用をする場合の原則を明確にし、個人情報の管理の適正を期するとともに、市政の適正かつ円滑な運営を図り、自己に関する個人情報の開示、訂正等を求める権利を保障することにより、市民の基本的人権を擁護することを目的としています。
1 今日、高度情報通信社会の進展に伴って、個人情報の利用は著しく拡大しています。自治体においても、I T技術を活用して、より一層市民サービスの向上と市政運営の効率化を図るために、情報システムの開発や電子申請の導入が進められ、成果を挙げています。
しかし、その取扱いによっては、市民生活を脅かし、個人の権利利益を侵害する危険性を秘めています。
2 このような状況に対応し、個人情報の保護や情報セキュリティを確保するため、各自治体は規程等を整備し運用しています。(例)個人情報保護条例、個人情報保護条例施行規則、電算組織の管理運営に関する規則
定義
(1)個人情報
個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報との照合により特定の個人を識別することができるものを含む。)をいいます。ただし、特定個人情報を含まない個人情報にあっては、事業を営む個人の当該事業に関する情報を除きます。
(2) 保有個人情報
実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した個人情報( 特定個人情報を除く。) で、当該実施機関の職員が組織的に用いるために保有しているものをいいます。ただし、行政文書に記録されているものに限ります。
(3) 個人情報ファイル
保有個人情報の集合物で、次に掲げるものをいいます。
1 一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算組織を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
2 一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したもの
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(4) 特定個人情報
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(令和25年法律第27号。以下「番号法」。)第2条第8項に規定する特定個人情報をいいます。
(5) 保有特定個人情報
実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した特定個人情報で、当該実施機関の職員が組織的に用いるために保有して
いるものをいいます。ただし、行政文書に記録されているものに限ります。
(6) 特定個人情報ファイル
保有特定個人情報の集合物で、次に掲げるものをいいます。
1 一定の事務の目的を達成するために特定の保有特定個人情報を電子計算組織を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
2一定の事務の目的を達成するために特定の保有特定個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したもの
(7) 本人
個人情報によって識別される特定の個人をいいます。
(8) 電子計算組織
与えられた一連の処理手順に従い、事務を自動的に処理する電子的機器の組織をいいます。
(9) 実施機関
首長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員及び農業委員会などをいいます。
(10) 事業者
法人その他の団体(国、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(令和15年法律第59号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)、地方公共団体及び地方独立行政法人( 地方独立行政法人法( 令和15年法律第118号)第2 条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)を除く。)及び事業を営む個人をいいます。
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(11) 受託者等
1 実施機関から個人情報を取り扱う業務の委託を受けた者
2 地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定により自治体の指定を受け、公の施設の管理を行う者
(12) 受託業務
受託者等が取り扱う業務をいいます。
説明
1 (1) 「個人に関する情報」の「個人」とは、自然人をいい、法人を含みません。また、個人の人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、地域や会社などの構成員としての個人の活動に関する情報、その他個人との関連性を有する全ての情報を意味します。具体的な内容には、次のような情報があります。
識別番号 免許番号、許可番号、保険証番号、住記番号、住基コード
個人番号 番号法第2条第5項に規定する個人番号
氏名 氏名(氏又は名のみの場合も含む。)、通称
性別 男女の別
生年月日 年齢、生年月日、干支
住所 住所、前住所、住所歴
