行政処分の定義と瑕疵とは|行政指導との違い

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行政処分の定義と瑕疵とは|行政指導との違い

 

1 行政処分の意義
行政庁が、法律(条例)に基づき、一方的に市民の具体的な権利義務関係や法律関係を決定し、具体的な効果を及ぼす行為を行政処分といい、以下の3つがポイントとなります。
① 行政庁の一方的行為である⇔契約
② 法律・条例に根拠規定がある⇔行政指導
③ 特定の私人の具体的な法的地位を決定する行為である(法的拘束力がある)。⇔通達、要綱、立法行為
そのため、契約、行政指導、通達、要綱、立法行為行政処分に当たりません。

 

行政処分の具体例
課税処分、営業許可、除却命令(違法建築物)、権利取得裁決(土地収用)、生活保護78条返還決定 、等

 

2 行政処分の効力
① 自力執行力 : 行政行為によって課せられた義務を私人が履行しない場合に、行政庁が自ら強制的に執行することができます。
例 違法建築物の除却(行政代執行)、税金の滞納処分(強制徴収)
※行政処分は市民の法的地位を強制的に変動させる強い効力を持っています。

 

② 不可争力 : 一定期間の経過により、行政処分の効力を裁判で争うことができなくなる。
例. 取消訴訟の出訴期間(行政事件訴訟法14条)
※違法な行政処分でも、放置すると裁判で争うこともできなくなる。

 

③ 公定力: 行政処分が、仮に違法であっても、取消権限を有する機関によって取り消されない限り、有効なものとして取り扱われる。
※違法な処分でも、行政庁が誤りを認めて取り消すか、不服審査請求や行政訴訟を起こして取り消されなければ効力をもつという強い効力。

 

つまり一度行政処分が行われれば、市民の権利利益に直接重大な効果をもたらします。

 

3 行政処分の瑕疵とは
(1) 意義
行政処分の瑕疵とは、行政処分が違法又は不当であることをいいます。
法律による行政の原理からいえば、瑕疵ある行政処分は原則として取り消されるべきですが、軽微な瑕疵は、取り消すべき瑕疵に当たらない (最高裁昭和49年12月10日判決)とされています。

 

(2) 行政処分に違法性があるとされる場合の分類
① 内容に誤りがある場合
・ 根拠法令がない、法令上の要件を満たしていない。
・ 処分の原因となる事実の認定又は評価が誤っている。
・ 法の一般原則に反している。
これらに該当していると裁量権の逸脱、濫用ありとして処分に違法性ありとされる場合があります。

 

※行政処分の裁量の範囲に関する審査基準の要素
(ⅰ) 処分の前提となる事実の誤認
例 都市計画に関する基礎調査の結果が客観性、実証性を欠く場合に、それを前提にされた都市計画決定
(ⅱ) 目的違反・動機違反(法の趣旨・目的とは異なる動機に基づくこと)
例 制裁を目的とした分限処分
(ⅲ) 平等原則違反
例 合理的理由なく入所審査基準に反する保育所入所不承諾処分
(ⅳ) 比例原則違反
例 軽微な非行事実に対する懲戒免職処分

 

② 処分過程に手続違反がある場合
・ 相手方に意見陳述の機会を与えていない(行政手続法13条違反)
・ 処分理由の不特定、理由付記の不備(行政手続法8条、同14条違反)
処分の実体面(内容)には適法性が認められるとしても,当該行政処分の過程に重大な手続違反がある場合、不服審査請求、取消訴訟において、手続上の瑕疵として処分自体が違法とされる場合があります。
処分の内容・結果に重点を置くあまり、手続規定(特に処分の相手方に対する手続保障)の遵守をおろそかにしていないか、確認をすることが大切です。

 

③ 処分の主体、権限等に瑕疵がある場合
・ 処分権限のある者が主体となっていない
・ 適正な意思決定(決裁)を行っていない
このように権限のない主体による処分、決裁を経ていない処分は、無効又は取消の対象となります。
法令に基づく処分権限、職務権限規程等に基づく決裁区分を確認することが大切です。

 

4 違法又は不当な行政処分の取扱いと救済制度
(1) 不服審査請求、訴訟による事後救済
① 行政不服審査制度
行政処分を受けた者が、処分をした行政庁を指揮監督する立場にある行政庁に当該処分が違法又は不当であることを理由に当該処分の取消しを求めて審査等を求める制度で、特徴は以下の通りです。

