「参る、まいる」など公文書での敬語用法|貴殿、謹呈、薄謝は使わない?
公用文は相手方に対して敬意を含んだものでなければなりません。
しかし、発信文書は、起案者ではなく発信者の立場で発していることを忘れてはいけません。
したがって、必要以上に敬語を使うと不自然な文章になってしまいます。
敬語を使う場合は、失礼にならない限り、なるべく簡潔にします。
ただし、敬語の使用方法は、文書の性格やあて先によって異なります。
すべての場合に下記のルールが当てはまるわけではありません。
文書によって使い分けが必要になりますので注意してください。
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敬語の型
敬語には、次のような種類があります。
丁寧語
言葉自体を丁寧にする表現です。
以下のような特長があります。
・「です・ます」体
・丁寧の意味を含む代名詞など(例:わたくし どちら いかが)
・接頭語の「お・ご(御)」 (例:お茶 お知らせ)
尊敬語
相手の敬称、行為、状態などについて、敬意を表す場合に使用します。
以下のような特長があります。
・尊敬の助動詞「れる・られる」
・「お~になる」、「お~なさる」
・尊敬の意味を含む動詞(例:あなた 貴方 どなた)
・接頭語の「お・ご(御)」、尊敬の意味を含む接頭語・接尾語(例:お話 御親切 貴社)
謙譲語
自分がへりくだることで、相手に敬意を表す場合に使用します。
以下のような特長があります。
・「お~する」(例:母が先生にお願いする)
・謙譲の意味を含む動詞(例:申す いたす うかがう いただく 差し上げる)
公文書で使える敬語とは
公用文では、原則として「丁寧語」を使います。
特に内部文書においては、尊敬語や謙譲語は通常は使いません。
しかし、文書の相手方や性格によって異なりますので注意が必要です。
敬語を使うときの注意点
公用文で敬語を使用する必要があるときは、度を過ぎていたり、誤った表現をしないように注意します。
度を過ぎた敬語は、かえって相手に不快感を与えることがあります。
度の過ぎた敬語
次の例は、一般的な公用文に使うには度の過ぎた敬語ですので、使わないようにします。
ただし、表彰文や書簡などでは使用することがあります。
× ~でございます × ~であります → ○ です
× お~申し上げる × お~いたす → ○ ~する
× 給う → ○ いただく
× あそばす → ○ する
× 召し上がる → ○ 食べる、飲む
× いらっしゃる → ○ している、いる、来る
× おっしゃる → ○言う
× いたす → ○ する
× まいる(参る) → ○行く
× 承る → ○ 受ける
「お」「ご(御)」の付け過ぎ
「お」「ご(御)」を付け過ぎないようにします。
次の例は、度を過ぎた表現です。
お名刺 御疑義 御芳名 お紅茶
堅苦しすぎる敬語
次のような、尊敬や謙譲の意味を含む漢語は、なるべく使わないようにします。
貴殿 貴下 御高覧 御賢察 芳名 笑納 下付 下問 謹呈 寸志 薄謝 参上
間違った敬語
敬語を重複したり、相手の行為に謙譲語を使用したりするなど、間違った敬語表現をしないように注意します。
× お申し込みになられますと → ○ お申し込みになりますと
× 3時までにうかがってください → ○ 3時までにお越しください
× どなたでもご利用できます → ○ どなたでもご利用になれます。
「お」「御」の使い方
「お」「御」を付けるのは、次の場合です。
① 相手の物事を表す場合で、「あなたの」という意味を含ませるとき。
例1 (あなたの)お体にお気をつけてください。
例2 (あなたの)御依頼の品物をお届けします。
② 当方の物事でも、相手に対する物事であるとき。
例
お願いします。
お礼申し上げます。
御報告します。
御挨拶申し上げます。
「れる」「られる」の使い方
尊敬の助動詞の「れる」「られる」を動詞に付ければ、尊敬語になります。
例えば、「書かれる」「言われる」「来られる」などです。
しかし、「御出張される」「お食事される」などという表現は誤りです。「れる」「られる」を付けるときは、「お」「御」という接頭語は付けないこととされているからです。
また、次の例のように、もともと謙譲語である「申す」「参る」に「れる」「られる」を付けても尊敬語にはなりません。
話し言葉としても、よく聞かれる誤った表現なので注意が必要です。
例
市長が出席したいとおっしゃいます(×申されます)
市長がいらっしゃいます(×参られます)
「参る、まいる」といった漢字の使い分け
公用文のルールでは「補助動詞」は平仮名、「複合動詞」は漢字で書くこととなっています。
補助動詞とは接続助詞「て」がついて、「~(し)てください」などの用い方をする一定の動詞をいい、前の動詞に補助的な意味を加える語句です。
補助動詞には敬語にも存在します。
敬語の補助動詞の例
あげる いたす いただく いらっしゃる くださる さしあげる まいります
敬語の場合も、補助動詞は平仮名ですが、単独の動詞は漢字で表記します。
特に「いたす」「まいる」等は間違いが多いので注意が必要です。
「まいります」の例
○ 明日、参ります。
○ 住民への周知に十分努めてまいります。(× 住民への周知に十分努めて参ります。)
「いたします」の例
○ 致し方ない
○ 御案内いたします。(× 御案内致します。)
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