国籍、本籍 国籍、本籍、外国人であること
続柄 世帯主との関係、申請者との関係
親族関係 養子縁組、離縁、認知、姻族関係
婚歴 婚姻の事実、婚姻の時期、離婚の事実、婚姻期間
居住地 居住地、居所、居住市域名
その他 指紋、声紋、顔写真、印鑑
宗教 信仰する宗教、宗教的習慣、菩提寺
主義主張 政治的信条、政治理念、世界観、人生観、信念
支持政党 支持政党名、政治団体名
その他 座右の銘、投書、苦情、相談内容、応募作文
職業職歴 会社名、勤務先、所属、就職・退職年度、在職期間、昇格・降格・解雇・停職等の処分、職名
地位 職位、役職名
学歴 卒業、在学校名、退学・休学・停学等、入学・卒業年度
資格 理容師、調理師等の資格
団体加入 所属団体名
賞罰 叙位・叙勲、表彰、功績、犯罪歴
その他 自治会等での活動状況
学業成績 卒業成績、順位
勤務成績 勤務評定
試験成績 各種試験の結果、点数、順位
その他 特技、専門知識
収入 年間収入額、月収、報酬額
財産状況 不動産等の所在・評価額、債権・債務額、預金額
納税額等 納税額、滞納額
取引状況 融資先、債権・債務先
公的扶助 生活保護受給の有無
その他 口座番号、金融機関名
健康状態 体調、健康診断結果
病歴 傷病名、傷病の程度・原因、入院記録、訓練記録、治療の内容・方法
障害 障害の有無、障害の種類・部位・程度、補装具
その他 身長、体重、血液型、体力、運動能力、精神的悩み
家庭状況 ひとり親家庭であること、家族構成、扶養親族
居住状況 居住環境、同居・別居の別
趣味嗜好 趣味、酒・コーヒー・たばこ等のし好
その他 食生活の内容、癖
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(2) 特定の個人を識別することができる場合というのは、氏名、住所、生年月日その他の記述等により、当該情報の本人である特定の個人が誰であるかを識別することができ、又は識別される可能性がある場合をいいます。
(3) 他の情報との照合により特定の個人を識別することができる場合というのは、その情報自体からは特定の個人を識別することができないが、当該情報と他の情報とを照合することにより、特定の個人を識別することができる場合をいいます。
照合の対象となる「他の情報」には、その保有者が他の機関である場合も含まれ、また公知の情報や図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど、一般人が通常入手し得る情報が含まれます。特別な調査をして入手し得るような情報は、通例は「他の情報」には含めません。ただし、内容によって、個人の権利利益を保護する観点からは、より慎重な判断が求められるものです。
(4) 事業を営む個人とは、地方税法(昭和25年法律第226号) 第72条の2第8項から第10項までに掲げる事業を営む個人のほか、農業、林業等を営む個人をいいます。
(5) 事業を営む個人の当該事業に関する情報とは、事業の内容、資産、所得等に関する情報をいい、当該事業活動と市別される財産や家族状況等は、個人情報に該当します。
(6) なお、条例の対象は、実施機関が保有する全ての個人情報であり、市民であるか否かに限りません。また、職員に関する情報も含まれます。
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(1) 保有個人情報とは、実施機関における個人情報の取扱いの規定及び開示、訂正等の請求の対象となる個人情報です。
(2) 実施機関の職員が職務上作成し、又は取得したというのは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内で作成し、又は取得したことをいいます。
(3) 特定個人情報を除くというのは、保有特定個人情報については対象とする個人情報が特定個人情報を含まない従来の個人情報であることを意味します。
(4) 組織的に用いるというのは、その個人情報が、作成又は取得に関与した職員個人段階のものではなく、組織の業務上必要な情報として利用されることをいいます。組織的に利用しない個人情報については、条例の対象とはなりませんが、速やかに廃棄するなど適正に管理する必要があります。
(5) 保有しているというのは、その個人情報について、事実上支配している(その個人情報の利用、提供、廃棄等の取扱いについて判断する権限を有している)状態をいいます。例えば、個人情報が記録されている文書を書庫等で保管している場合や、民間事業者に委託して管理させている場合は含まれますが、民間事業者が管理するデータベースを利用する場合は含まれません。
(6) 行政文書に記録されているものに限るというのは、起案文書、収受文書、組織的に利用、保存している電磁的記録などの媒体に記録されているものをいい、情報公開条例との整合性を確保するため条例に規定する行政文書に記録されているものとしています。したがって、職員が単に記憶しているに過ぎない個人情報は、保有個人情報には該当しません。
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個人情報ファイルとは、特定の保有個人情報を検索できるように体系的に構成したものです。実施機関にとって利便性の高いものですが、管理が適切に行われなければ、市民の権利利益を侵害するおそれがあります。