 

(ⅰ)行政処分の違法性のみならず,不当性も審理の対象となる。
(ⅱ)行政庁内部で,処分の当否を再考させる制度である。
(ⅲ)処分に関与しない職員から選任される審理員による審理手続,有識者からなる第三者機関への諮問手続による公正な手続の導入。
(ⅳ)裁決は関係行政庁を拘束し,当該処分が違法又は不当であることを理由に取消されたときは,処分を行った行政庁は,裁決内容に従い,申請に対する処分をやり直さなければならない(行服法52条1項・2項)

 

【審査請求手続の概要】 ※行政不服審査法が手続等一般的事項を規定
ア:行政処分に不服がある者(審査請求人)は、審査庁(審査請求に対する裁決を行う行政庁)に審査請求書を提出する(行服法19条1項)。
イ:審査庁から指名を受けた審理員は、審査請求書を処分庁に送付し、弁明書の提出を求める(行服法29条1項、同2項)。ウ:処分庁は、処分の内容及び理由を記載した弁明書を提出しなければならない(行服法29条3項)。
エ:審理員は、審理手続を行い、同手続を終結したときは、審理員意見書(審査庁がすべき裁決に関する意見書)を提出しなければならない(行服法42条)。
オ:審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、行政不服審査会等に諮問し(行服法43条1項)、行政不服審査会は、諮問に対し答申する。
カ:審査庁は諮問に対する答申を受けたとき(諮問不要の場合は審理員意見書の提出を受けたとき)、遅滞なく裁決を行わなければならない(行服法44条。)

 

② 行政事件訴訟法に基づく取消訴訟制度
行政庁の公権力の行使に対する不服を裁判所に訴え、裁判手続による司法上の救済を求める「抗告訴訟」の1つであり、違法な行政処分その他公権力の行使の取消しを求める訴訟類型(行訴法3条)で、その特徴は以下の通りです。

 

(ⅰ)審理の対象となるのは,行政処分等の「違法性」のみである。
(ⅱ)専門性,公平性を備えた裁判所による公正で厳格な手続である。
(ⅲ)行政処分の取消しを認容する判決は,当該処分を行った行政庁を拘束し,(行訴法33条1項),当該行政庁は判決内容に従い,改めて申請に対する処分をやり直さなければならない。

 

【損害賠償による救済制度】-国家賠償請求制度-
公務員がその職務遂行において,故意又は過失に基づく違法な加害行為によって第三者に損害を与えた場合,当該公務員の属する国又は地方公共団体が,当該第三者に対する損害賠償責任を負います(国賠法1条1項)。

 

・違法な行政処分の効力と国家賠償請求の関係
取消訴訟の関連請求として,国家賠償請求訴訟を併合して訴えられることもあります(行訴法16条1項)。
例 違法な営業停止処分により,事業の収益減少という損害を被った場合
違法な行政処分が取り消されていなくても、国家賠償請求訴訟を提起することは可能です。 行政処分の公定力と国家賠償責任は関係ありません。

 

(2) 行政庁の職権による取消し
行政処分が違法であると認識して、当該行政処分をした行政庁が自ら取り消すことを言います。
法律による行政の原理からは当然の帰結で、授益的行政処分の場合は、相手方の信頼、利益を保護する必要があるため、相手方に処分取消しによる不利益を甘受させても、取り消すべき公益上の必要性がなければなりません。

 

【事前の手続、処分内容の適切な判断過程が大切】
違法な行政処分は取り消されるとしても、自庁取消しがなされなければ、審査請求、訴訟等によらなければならず、権利・利益の侵害を受けた者が膨大な時間、労力、費用等を負担しなければなりません。そのため以下のポイントに気を付けましょう。

 

① 処分に至る前の手続の段階で、処分の公正性・透明性を確保すための手続規制をかけることで、違法な処分を抑止し、国民の権利・利益の保護につなげる必要があります。(行政手続に係る事前規制の必要性)
② 行政処分の裁量的判断の妥当性を担保するために、考慮すべき事項を十分考慮する判断過程を確保し、適切な処分内容を検討します。

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