このため、条例では、個人情報ファイルの登録及び公表を実施機関に義務付けるとともに、罰則においても個人情報ファイルの不正な提供等に対して重罰を課しています。
この個人情報ファイルは、電子計算組織により検索するもの、マニュアル(手作業)処理により検索するものの両方が含まれます。
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(1) 一定の事務とは、個人情報ファイルの作成目的となる特定の事務をいいます。
(2) 体系的に構成とは、50音順や年月日順などの一定の基準に基づいて整理、分類して保有するものをいいます。
(3) 特定の保有個人情報を容易に検索することができるというのは、探そうとする人の情報が直ちに検索できるものをいいます。例えば、人名が容易に検索できるように50音順に配列されているもの、目次、索引、インデックス等を付し他人によっても容易に検索可能な状態に置いているものが該当します。
「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。)をその内容に含む個人情報をいいます。
「本人」とは、個人情報により識別される特定の個人をいいます。条例においては、目的外利用や外部提供時に同意を得るべき主体、開示等の請求の主体です。
「電子計算組織」とは、電子計算を主管する課に設置した電子計算組織のほか、各課に配置された全庁LAN端末、各課の個別業務システム端末など、実施機関の業務において利用する全てのコンピュータをいいます。
「実施機関」は、条例に基づき、個人情報を保護するという情報管理主体としての側面と、自己情報の開示に対し決定(行政処分)を行う行政庁としての側面を有します。市の全ての執行機関が、条例の適用対象となります。
(1) 審査会、審議会などの附属機関については、各実施機関の管理に属しているので、実施機関と同様に取り扱います。
(2) 各実施機関が事務局を行っている各種団体は、この制度の対象とはなりませんが、事務局として実施機関の職員が作成し、又は取得した個人情報は、実施機関の保有個人情報となります。
「事業者」とは、自治体の区域内に事務所又は事業所を有するものをいい、営利や非営利の別、事業内容は問いません。
(1) 「法人その他の団体」とは、法人のみならず、法人格を有しないが、当該団体の規約及び代表者を定めている団体(自治会、商店会、消費者団体等)を含みます。
(2) 国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人については、その公共性に鑑み、その他の事業者とは異なる取扱いが必要なことから、法人等の範囲からは除外します。
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自治体の業務のなかには、市民サービスの向上のほか、専門性、迅速性、経済性などの観点から、市以外の事業者に委託をすることがあります。しかし、市の業務においては、市民の個人情報を取り扱う場合が多く、委託先の事業者に市と同様の保護措置を求めなければなりません。条例においては、外部委託に関する規制を設けていることから、その対象となる事業者を定めるます。
(1) 「個人情報を取り扱う業務の委託」とは、個人情報を取り扱う事務の全て又は一部を実施機関以外のものへ依頼する契約の全てをいい、一般に委託と称されるもののほか、印刷、筆耕及び翻訳等の契約、人材派遣の契約並びに使用料の収納の委託等公法上の契約も含まれます。
具体的な例としては、次のようなものがあります。
① アンケート調査又は世論調査に関する委託
② データ入力等の電算処理業務の委託
③ 通知書の封入・封かん作業の委託
④ システムの保守管理業務の委託
⑤ 公金の収納、徴収に関する委託
⑥ 申請書入力業務のための派遣契約
(2) 「自治体の指定を受け、公の施設の管理を行う者」とは、地方自治法第244の2第3項の規定により、議会の議決を経て指定管理者として自治体が指定した者をいいます。指定管理者は、通常の契約とは異なりますが、公の施設の管理に関し利用者等の個人情報を扱うという実態から見れば、個人情報を取り扱う委託と何ら変わるところはないことから、受託者等に含めます。条例では、他の受託者と同じように業務の実施に当たって個人情報の保護のために必要な措置を講ずる義務が課せられることになります。
「受託業務」とは、受託者等が行う業務をいいます。この受託業務に従事している者又は従事していた者が、個人情報ファイルを不正に提供した場合などは、条例の罰則の対象となります。
【運用】
1 制度の所管課
この制度に関する事務は、総務部総務課長(以下「総務課長」という。)が所管します。
総務課長に届出し、又は協議することとされている事項のほか、条例の解釈や運用に当たって疑義が生じた場合や不明な点は、随時総務課長に協議します。
2 死者の個人情報の取扱い
「個人に関する情報」とは、自然人に係る情報を指すので、死者に関する情報は条例の対象とはなり得ません。
しかしながら、死者は権利能力の主体ではないものの、死者にも保護されるべき名誉等の法益があるため、生死を問わず保護の対象です。
開示、訂正等の請求については、相続人にとって被相続人の情報は、請求者個人の自己情報と見なし得るほどの法的な同一性が認められる場合があることから、「自己情報」の解釈に含み、相続人に対して請求権を認めます。